ネットワークの発展とその効果を、社内でのIT利用の深まりと社外への拡大の二つの方向で概観します。
社内での深まり:社内でのネットワーク利用は、コンピュータ利用の大衆化を実現・促進しました。
- 初期のコンピュータは、通信機能をもちませんでした。それをスタンドアロンといいます。コンピュータへの入力はコンピュータ室に持ち込み、そこのプリンタで出力された帳票は人手で配布したり郵送していました。
支店や工場にもコンピュータを設置した場合も、本社コンピュータとのデータ交換は、磁気テープなどの媒体を郵送していました。その後、データ交換専用のコンピュータを使うようになりましたが、処理としてはスタンドアロンでのバッチ処理でした。
(現在のパソコンは通信機能をもっていますが、LANやインターネットに接続せずに使うことをスタンドアロン利用ということがあります。)
- 1970年代後半には、TSSが普及して、エンドユーザが自らコンピュータを利用できるようになりました。EUCの始まりです。
- 1980年代になると、OAの概念とともに、パソコンがビジネスに用いられるようになりました。1980年代末には、ダウンサイジングが進み、LAN(Local Area Network、構内通信網)やCSS(Client-Server System)の環境が整備されました。
その環境では、グループウェアが普及し、コンピュータ利用の大衆化がますます進みました。
社外への広がり:ネットワークにより、情報システムの対象が事業所間、企業間へと拡大してきました。本社と支店・工場間、関係会社間など限定された遠隔地とのネットワークをWAN(Wide Area Network,広域通信網)といいます。
- 日本での最初のオンラインシステムは、1959年の国鉄(現JR各社)の「緑の窓口」です。1964年に東京オリンピックで、各競技場を結ぶオンラインシステムが利用され、翌年、富士銀行での本店と支店間のファイル転送に利用されました。
- しかし、これらは特殊な例で、一般の企業でオンラインが用いられるようになったのは1970年代です。当時は、事業所間でファイル転送を行う程度のものでした。
- 日本でのオンライン環境に画期的な変化が起こったのは1895年です。それまで通信回線は日本電信電話公社が独占しており、企業間でのデータ通信は原則として認められていませんでした。それが段階的に緩和され、1895年の第3次通信自由化により、現在のように企業間ネットワークが自由になったのです(日本電信電話公社は株式会社NTTになり、その後多くの通信事業者が出現しました)。
これが、SISの概念とあいまって、企業間ネットワークが急速に普及しました。
- それとともに、POS/EOS、QR/ECR、EDI/CALS/ECなどの企業間ネットワークによる情報交換を活用した取引形態が普及し、ビジネスに大きな影響を与えました。
インターネット:インターネットは、この二つの流れを統合したものだといえます。