パッケージとは
給与計算や財務会計などの業務は、ほとんどの企業でシステム化していますし、多くの企業が同じような処理をしています。それならば、個々の企業が個別な仕様で自社のためのシステム(カスタムソフトウェアという)を開発するよりも、ベンダが標準的なソフトウェアを構築しておき、それを利用するほうが便利です。それを市販アプリケーションパッケージ(略してパッケージ)といいます。
カスタムソフトウェアを誂えの洋服だとするならば、パッケージはイージーオーダーだといえます。次のような利点があります。それで、1980年頃にMakeからBuyへというキャッチフレーズで、パッケージの活用が進みました。
- 自社仕様で白紙の状態から開発するよりも、短期間で比較的安価に開発できる。
- 既に多くの企業で利用されているので、品質の欠陥が修正されている。
- 税法の改正など、各企業共通の変更では、ベンダがシステムの改訂版を提供してくれる。
- 個別業務パッケージ
- 給与計算や会計処理のように、限定した業務を対象にしたパッケージのことを個別業務パッケージといいます。
現在では、個別業務パッケージは、中小企業ではパソコン用のパッケージが多く利用されていますが、1980年代には、大企業を対象としたものもありました。
- 業種パッケージ
- 1980年頃になると、中小企業でも情報化の動きが進んできました。また、中小企業向けあるいは大企業のローカル業務抜けにオフィスコンピュータ(オフコン、独自のOSによる小型コンピュータ)が普及してきました。
中小企業が独自の情報システムをカスタムソフトウェアで構築するのは、コスト的にも人材的にも困難です。それで、スーパーストアや図書館など特定の業種を対象に、全社的な基幹システムを統合したパッケージ(業種パッケージ)をオフコンに搭載して販売することが多くなりました。
ERPパッケージ
1990年代になると、ERPパッケージが注目されるようになりました。ERPパッケージとは、統合業務パッケージともいわれ、企業の業務全体をカバーするパッケージです。単純には、大企業を対象にした業種パッケージだともいえますが、設計思想が大きく異なります。
ERP(Enterprise Resource Planning)とは経営資源最適化であり、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)と同じような意味です。ERPパッケージの目的は、ビジネスプロセスを見直して、経営資源全体をリアルタイムに把握し、その有効利用を図ることにあります。
ERPパッケージの利点
ERPパッケージには、個別業務パッケージの利点に加えて、次のような利点があります。
- 統合化されているので、販売システムの売上データと会計システムの売掛金データが連動するなど、各システム間での連携が容易である。
- 優れた先行企業のベストプラクティスを取り入れているので、一定水準以上のシステムにすることができる。
- リアルタイム性に優れており、売上データを入力すると売掛金データなど関連するデータに即時に反映される。極端には随時財務諸表が得られる。
- 海外の法律や商取引慣習、多国言語、多国通貨などを取り入れているので、海外事業所、海外取引のある企業に有効である。
ERPパッケージは、次の理由により、大企業を中心に急速に広まりました。
- BPRが重要だとの認識が高まったこと
- ダウンサイジングの動向により、従来のレガシーシステムをオープンシステムに移行する必要があったが、ERPパッケージはオープンシステムでの稼働を前提にしていたこと
- 西暦2000年問題への対応のため、既存システムの総点検と修正が大きな問題となったこと
しかし、当時のERPパッケージは、パッケージ価格だけでも数億円かかり、実際にシステムを構築するには数十億円の費用がかかりましたので、導入は大企業にとどまりました。
2000年代の中頃になると、大企業での導入が一段落したことから、中堅・中小企業を対象とした小規模なERPパッケージが普及してきました。
ERPパッケージ導入での留意点
- BPRの実現を目的とする
- ERPパッケージ導入には多大の費用がかかりますので、単にシステム改訂のコストダウン対策としたのでは、その効果は十分ではありません。ERPパッケージの効果をあげるには、業務の仕方や組織構成などを抜本的に変革すること、すなわちBPRを行うことがが必要です。
- カスタマイズ(アドオン)の抑制
- 自社環境に合わせることを(広義の)カスタマイズといいます。それには、部門構成を定義するとか、定額償却/定率償却を選択するなど、メーカーが想定しておりパラメタで指定できる(狭義の)カスタマイズと、メーカーが想定していない自社独特の処理で、プログラムを作成する必要のあるアドオンがあります。
アドオンを多く行うと、ERPパッケージの利点が生かされません。カスタマイズ(アドオン)を極力抑えることが、ERPパッケージ導入を成功させる秘訣だといわれています。すなわち、ERPパッケージに合わせて、業務の仕方を変えることになります。
- 適切なERPパッケージの選択
- カスタマイズを少なくするということは、システムに業務を合わせることになります。また、ERPパッケージには、製造業に適したものや小売業あるいは医療業界など特定の業種に特化したものなど多様です。それで、自社ニーズとERPパッケージの機能を比較検討(フィット・ギャップ分析という)して、適切なERPパッケージを選択することが重要です。
- 適切なパートナーを選定する
- ERPパッケージそのものは単なるプログラムの集合体です。それを自社のニーズとマッチさせ、BPR実現に結びつけるには、適切な経営コンサルタントや優秀なベンダの協力が必要です。しかも、いったんERPパッケージを導入したら、簡単にカスタム開発に戻すことができません。ビジネスパートナーとして適切なコンサルタント、ベンダを選定することが重要です。
- 経営者の積極的なリーダーシップが重要
- 多大な費用がかかること、業務改革への利用部門の協力を得ることなどから、通常のシステム開発と比較して、さらに経営者の積極的なリーダーシップが重要になります。