F分布は、二つの母集団AとBの分散比(σa2/σb2)に関する統計分布です。分散はばらつきの尺度ですから、その差ではなく比で比較するのが適切です。
二つの母集団AとBからの標本の個数をna、nb、分散をsa2、sb2とすると、分散比
F=sa2/sb2
は、自由度(na-1、nb-1)のF分布に従う。
(Excel関数:FDIST(値,自由度1,自由度2)、逆関数 FINV(確率,自由度1,自由度2)
F分布の数表、計算プログラム)
- 分散比の検定
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● 例題f・1(上側検定)
ある部品を生産するのに、2つの工程A、Bが考えられる。それぞれの工程による部品の標本を測定したところ、次の値を得た。これより、工程Aは工程Bよりも分散が大きいといえるか。有意水準5%で検定せよ。
工程A na=10 sa2=6.1
工程B nb=16 sb2=2.2
● 解答
標本からの分散比は、
F=sa2/sb2=6.1/2.2=2.773>1
この場合は、上側での検定なので、F0.05との比較になります。
F0.05分布表の、自由度(横)na-1=9、自由度(縦)nb-1=15の値は、2.588です。
F>F0.05
になるので、工程Aは工程Bよりも分散が大きいといえます。
なお、有意水準1%では、F0.01=3.895になり、F<F0.01になるので、工程Aは工程Bよりも分散が大きいとはいえないことになります。
● 例題f・2(下側検定)
ある部品を生産するのに、2つの工程A、Bが考えられる。それぞれの工程による部品の標本を測定したところ、次の値を得た。これより、工程Aは工程Bよりも分散が小さいといえるか。有意水準5%で検定せよ。
工程A na=16 sa2=2.2
工程B nb=10 sb2=6.1
(例題f・1と逆の関係になっています)
● 解答
標本からの分散比は、
F=sa2/sb2=2.2/6.1=0.361<1
となり、下側での検定なので、F0.95との比較になります。
ここで、次の公式があります。
自由度(na-1、nb-1)の下側100α点をF1-α
自由度(nb-1、na-1)の上側100α点をFα
とすると、
F1-α=1/Fα
の関係が成立する。
この場合、自由度(9、15)のF0.05は2.588ですから、自由度(15、9)のF0.95は、
F0.95=1/F0.05=1/2.588=0.386
になります。
F<F0.95
になるので、工程Aは工程Bよりも分散が小さいといえます。
なお、有意水準1%では、
F0.99=1/F0.01=1/3.895=0.257
になり、F>F0.01になるので、工程Aは工程Bよりも分散が小さいとはいえないことになります。