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e-文書法、電子帳簿保存法、インボイス制度

キーワード

e-文書法,電磁的記録,見読性(可視性)、検索性、完全性、機密性、電子帳簿保存法、税務書類,真実性,可視性,電子署名,タイムスタンプ、インボイス制度、消費税、適格請求書等保存方式


e-文書法

正式名称「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」2004年、最終改正2019年
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=416AC0000000149

第一条(目的)
 この法律は、法令の規定により民間事業者等が行う書面の保存等に関し、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法(以下「電磁的方法」という。)により行うことができるようにするための共通する事項を定めることにより、電磁的方法による情報処理の促進を図るとともに、書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

e-文書法は、商法や税法、会社法、保険業法などで紙の保管が義務付けられていた書類を、電磁的記録に変換して保管することにより、紙の記録を保管しなくてもよいという法律です。紙による保管を否定するものではなく、電磁的記録にするか否かは企業の自由であり、特別の申請や認可は必要ありません。
(税法など他の法律で、さらに厳格な制限がある場合は、それに従う必要がありますが、そのような制限がない場合での取り扱いを定めたものです)。
 電磁的記録とは「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。」と定義されています。人の知覚で認識できないとしているので、写真フィルムなどは含みません。

電子化の4要件

保管文書が電磁的記録だけになることから、それぞれの文書に関して管轄省庁がそれぞれに要件を設定しています。その要件は微妙に異なっていますが、経済産業省は、次の4要件を定めています。「見読性」以外は、保存するデータの種類によって、必ず満たすべき要件ではありません。

見読性(可視性)
ディスプレイやプリンタにより、見たいデータが直ちに明瞭・明確に表示できたり、紙媒体に鮮明にプリントアウトできる必要があります。
検索性
保存されているデータの中から、必要なときに必要なデータを取り出すことが、容易にできることです。そのためには、蓄積されたデータの体系的保存のルールと、検索方法の周知徹底する必要があります。
完全性
原本が正しく電磁的記録にしたこを証明するために、電子署名、タイムプリントなどの手段が必要です。
法的な保存期間が規定されている文書は、その期間内に保存しているデータが消失、破損、改ざんされない措置が講じられていなければなりません。そのような事態が発生した場合でも、いつ・どのように起こったかがわかる対策も必要です。
機密性
アクセス権限を持たない者が保存データに不正アクセスができないように、制度的・技術的な対策が講じられていなければなりません。

電子帳簿保存法

正式名称「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」1998年、最終改正2023年
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=410AC0000000025
国税庁「電子帳簿保存法一問一答」2023年

第一条(趣旨)
 この法律は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等について、所得税法、法人税法その他の国税に関する法律の特例を定めるものとする。

一般文書を対象にしたe-文書法に対して、この法律は国税に関する帳簿書類を対象にしたものです。

対象書類と保管方法

拡大図

電子取引を行った場合は、紙での保存は認められず、必ず電子データとして保存しなければいけません。
それに対して、電子取引以外のものは、紙での保存もできますが、電子帳簿等保存やスキャナ保存にして紙での保存をやめることができます。

電子化の要件

電磁的記録化や保管にあたって、規制ルールが適用されます。
 電子帳簿保存法は、1998年にできた法律ですが、その後、電子商取引の形態の変化や技術の進歩などの実態に合わせてルールの改正が続いています。
 2015年 以前は記載金額が3万円未満のものに限定されていていたが撤廃
       電子化した担当者の電子署名が必要だったが撤廃
       カラー画像ではなくグレースケールでの保存可、サイズ情報の保存が撤廃。
 2016年 スマートフォンやデジカメ撮影の画像も認められる
 2021年 電子取引データの電子保存が義務化
 2023年 紙による保存の宥恕措置の廃止(2024年から)
       帳簿の電子保存・スキャナ保存で、事前の承認申請が不要になった
       スキャナ保存で、タイムスタンプ要件が緩和され、適正事務処理要件が廃止された
       全体として、検索要件が緩和された

