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刑法(情報セキュリティ関連)

キーワード

電磁的記録不正作成罪、電子計算機損壊等業務妨害罪、電子計算機使用詐欺罪


刑法 (http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html)のうち、情報セキュリティ関連事項を列挙します。

不正アクセスに関しては不正アクセス禁止法がありますが、不正アクセス禁止法は無権限者がネットワークを介して不正行為をすることを対象にしています。アクセス権限がある者の内部不正などは刑法が適用されます。

データの改ざんに関する罪

コンピュータデータの改ざんをする,しようとした者がこれにあたります。

電磁的記録不正作出罪(第161条の2)
人の事務処理を誤らせる目的で,その事務処理の用に供する権利,義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作成・その未遂
  • 「電磁的記録」:コンピュータ内蔵の磁気ディスクや外部記憶媒体のUSBメモリなどに記録されたデータおことです。
  • 「人」:自己以外の者です。企業(勤務先でも)もそれにあたります。
  • 「事務」:財産上・身分上その他,人の生活に影響を及ぼしうると認められる一切の仕事をいいます。会社の会計システム、販売システム、給与システムなどほとんどの情報システムが該当します。
  • 「用に供する」:当該事務処理のために使用するという意味です。
  • 「権利・義務」:給与ファイルや取引ファイルなどがこれにあたります。
  • 「事実証明」:顧客データベースファイルなどがこれにあたります。
  • 「不正に作成」:これには2つの考え方があります。
    ・データ入力の権限がない者が作成、あるいは権限のある者が権限を逸脱して作成する場合に限定した考え方
    ・データ入力担当者が権限を濫用して内容虚偽のデータを入力する場合も含むという考え方
  • 「作出」:既存の記録に追加、削除、改変して,新たな記録にを生じさせる場合を含みます。単に記録を消去したには作出ではありません(電磁的記録毀棄罪(第259条)になります)。
不正作出電磁的記録供用罪(第161条の3)
不正に作られた権利,義務又は事実証明に関する電磁的記録を,第1項の目的で,人の事務処理の用に供した者、未遂も含む
  • 「第1項の目的」:第1項を省略していますが、「人の事務処理を誤らせる目的」をもって作出されたものでなくて対象になります。
  • 「用に供した(供用)」:(自分あるいは他人が)不正に作成した記録を、コンピュータで処理できる状態にしておくことです。
支払用カード電磁的記録不正作出罪(第163条の2)
他人のクレジットカードやキャッシュカード、それらを構成する電磁的記録を不正に作成する罪
電磁的記録毀棄罪(第259条)
権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄する者

ウイルス作成や不正アクセスに関する罪

不正指令電磁的記録作成罪(第168条の2)
ウイルス作成罪ともいえます。 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者
不正指令電磁的記録取得罪(第168条の3)
前項の目的で,同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し,又は保管した者
電子計算機損壊等業務妨害罪(第234条の2)
人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し,若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え,又はその他の方法により,電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず,又は使用目的に反する動作をさせて,人の業務を妨害した者
不正アクセス,Webページ改ざん,DoS攻撃など。

その他

電子計算機使用詐欺罪(第246条の2)
人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り,又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者
オンライン詐欺,クレジットカード詐欺,他人のカード番号の不正利用。未遂は対象外です。
わいせつ物頒布等(第175条)の改正
わいせつな文書,図画その他の物を頒布し,販売し,又は公然と陳列した者。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者。有償で頒布する目的でこれらの物を所持・保管した者
いわゆるポルノサイトがこれにあたります。

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