財務諸表、会計監査など
大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)および上場会社は、一般的に四半期決算であり、3か月単位の財務諸表を作成し、監査法人や公認会計士による監査を受けたのち、株主総会で最終的に承認されて公表されます。
財務諸表には次のものがあります。
・貸借対照表
・損益計算書
・持分変動計算表
・注記表
・連結計算書類(上場会社のみ)
財務諸表を作成する目的には
・株主に経営成績を報告するため
株価を高めることにより、資金が潤沢になる、企業価値が高まる効果がある。
・銀行などへの信用を高めるため
融資が受けやすい、低い利率が適用されるなどの効果がある。
・納税申告のため
などがあります。
そのため、財務諸表は正しく、わかりやすいことが必要であり、一般に広く用いられている方法に従うことが求められます。そのために、会計基準や会社法、金融商品取引法、税法など多様な規定があります。
これらの財務諸表が企業の財政状態や経営成績を適正に作成されていることを、第三者である監査法人や公認会計士による会計監査が行われます。また、財務諸表が過失や不正がなく正確に作成されるように、経営者が内部統制を行うことが義務付けられています。
財務報告を取り巻く大きな流れに国際標準への対応があります。
株取引や金融が国際化してきました。そうなると「一般に広く用いられている方法」が、国内だけでなく国際的な視点から見直す必要があります。これまでにも部分的な改定が継続的に行われてきました。そして現在、国際会計基準(IFRS)と共通にしようという動きになっています。
これらは、財務処理の根本に関係することですから、会計システムの大きな見直しや再構築が必要になります。
情報システムでの留意事項
ほとんどの企業では、財務会計処理はシステム化されています。会計システムにより財務諸表が作成され、会計監査も会計システムが監査対象になります。そのため、会計システムは、単に財務諸表を作成するだけでなく、正しく作成するために、多様な機能や仕組みが必要になります。
- 正しい処理ができること
プログラムのバグや操作の誤りがあると、正しい財務諸表が得られません。エラーがないように、システムの構築やテストに十分な対策を講じることが必要です。
情報システムにより自動的に勘定科目の仕訳が行われますが、そのロジックに誤りがあれば、正しい財務諸表が得られません。情報システムが会計基準や法律に正しく準拠していることが求められます。
- データが正規のルールにより正しく入力されていること。
データ修正を容易にするとの理由により、正規の入力システム以外にデータベースを直接に修正するような「裏口」があってはいけません。裏口が作れない対策を講じる必要があります。
正規の担当者が行っていることを証明し記録するために、入力画面を開くときにパスワードにより本人確認をすること、入力データに入力者名や入力時刻なども加えるなどの対策が必要になります。
誤りのデータ、架空取引のデータが入力されないように、入力時にデータチェックを行うことが必要です。それでも、取引が発生したのにデータが入力されないエラーは防げません。これらの対策として、毎日、入力データの一覧表を上司に送る仕組みにするとか、入力データから正規の伝票を発行する仕組みなどを組み込む必要があります。
- 会計監査や内部統制を行うのを支援する機能が必要
情報システムの処理の流れやロジックを明確にした文書を作成し、常に最新状態に更新しておくことが必要です。
抜取検査を容易にするために、監査で行う切り口でデータを選択・集計できる機能、あるデータを入力してから最終結果に至るまでのトレースができる機能、監査用データを入力してその結果を調べられる機能などを組み込んでおくことが望まれます。
- 決算処理の短縮化、決算の短期間化の要請が強い
法定の四半期報告の提出期限は45日以内ですが、東京証券取引所では30日以内の発表を要請しています。すなわち、決算の翌月中までに行えばよいのですが、それまでに、社内手続きがあります。特に在庫の評価などに時間がかかる場合もあります。それで、コンピュータ処理はもっと早期に行う必要があります。
当四半期の状況が翌月中旬にならないとわからないようでは、翌月以降の経営計画や業務計画に大きな支障を与えます。そのためにも速報レベルでは数営業日以内に算出することが求められます。
経営や業務の観点では、四半期ではなく毎月での決算が求められます。さらには、週単位、日単位でも求められることすらあります。それに対処するには、極端にいえば、データが入力された時点でリアルタイムに関連するファイルが更新され、必要なときにいつでも財務諸表(重要な項目だけでも)が得られる情報システムにすることが求められます。
- 全基幹業務系システムでの対応が必要に
会計システムは、販売システムや購買システムなど多くの情報システムと連動しています。それらに誤りがあれば、会計システムでも誤りが引き継がれ、結果として誤った財務諸表になってしまいます。
ここでは会計システムを例にしましたが、会計システムに要求されることは、そのまま、他の情報システムにも要求されることなのです。
システム化を支援する法律
多くの法律や制度は、IT利用が普及する以前に策定されたので、紙の伝票や書類を前提としています。それでは、システム化を進めても、法的に紙が必要なために二重作業が発生して、効果を阻害します。そのような法的規制を解消するために、多様な緩和措置が講じられてきました。
- 文書のデジタル保存
粉飾決算や虚偽税務申告を防ぐために、受発注伝票や領収書などの原始伝票を保存させ、会計監査や税務監査のときに調べる方法をとってきました。ところが、それらの量は膨大であり、保存コストがかかります。ワークフロー管理システムを活用する場合でも、紙の文書を回覧しなければならないのでは、その効果は限定されてしまいます。それを解決するために、「電磁的記録」での保存が認められています。
「電磁的記録」には,「電子的文書」と「電子化文書」に区分できます。電子的文書とは,ネットワークによる商取引データのように,当初から電子的に作成された書類で,これを電子的に保存することは,電子帳簿保存法で認められています。
電子化文書とは,領収書のように,他人が作成した紙の書面をスキャナで読み込んだものです。e-文書法は,スキャナで読み取った画像データも一定の要件を満たせば原本として認められるとしたものです。
- 電子署名法
企業間での取引では、ほとんどの文書に公印が押されていることにより、正式文書とみなされます。デジタル文書でその押印にあたるものが電子署名で、それを用いることにより、本人が作成したこと、改ざんされていないことが証明できます。電子署名法により、電子署名が法的な効果をもつことが定められています。
- 電子商取引での印紙税対象除外
印紙税とは、経済取引に係る税金で3万円以上の金額記載のある領収書や契約書に、定められた金額の収入印紙を添付することにより納税する仕組みになっています。ところが、それらはオンライン取引にすることにより、印紙税の課税対象外になります。