e-文書法でも4つの要件が示されていましたが、電子帳簿保存法では特に真実性(完全性)と可視性が重視されています。

真実性の確保

可視性の確保

タイムスタンプ

領収書などの電子化データが二重発行されたり、保存中に改ざんされていないことを証明するために,その書類が電子化されら時刻を証明する証明書が必要です。それをタイムスタンプといいます。
 見積書、注文書、検収書、入庫報告書、貨物受領書など資金や物の流れに直接連動しない書類はタイムスタンプは不要です。
 データの訂正や削除の履歴が残る(または訂正や削除ができない)システムに保存していれば、タイムスタンプは不要です。
 以前は、タイムスタンプとともに、電子化した担当者の電子署名も必要でしたが、現在では不要になっています。  タイムスタンプの付与期間が最長約2か月まで延長されました。

スキャナ保存の条件

スキャニングしたときのタイムスタンプが必要です。
 スキャナ保存する場合、以前は、不正防止の観点から、事務処理を2人以上で行うなどの相互牽制や定期的な検査のほか、定期検査でのスキャンデータと紙の照合、検査完了まで紙の原本保管が必要でしたが、2022年の改正後は、このような相互チェックや定期検査は廃止されました。
 以前は、スキャナの解像度など細かな条件がありましたが、現在では機器の性能が向上したこともあり、これらの制約は廃止されています。


優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置

税務調査で思わぬ申告漏れがあると、過少申告加算税が課せられます。悪意がなく、「優良な電子帳簿」を備えた電子データで保存している事業者は、過少申告加算税の税率が低減される優遇措置が認められます。
 優良な電子帳簿である条件を示します。
   要件        優良な  その他の
               電子帳簿 電子帳簿
  訂正・削除履歴の確保要件   ●   -
  相互関連性要件        ●   -
  関係書類等の備付け      ●   ●
  見読可能性の確保       ●   ●
  検索要件(検索機能の確保)  ●   -
  税務調査協力(注)      -   ●
 (注)国税庁職員の質問検査で電磁的記録のダウンロードの求めに応じる。


インボイス制度

消費税

消費税は間接税です。消費者が小売店から物品を買うときには消費税を支払います。小売店は、消費者から預かった消費税を納税します。すなわち、消費者が消費税の実質負担者であり、小売店は納税義務者になります。
(注)免税事業者
  課税売上高が1千万円以下の事業者は、消費税の納税義務を免除されており、免税事業者といい納税義務者と区別しています。

小売店は、商品を卸売業から、卸売業はメーカーから仕入れています。さらにメーカーは材料を仕入れています。その仕入のたびに消費税が加算されています。取引の各段階での仕入に対して二重、三重に税が課されることがないよう、売上に係る消費税額から仕入に係る消費税額を控除する(=差し引く)仕入税額控除方式がとられています。

インボイス制度

控除額を公正に算出するためには、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を記載した証明書を発行する必要があります。それを適格請求書(インボイス)といいます。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、消費税徴収の公平性・透明性の向上のために、2023年から新方式が適用されることになりました。
 「納税義務者は適格請求書発行事業者が発行した適格請求書がなければ、仕入税額控除を受けることができない」という制度です。

免税事業者への影響

免税事業者にとって適格請求書発行事業者になるのは、納税義務を伴うことになりますし、事務処理が煩雑になります。しかし、売手側の事業者が適格請求書発行事業者でないと、買手側事業者は仕入税額控除ができないので、取引を見直されるケースが発生する恐れがあります。

電子帳簿保存法との関係

適格請求書は、EDI取引、電子メール、Webサイトを通じた電磁的記録(電子インボイス、デジタルインボイス)による提供も可能です。この際、交付または受領した場合は、インボイス要件の確認をしたうえで、タイムスタンプ・訂正や削除ができないクラウドシステム、検索機能の装備など電子帳簿保存法に準じた要件が必要です。