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デジタル・ディバイド対策関連政策


デジタル・ディバイドとは

デジタル・ディバイド(情報格差)とは、「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差」のことです。  情報機器を使い生活に役立てる能力のことを情報リテラシーといいます。情報リテラシーに乏しい人を情報弱者といいます。
 近年は、情報技術が、どこでも,いつでも,情報機器の存在を意識せずに利用できるほど日常生活に溶け込んでいます。1990年代末頃以降に生まれた人は、デジタルネイティブ世代と呼ばれ、幼少のときからインターネットやデジタル機器がある環境で生まれ育っています。
 このように、情報格差はますます増大しています。情報弱者をなくすことは社会的に重要なことです。

デジタル・ディバイドは次のように区分できます。

デジタル・ディバイド対策政策

国はデジタル・ディバイドの解消に向けて、以前から政策を講じてきました、2001年に施行されたIT基本法に基づいて策定されたe-Japan戦略(2001年~2005年を期間とするIT推進第1次5か年計画)でもデジタル・ディバイド対策が重点になっており、その後も多様な政策が講じられてきました。

地理的格差の解消

e-Japan戦略で最も重視されたのが安価なブロードバンドの普及でした。2006年のu-Japan戦略では、さらに達成目標を高くし、2012年末には総務省は「ブロードバンド・ゼロ地域」が解消したと発表しました。しかし、プロバイダ接続など「利用機会・利用可能性」の差はまだ存在するので、さらに解消推進が求められています。

2011年から地上デジタル放送への完全移行が行われました。しかし、地域により受信できる放送局数に大きな相違があります。その解消のために中継局の開設や衛星放送の活用などが期待されています。

社会的格差の解消

経済的理由による情報機器の保有格差は、市場経済に左右され、政策としての対策はとりにくい性格があります。通信回線に関しては、市場競争を阻害している規制の緩和がすすめられていますし、過疎地の自治体が独自の回線網を整備して提要するケースがありますが、ハードウェアやソフトウェアの低価格化に関する国の関与は低調です。
 学歴差による格差解消では、初等・中等教育での情報教育が講じられています。学校でのパソコン設置数の増加、ネットワーク環境の整備が行われました。情報科目が正規科目になっただけでなく全科目の授業でITを重視することになっています。

身体的格差の解消

通商産業省(現経済産業省)「障害者・高齢者等情報処理機器アクセシビリティ指針
通商産業省(現経済産業省)では,1995年に「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」を告示し,2000年に「障害者・高齢者等情報処理機器アクセシビリティ指針」に改訂しています。同指針の目的は次の通りです。
 「情報化社会の進展に伴い,情報作成,情報伝達,情報収集等のために個人において情報処理機器の活用が一層浸透し,国民一人一人の日常生活において情報処理機器は 必要不可欠な手段となりつつある。このような中で,情報処理機器を障害者・高齢者を含めて誰もが容易に利用できるようにすること(アクセシビリティ)は,極めて重要となっている。
 現在,障害者・高齢者等において,障害による操作上の障壁,加齢に伴う心身機能の低下による操作上の障壁,病気やケガ等に起因する一時的な心身機能の低下(*)による操作上の障壁,暗所,騒音下等の特別な環境(*)における操作上の障壁のような機器操作上の障壁により,情報処理機器の利用に支障をきたすケースがあるが,本指針は,このような課題に対処するため,キーボード及びディスプレイ等の標準的な入出力手段の拡充や専用の代替入出力手段の提供を促進し,もって障害者・高齢者等の機器操作上の障壁を可能な限り低減し,使いやすさを向上させることを目的とするものである。」
 * このようにアクセシビリティは,日常的には障害を持たない人にも重要なことなのです。
IT戦略本部「e-Japan
IT基本法に基づき設置されたIT戦略本部は,2005年までに世界最先端のIT国家となることを目標に,2001年の「e-Japan戦略」を発表し,その後,それの重点政策や見直しを続けてきました。そこでも,「ITは障害者や高齢者の社会参加を促進するツールであることから,年齢・身体的な条件等に起因するITの利用機会や活用能力に格差が生じることがないよう,障害者や高齢者のIT利用の促進に,十分に配慮する。」(e-Japan 重点計画- 2002),「高齢者,障害者を含めて全ての者がITを利活用できるよう,情報活用能力の向上,誰もが使いやすい機器・システムの開発・普及の促進等情報バリアフリー政策を推進する。」(e-Japan戦略II)というように,アクセシビリティを重視した政策がとられています。
総務省「ウェブ・アクセシビリティ実証実験」
総務省は,2001~2002年度に「高齢者,障害者等が利用しやすいホームページの普及に向けた支援システムの実証実験」(ウェブアクセシビリティ実証実験)を実施しました。地域の高齢者・障害者と,ホームページ担当者との交流の場を設けて,地方公共団体,高齢者・障害者団体,民間企業等が,各自のホームページのアクセシビリティを点検・修正することを通して,その後の政策に取り組もうとしたものです。
NICT(情報通信研究機構)
情報バリアフリーのための情報提供サイト」があります。高齢者・障害者の方等に直接役立つ情報や、情報バリアフリー関連の興味深い情報等を掲げています。
内閣府「障害者基本計画
1982年に「国連障害者の十年」の国内行動計画として「障害者対策に関する長期計画」,1992年にその後継計画として「障害者対策に関する新長期計画」が策定され,これは19992年に改正された「障害者基本法」により同法に基づく障害者基本計画と位置付けられました。この障害者基本計画においては,新長期計画における「リハビリテーション」及び「ノーマライゼーション」の理念を継承するとともに,障害者の社会への参加,参画に向けた施策の一層の推進を図るために,2003年から2012年度までの10年間に講ずべき障害者施策の基本的方向について定めたものです。
そのなかで,「情報・コミュニケーション」の分野では,基本方針として「ITの活用により障害者の個々の能力を引き出し,自立・社会参加を支援するとともに,障害によりデジタル・ディバイドが生じないようにするための施策を積極的に推進するほか,障害特性に対応した情報提供の充実を図る」とし,施策の基本的方向として,「情報バリアフリー化の推進」「社会参加を支援する情報通信システムの開発・普及」「情報提供の充実(点字図書,字幕付きビデオなど)」「コミュニケーション支援体制の充実」の分野での施策が掲げられています。
「障害者基本法」
2004年の「障害者基本法の一部を改正する法律」では、情報に関する事項が重視されています。

  • (目的)第一条 この法律は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もつて障害者の福祉を増進することを目的とする。
  • (国民の責務)第六条の2 国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の人権が尊重され、障害者が差別されることなく、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することができる社会の実現に寄与するよう努めなければならない。
  • (情報の利用におけるバリアフリー化)第十九条 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、及びその意思を表示できるようにするため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。
    2 国及び地方公共団体は、行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に当たつては、障害者の利用の便宜が図られるよう特に配慮しなければならない。
    3 電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びに電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の製造等を行う事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該役務の提供又は当該機器の製造等に当たつては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。
Webアクセシビリティ
これに関しては、別章「Webアクセシビリティ」で扱います。