表面的な電子化はほぼ順調に達成されたのですが、肝心のBPR(業務の抜本的変革)が遅れていること、各省庁間の連携分野が遅れていること、国民の利用率が低いことなどが指摘されました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/ithyouka/houkoku/2008/honbun.pdf
IT新改革戦略の推進にあたっては、IT新改革戦略評価専門調査会が、毎年度の成果評価および次年度重点計画の策定を行い、Web上で公開しています。計画した項目(オンラインシステムなど)の進捗状況をチェックすることが主な目的であり、全般的には実施が取り消されたもの以外は順調に進んでいるとしています。しかし、次の課題が浮き彫りになったとしています。
https://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/043/honbun.html
「IT新改革戦略評価専門調査会の報告」に関連して、同報告書はPDCAのCであり、Aにつなげることが重要だとして、「IT基本法が目標とした高度情報通信ネットワーク社会を2015年までに実現するため、産業界の立場から、現行の戦略とその実施状況を評価しつつ、目指すべき社会像、新たな戦略の基本的な考え方と具体的戦略、推進体制の抜本的な強化等について提案」したものです。
取り組み全般の評価として、次の改善点を示しています。
・既存の制度や法律がボトルネックとなりIT導入効果が現れていない
・国民目線で戦略策定・評価指標設定がなされていない
・戦略を推進するうえでの横断的・統括的なマネジメントが行われていない
・国と地方自治体との連携が不十分
そして、新たなIT戦略の方針として、次を挙げています。
・政策の重点化と予算の別枠配分
・府省庁横断的なトップダウンの推進体制の構築
・規制、慣行の見直し
・国民がメリットを実感できる数値目標の設定
・目標達成期限の設定と達成状況の厳格な評価
「電子行政の実現に向けて」の具体的提言
・総理大臣を議長とする「電子行政推進会議」と実務担当機関である「電子行政推進センター」の設置
・国民IDと共通企業コードの導入
・行政機関間の情報連携を前提とした構造改革と行政業務見直しの徹底
各省庁がシステム数を上げることに関心が強く、肝心の利用者への配慮や費用対効果を無視したのか、利用率が極度に小さいシステムが続出し、批判を浴びることになりました。
http://www.jbaudit.go.jp/effort/zuiji/pdf/h21/210918_zenbun-8.pdf
利用されていない申請システムの例として、公正取引オンライン共通受付システムについて、会計検査院が公正取引委員会にあてた文書です。それによると・・・
・経費と利用状況
17年度 18年度 19年度 20年度
経費(万円) 2,218 1,456 4,384 5,816
電子申請数(件) 7,030 4,958 6,936 1,996
電子申請率(%) 10.6 7.9 7.0 3.3
20年度では1件当たり約3万円の経費になっています。しかも、利用度は下がるのに経費は増加しています。
このシステムには、30手続きがあるが、そのうち電子申請があったものは6手続にすぎない。最大が「不当景品類及び不当表示防止法違反等に係る申告」の1,383件で、全体の69.2%を占めており、上位3手続で1,993件、99.8%になり、この3手続き以外の利用率は0.1%だそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090918-OYT1T01117.htm
会計検査院は18日、利用率が10%を割った12システムを運用する10省庁に停止を含む改善措置を求めた。
検査院が現在稼働する49の電子申請システムを調べたところ49システムの全体の利用率は08年度34・0%だったが、この12システムには昨年度までの4年間で計約118億円の運用コストがかかっている。そのうち、下表の7システムは、利用率が1%にも満たなかった。
昨年度利用率が1%に満たなかった7システム ( )内は申請全体の数
運用元 システム名 利用件数
内閣府 汎用受付等 32件(7177件)
警察庁 電子申請・届出 16件(1984件)
総務省 電子申請・届出 688件(19万5843件)
政治資金・政党助 2件(6354件)
成関係申請・届出
財務省 電子申請 61件(6万9758件)
国税庁 電子開示要求 61件(13万4410件)
農水省 電子申請 39件(14万5865件)