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e-Japanの達成状況

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e-Japan「重点5分野」の評価、IMD


e-Japan「重点5分野」の評価

e-Japanの達成状況に関する国の評価は,「評価専門調査会報告書」2005年12月が発表されています。しかしここでは、私の意見を交えて評価します。

超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策
「e-Japan戦略」で目標とした高速・超高速ネットワークの普及は,ADSLなどのサービスが低価格になり高速化したことにより,2003年時点で目標を超えて達成されました。2000年当時では、日本の通信回線は諸外国と比べて非常に高く、インターネットの活用を妨げていると指摘されていました。それが、ブロードバンドの急速な普及により、世界で最も高速で廉価な環境になったのです (図表)
電子商取引ルールと新たな環境整備
電子署名法,電子契約法,特定商取引法など,電子商取引を促進するための多くの法的措置が行われました。その効果もあり,電子商取引は,BtoB(企業間取引)でもBtoC(対消費者取引)でも,順調な発展をしてきました。
 BtoB(企業間取引)は,規模でもEC化率でも米国を超えています。それに対して、BtoC(対個人取引)では,未だ低い状況ですが、急速に増加しています。
→参照:「EC(電子商取引)の規模」
電子政府の実現
行政内部の電子化の分野では,職員のパソコン配備やLGWANの完成などが進んだことと,行政改革の政策により,それなりの生産性向上が行われてきました。EA(業務・システム最適化計画)の策定により,各省庁をまたがる情報システムの統合化も図られています。でも,2005年時点では、これの進捗状況は端緒についたばかりであり,顕著な効果は得られていない状況でした。
 官民接点のオンライン化では,二つの面での発展があります。
 行政情報のインターネット公開では,ほとんどの地方公共団体がWebサイトを構築して,各種サービスの紹介や議会の報告を掲げています。その質も次第に向上してきました。
 行政への各種申請・入札や税務の分野では,電子署名法,認証制度,e-文書法など手続や文書の電子化のための措置もとられ,多様な情報システムがかなり充実してきました。ところが,肝心の利用率が極めて低く,利用者を無視した情報システムだとの批判もあります。 (批判記事)

●読売新聞(2006年5月3日,10日)
国税電子申告・納税システム(e-Tax)
  2005年度では11万件,利用率0.4%,1件当り4万円
  (06年度目標130万件,韓国:75%,米国:50%)
法務省不動産登記システム
  2005年12月まで120件,利用率0.03%
●日経コンピュータ(2005年11月28日号) 特集 検証 電子政府
   5年の歳月と3兆円超の成果を問う
  電子申請システムの申請1件当りのコスト
   文部科学省申請システム  3400万円
   外務省汎用受付等システム 2100万円
●総務省
住民基本台帳カード(2003年8月に開始)
  2005年8月までの交付枚数:68万枚
    住基人口当たりの普及率:0.5%

なお、この利用率が低い問題は、その後も指摘されています。

人材育成の強化
これに関しては,およそ次の通りです。形は整えたが内容が伴っていないといえます。
  • 初等教育(小中高)での、情報科目の正規科目化は計画通り実現した。
  • 初等教育でのパソコン配置、インターネット接続などのインフラは整備された。しかし、通常の授業でITを用いて授業できる教員は不十分である。
  • 高校教育では、教えるのに容易な「情報A」に偏っており、その内容もパソコン操作程度であり、あまり効果が得られていない。
  • 大学教育では、産業界のニーズとのミスマッチが多く、情報学部卒でも戦力にならない。その解決のために産学官の協力が必要である。
  • IT関連の修士・博士の数は増加しているのだが,十分とはいえない状態である。

e-Japanなどの政策やその後の景気の回復により,日本の国際競争力は次第に上向いてきましたが,それでも未だ「先端」には達していない状況です。
参照:「国際競争力ランキング」