ラジオ放送は、音声をそのまま送るアナログ放送と、音声をデジタル化して送るデジタル放送に区分できます。アナログ放送のほうが広く使われています。
アナログ音声放送
アナログ放送の区分
方式 変調方式 伝送周波数 受信範囲
AM放送 振幅変調 中波 526.5k~1606.5kHz 海外まで
FM放送 周波数変調 超短波 30MHz以上 数10~100km
短波放送 振幅変調 短波 3MHzから30MHz 全世界
- 変調方式
変調とは音声の波形を周波数の高い搬送波に変えることですが、振幅変調とは音声波形を搬送波の振幅で表現するのに対して、周波数変調は搬送波の周波数の変化で表現します。
- 周波数と音質
ここでの周波数とは搬送波の周波数のことです。搬送波の周波数が大きいほど元の音声波形をきめ細かく表現できるので、音質がよくなります。
人間が通常感じる周波数は約20~20,000Hzですが、AM放送はそれよりは狭い範囲の音を放送しています。そのため、人声には影響はないが音楽などの音質は悪くなります。
- 周波数と到達距離
周波数が小さい(波長が長い)中波や短波は、地球全体を覆っている「電離層」で反射します。さらに、短波は地表面でもよく反射するので、地球の裏側でも受信できます。
逆に、超短波(高周波数の電波)は光に似て、電離層を突き抜けてしまうし、ビルや山などの障害物や雨や雲などの天候の影響を受けるので到達距離は短くなります。そのため、広い範囲に放送するには中継局を設置する必要があります。
このような特性により、通常のラジオ放送ではAM、音楽番組などはFMが多いようです。AMは災害時でも受信しやすいし、受信機も簡単に安価で作れるので災害対策としても重要です。短波放送は、主に海外向け放送に使われています。
アナログ放送関連のトピックス
- モノラル放送とステレオ放送
- モノラル放送とは、単一の音声信号で送出する放送のことです。
ステレオ放送とは、左右2チャンネルの音声信号を送る放送です。ラジオの左右のスピーカでそれぞれの音声を出力することにより、聴取者に音響の立体感を与えることができます。
さらに、チャンネル数を多くして、立体感を高めるマルチサラウンドステレオ放送もあります。
ステレオ放送はAMでもFMでも行われていましたが、現在ではAM放送のほとんどはモノラルだけになりました。
- FM放送の特徴は到達地域が狭いことです。これは欠点でもありますが、遠隔地域同士では同じ周波数を用いても混信しないので、周波数の申請が容易だという利点でもあります。それに狭い地域ならば中継器の必要もありません。
コミュニティ放送とは、FMの周波数を使い、地域の情報を流すことを目的とした放送です。
ラジオ受信機
ラジオの構成
ラジオは、アンテナ、同調回路、検波回路から構成されています。
- アンテナ
到来する電波をとらえ高周波電流に変えます。
- 同調回路
様々な周波数の電波の中から自分の希望する周波数の電波を選び出す働きをします。その操作を選局といいます。コイルとコンデンサーによる共振回路によって構成されます。
- 検波回路
高周波電流を低周波電流に変えることで音声の周波数を取り出します。それを増幅してスピーカーがら出力します。
これらをうまく調整して、特定の周波数だけを増幅するための方式として最も普及しているのがスーパーヘテロダイン方式です。
受信周波数帯による区分
AMラジオ、FMラジオ、短波ラジオのように単一の周波数帯放送だけを受信できるラジオを1バンドといい、AM+FMを2バンド、AM+FM+短波の全てを受信できる(あるいは、AM+FM+テレビ音声)ものを3バンドといいます。
選局(同調)操作方式
複数バンドの場合、通常の受信機ではスイッチによりAM/FMなどの切り替えをします。
- スライド方式
選局スライドを周波数目盛りに合わせる方式です。この目盛りと実際に受信している周波数との間には微妙なずれがありますので、細かい操作が必要です。同期したときにランプが点灯するものもあります。
- デジタル表示方式
現在の周波数がパネルに表示されているので、それを見ながら△▽ボタンを操作します。デジタル表示により微細な操作がしやすくなります。
- DSPラジオ
DSP(digital signal processor)というマイクロプロセッサで制御します。近辺の周波数から最適な局の周波数に自動的に同調する機能があります。また、よく視聴する局をプリセットしたり、時間設定したりする機能もあります。
デジタル音声放送
デジタル音声放送とは、デジタル変調方式を利用したラジオ放送のことです。
日本ではISDB-TSB(Integrated Services Digital Broadcasting Terrestrial for Sound Broadcasting)という方式が採用されています。これは、地上デジタルテレビ放送でのISDB-T方式の音声放送規格と同じです。すなわち、テレビのワンセグの音声版のような位置づけです。
日本でのデジタル音声放送は、衛星デジタル音声放送、BSデジタル音声放送、CSデジタル音声放送で行っています。地上デジタル音声放送は、試験放送はしたのですが廃止されました。
通常のラジオではこの放送を受信できません。専用の受信機が必要となりますが、PCやスマーフォン、カーナビなどに組み込む方式があります。