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χ分布と推定・検定

キーワード

χ分布、分散の区間推定、分散の検定

参照:JavaScriptの計算プログラム


χ(カイ2乗)分布は、分散に関する統計分布です。標本の平均と分散から、母集団の分散を推定したり、2つのグループの間で分散に差があるかを検定したりするときに用いられます。分散を重視するのは、品質管理の分野では、ばらつきを少なくすることが重要だからです。

分散σ2の正規分布になっている母集団から取り出したn個の標本の分散をs2とすると、
      (n-1)s2
   χ2=──────
       σ2

は、自由度n-1のχ2分布に従う。

(Excel関数:片側確率 CHIDIST(確率,自由度)、逆関数 CHIINV(確率,自由度)
χ2分布の数表計算プログラム

χ2分布は左右非対称です。それで図のように、上側、下側で異なる値になります。
χ2分布表を見るときには、
  上側5%のときは、α=0.05の欄
  下側5%のときは、α=0.95の欄
  両側5%のときは、α=0025の欄とα=0.975の欄
を用います。

分散の区間推定
● 例題c・1
ある薬品について、10個の標本の成分を分析したところ、次の結果を得た。
  24, 22, 28, 26, 30, 28, 20, 22, 24, 26 [cm]
母分散の95%信頼区間を求めよ。
● 解答
母分散σ2の100(1-α)%信頼区間は、
   下限        上限
   (n-1)s2   (n-1)s2
   ──────    ──────
    χ2α/2     χ21-α/2

で求められます。
標本より、標本数n=10、分散s2=10になります。
95%からα/2=0.025、1-α/2=0.975になります。
χ2分布表から、自由度9(10-1)の0.025と0.975の値は、それぞれ、19.02、2.70になります。
これを、上の式に代入すると、
     9×10            9×10
  下限=─────=4.73   上限=─────=33.3
     19.02            2.70

になります。
すなわち、求める信頼区間は、4.73~33.3になります。
分散の検定
● 例題c・2
ある袋詰めの製品がある。従来の工程では分散が4であった。ばらつきを小さくするために工程を改良した。新工程で10個の標本を測定したところ、分散は3になっていた。このことから、新工程で改良の効果があったか、有意水準95%で検定せよ。
● 解答
分散の検定は、数表から求めたχ2の値と、
     (n-1)s2
   χ20=──────
        σ2

で求めたχ20の値を比較することにより行います。
[上側検定のとき]
0:s2=σ2、 H1:s2>σ2の場合、   χ20>χ2α   ならH0を棄却します。
[下側検定のとき]
0:s2=σ2、 H1:s2<σ2の場合、   χ20<χ21-α   ならH0を棄却します。
[両側検定のとき]
0:s2=σ2、 H1:s2≠σ2の場合、   χ20<χ21-α/2 あるいは   χ20>χ2α/2   ならH0を棄却します。

例題は下側検定です。自由度9ですから、χ20.95=3.325です。
そして、
     (n-1)s2  (10-1)×3
   χ20=──────=────────=6.75
        σ2       4

ですから、χ20(6.75)>χ20.95(3.325)になり、H0は棄却されません。すなわち、改良による効果があったとはいえません。

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