マイナンバー法とは
マイナンバー法は、正式には「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といいます。2013年に成立し、その後改正が行われています。
全ての個人と法人に番号を付ける法律であり、番号法ともいいます。番号には個人を対象とした12桁の番号と、法人を対象にした13桁の番号がありますが、個人対象のものをマイナンバーといっています。そのため、番号法のほうが適切な略称ですが、多くの関心はマイカードにありますので、俗称としてのマイナンバー法がポピュラになっています。
ここでは、主としてマイナンバーを取り扱います。
条文:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000027
- マイナンバー(個人番号)
マイナンバーとは、国民各人が持つ12桁の番号です。出生時に交付され、特別の事態が起こらない限り、一生変わりません。
番号は行政から付番され、欲しい番号を申請するとか、付与後に変更するなどはできません。
マイナンバーは、個々の桁に特別な意味を持たせていません。この番号には氏名や生年月日などの個人情報は含まれていません。
住民票とリンクしているので、日本国民だけでなく中長期在留者や特別永住者の外国人にも交付されます。逆に海外長期滞在などで住民票を抜いて転出した場合は、日本国籍であってもマイナンバーは付与されません。
法人には、13桁の番号が交付されます(後述)。
- 特定個人情報
マイナンバーは個人を特定します。マイナンバーを含む個人情報を特定個人情報といいます。
個人情報保護法での個人情報は、生存する者の情報に限定されますが、特定個人情報は死亡者にも適用されます(戸籍や相続などの管理にも適用できるようにするためです)。これにより、個人情報保護法の一部が改正されました。
- マイナンバーカード(個人番号カード)
マイナンバーをICカードに組み込んだものです。表面には、住所・氏名・生年月日・性別が記載され、写真が表示されています。裏面には、マイナンバーが記載され、ICチップが見えます。
このように、マイナンバーカードは、運転免許証や国民健康保険証など個人認証が求められるときの身分証明書として広く利用できます。反面、個人番号カードには個人情報が記載されているので、取り扱いには注意が必要です。マイナンバーカードは専用のカードケースに入っており、表面の性別と臓器提供意思表示、裏面の個人番号は見えないようになっています。特に必要のないときは、カードのまま表面を見せるだけにするのが安全です。
マイナンバーカードは写真や住所などが入っているので有効期間が5年です。記載事項に変更があった場合は更新が必要になります。
- マイナンバー制度(国民共通番号制度)
このマイナンバーを利活用するための多様な制度を総称してマイナンバー制度といいます。
以前に同様な制度として、住民基本台帳カード制度がありましたが、2015年末で交付を終了し、マイナンバー制度に移行しました。
マイナンバー法の目的
- 行政の効率化
国や地方公共団体の間では、税務業務や年金業務など多くの機関が担当する情報の照合や転記等が大きな作業になりますが、それらをマイナンバーでオンライン結合することにより、時間・労力が大幅に削減されます。
しかし、個人情報保護の観点から、利用目的を社会保障(福祉、保健、医療など)、税務、災害対策(被災者対策など)など法令で定めた手続に限定しています。システム面の保護措置の観点から、個人情報を一元管理するのではなく、従来通り、年金の情報は年金事務所、税の情報は税務署といったように分散して管理します。
なお、機関間での情報伝達では、マイナンバーを直接使わないようにしたり、アクセス権限者を制限したり、通信する場合は暗号化するなどの対策を講じています。
- 国民の利便性の向上
行政の効率化のために、国や地方公共団体等への手続では、マイナンバーの記載が求められます。しかし、マイナンバーで行政が把握している各機関の情報が連携できるので、例えば社会保障・税関系の申請時に、課税証明書などの添付書類が削減されるなどのメリットがあります。
- 公平・公正な社会の実現
所得状況等が把握しやすくなり納税逃れの防止や社会保障での不正受給の防止などに役立ちます。
マイナンバーの利用拡大と制限
マイナンバーの普及は、行政の効率化に大きな効果があります。そのため、健康保険証や運転免許証などにも適用するとか、銀行口座と紐づけして給付金などの処理を円滑にすることが進められています。
マイナンバーの漏洩リスクを減らすことが求められます。マイナンバー法第九条(利用範囲)では、社会保障、税、災害対策関係の行政事務に限定しています。そのため、民間企業での人事システムなど管理目的に使うことは禁じられています。しかし、この活用は
マイナンバーの記載や管理
個人は、税金の確定申告や児童手当の申告など、行政の手続きの多くで、マイナンバーの記載が求められます。また、給与支払や金融機関との取引のために、企業や金融機関ににマイナンバーを伝える必要があります。
このように、業務として他人のマイナンバーを取り扱う業務を個人番号利用事務、その担当者を個人番号利用事務実施者等といい、マイナンバーの適切な管理を行うことを義務付けています。
民間企業などは、従業員への給与支払や講演依頼での報酬や税金の源泉徴収などのために個人のマイナンバーの提供を受けます。マイナンバーは非常に厳密な個人情報なので、その収集・保管・利用には他の個人情報よりも厳格な管理が求められます。
