2005年までに最先端のIT国家にするというe-Japan戦略は,部分的には実現しましたが,未だ多くの課題が残されています。また,ユビキタス社会といわれるようにITの発展は急速ですので,継続的な推進を行う必要があります。
それで,IT戦略本部は2006年に第二次5カ年計画とでもいうべき,IT新改革戦略を発表しました。「いつでも、どこでも、誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現」というキャッチフレーズで、2010年までに日本を「世界のIT革命を先導するのフロントランナーになる」ことを目標にしています。
1.ITの構造改革力の追求
(1)21世紀に克服すべき社会的課題への対応
○ ITによる医療の構造改革
--レセプトの100%オンライン化
○ ITを駆使した環境配慮型社会
--ITでエネルギーや資源の効率的な利用
(2)安全・安心な社会の実現
○ 世界に誇れる安全で安心な社会
--地上デジタルによる災害情報提供で被害軽減
○ 世界一安全な道路交通社会
--ITSを活用し交通事故を未然防止
(3)21世紀型社会経済活動
○ 世界一便利で効率的な電子行政
--オンライン申請率50%達成
○ IT経営の確立による企業の競争力強化
--ITによる部門間・企業間連携の強化
○ 生涯を通じた豊かな生活
--テレワーク、e-ラーニングの活用
2.IT基盤の整備
(1)デジタル・ディバイドのないIT社会の実現
○ ユニバーサルデザイン化されたIT社会
--誰もが安心利用し恩恵を享受できるIT開発推進
○ デジタル・ディバイドのないインフラの整備
--いつでも、どこでも使えるユビキタス化
(2)安心してITを使える環境の整備
○ 世界一安心できるIT社会
--不正アクセス等サイバー犯罪の撲滅
(3)人材育成・教育
○ 次世代を見据えた人的基盤づくり
--教員一人1台のPC、モラル教育の推進
○ 世界に通用する高度IT人材の育成
--高度IT人材育成機関の設置等
(4)研究開発
○ 次世代のIT社会の基盤となる研究開発の推進
--中長期的な技術戦略の策定
3.世界への発信
○ 国際競争社会における日本のプレゼンスの向上
--世界の一翼を担う情報ハブ
○ 課題解決モデルの提供による国際貢献
--ITによるアジア諸国等への貢献
IT新改革戦略はe-Japanの延長として、その方針をさらに具体的な課題解決を内容としていますが、そのなかでも次の2つが最重要項目になっています。
少子高齢化が進んでおり,国民保険の運営が困難になってきました。一方,社会保険庁のずさんな体質が問題になりました。このような観点から,医療費の軽減が喫緊の課題になっています。その解決には,医療機関でのIT活用による合理化が必要になります。
また,それにより医療過疎地域での医療サービス向上の効果が期待できます。
IT基本法での重点分野に「電子政府」「電子自治体」があります。それは、次の分野があります。
・行政内部のIT活用による生産性の向上
・行政と住民や企業との接点のオンライン化
各種申請等のオンライン化
行政からの情報提供拡大とWeb公開
・実現のためのインフラ整備。ネットワーク、各種コード化など
よく例に挙げられたのは、引っ越し時に、これまでは旧住所と新住所での市役所などを行き来したり、市役所のなかでも幾つもの課を回り、しかも同じような書類を何度も書かされる。それがワンストップで全ての処理ができるし、パソコンやスマートフォンで休日でも夜間でもできる・・・というのです。非常に便利になる(はずでした)。
「世界一便利で効率的な電子行政」を掲げたのですが、高い費用をかけて開発したシステムなのに利用率が低い。国民目線で戦略策定・評価指標設定がなされていないなど、オンライン申請システムの評判は非常に悪いものでした( 参照:「オンライン申請システムへの批判」)。