SWOT分析
「彼(かれ)を知り己(おのれ)を知れば、百戦して殆(あや)うからず」(孫子)というように,経営戦略を検討するには,まず,自社の状況(内部環境、経営資源という)と,自社を取り巻く環境(外部環境)を正しく認識することが重要です。
従来から経営資源として,「ヒト」「カネ」「モノ」があげられていましたが,「情報は第4の経営資源である」といわれるようになりました。
それに対して,外部環境には、法律,環境保全,経済,景気,顧客動向,競争企業,新製品動向などがあります。
これらの内部環境と外部環境について,それらが自社に好影響を及ぼすのか悪影響なのかにわけます。そうすると,自社の持つ強み(S:Strength),弱み(W:Weakness),外部環境の機会(O:Opportunity),脅威(T:Threat)の4つに区分できます。
それを下の図のようにして分析する技法を,この4つの英単語の頭文字をとってSWOT分析といいます。
好影響 | 悪影響 | |
---|---|---|
内 部 環 境 |
Strength(強み)
|
Weakness(弱み)
|
外 部 環 境 |
Opportunity(機会)
|
Threat(脅威)
|
このような表を作成するにあたっては,経営者,スタッフ,現場の人など多くの立場の人が集まり,意見を出し合うことが効果的です。
それにより,より多くの項目が列挙され,重要度が決められるという利点もありますが,それにもまして,討論を行うプロセスにおいて,全員が共通の現状認識や問題意識を持つことができます。それにより,全員が積極的に経営戦略の実現に取り組むようになります。
上の例では「製品品質は優れている」というような抽象的な表現になっていますが,これは不適切です。実際には「○○製品へのクレーム件数は○○件である」とか「○○製品は他社製品と比較して,○○の精度が○○だけよい」というように,具体的に,できれば数値的に表現するのがよいのです。それにより,認識がより客観的になりますし,重要性も理解できるし,どの程度にするべきかの目標にもなります。
日本は石油や石炭などの地下エネルギー資源が乏しいことが弱みでした。それを解決しようとして太平洋戦争を起こしてしまいました。終戦直後の日本は,石炭増産を旗印にしたのですが,それもエネルギーコストを増加させるだけであり,石炭資源も底をついてしまいました。
ところが,石炭がないと弱みが,比較的安価であり運転しやすい石油に転換する促進剤になって,効率のよい設備が多く利用されるようになりました。これが当時の高度成長を実現させるという強みになったのです。
ところで,「塞翁が馬」の故事を知っていますか?