それに応じて、マイナンバー管理サービスをする業者も多くなってきました。
マイナポータル(情報提供等記録開示システム)
マイナポータルは、政府が中心となり運営するオンラインサービスです。自宅のパソコン等kから行政機関のWebサイトから情報を閲覧することができます。
- 民間送達サービスとの連携
行政機関や民間企業等からのお知らせなどを民間の送達サービスを活用して受け取ることができます。
- 公金決済サービス
マイナポータルのお知らせからネットバンキング(ペイジー)やクレジットカードでの公金決済が可能となります。
- 自己情報表示(あなたの情報)
行政機関等が保有するあなたの個人情報を検索して確認することができます。
- お知らせ
行政機関等から配信されるお知らせを受信することができるようになります。
- サービス検索・電子申請機能(ぴったりサービス)
子育てに関するサービスの検索やオンライン申請(子育てワンストップサービス)が可能となります。
- 情報提供等記録表示(やりとり履歴)
あなたの個人情報を、行政機関同士がやりとりした履歴を確認することができます。
- もっとつながる
外部サイトを登録することで、マイナポータルから外部サイトへのログインが可能になります。
公的個人認証サービス
通常のインターネット利用でも、本人認証が必要な場合には、電子署名に関する認証局の電子証明書がありますが、マイナンバーを用いたインターネット利用にも同様な認証サービスがあります。それを公的個人認証サービスといいます。
通常の電子証明書と同様に、マイナンバーの電子証明書も本人認証をするだけで、個人情報は含んでいません。
自宅のパソコンからマイナンバーを用いて電子申請などを行うための手順を示します。
- マイナンバーのICチップに電子証明書を登録します。住民票のある市区町村役場で、個人番号カードに電子証明書を記録してもらえます。個人情報カード交付の際に行なうこともあります。
- 電子証明書を利用するためのソフトウェア「利用者クライアントソフト」を、公的個人認証サービスポータルサイトから無料でダウンロードする。
- ICカードリーダを購入します(スマートフォンを利用することもできます)。コンビニや量販店にあります。
- マイナンバーをICカードリーダを介してパソコンに接続します。マイナンバーが必要なサイトにログオンすると、自動的にマイナンバーからマイナンバーが送られますが、なりすましを防ぐためにパスワード(後述)の入力が求められます。
電子証明書には、用途に応じて、署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書の2つがあります。
- 署名用電子証明書
電子文書が、「利用者が作成し送信したこと」を証明するものです。主に行政への電子申請(e-Tax等)を作成・送信する際に用います。パスワードは6桁~16桁の英数字です。
- 利用者証明用電子証明書
これは「ログインした者が、利用者本人であること」を証明するものです。マイナポータルへのログイン、コンビニ等での公的な証明書の交付などに用います。セキュリティの重要性が比較的低く操作性が求められるので、パスワードは4桁の数字になっています。
電子証明書の有効期間は、個人番号カードと同様に5年間です。ただし、署名用電子証明書については、住所・氏名・性別が変更された場合には無効となります。
法人用マイナンバー
法人にもマイナンバーが交付されます。その用途は、個人用と大差はありません。
しかし、法人用マイナンバーは、個人番号と大きく異なる点があります。
- すべての法人に交付されるのではなく、登記された法人、国税関連で既定されている法人などに限定られ、それ以外は希望により交付されます。
- 法人番号は13桁です。設立登記法人には、すでに12桁の「会社法人等番号」が交付されており、先頭に1桁を付加したものです。
- 会社法人等番号が公表されているように、法人番号も原則として公表され第三者も知ることができ、自由に用いることができます。
個人事業主は法人ではないので、自分の個人番号を取引に使うことになります。取引先に個人番号を伝える必要があり、セキュリティへの配慮が求められます。
特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン
個人情報保護委員会は、次のガイドラインを策定しています。
特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/my_number_guideline_jigyosha.pdf
金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン
特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/my_number_guideline_bessatsu.pdf
特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(行政機関等・地方公共団体等編)
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/my_number_guideline_gyosei-chihou.pdf