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減価償却

キーワード

減価償却、定額法、定率法、税法、償却特例


減価償却

設備投資をしたとき,その費用を当年だけに計上すると大きな損失になり,その後はその設備による利益がそのまま計上されることになりますが,それでは実際の経営状況を知ることができませんし,税金の面からも不適切です。
 それで,その設備を用いている期間で費用を平滑化することが考えられます。それを減価償却といいます。償却の方法には,
   定額法:毎年同じ金額を償却する
   定率法:毎年同じ率で償却する
があります。

定額法の基本 償却額=(取得価額-残存価額)/耐用年数

残存価額とは,耐用年数後(償却終了後)の残存簿価のことです。

例:取得価額1000[千円]
  耐用年数5[年]
  残存価額=5年後の残存簿価=取得価額の10%=100[千円]
のとき,
  償却額=(1000-100)/5=180[千円]
となるので,毎年の償却と残存簿価は次のようになります。
  年 期首残存簿価  償却額  期末残存簿価
  1  1000   180   820
  2   820   180   640
  3   640   180   460
  4   460   180   280
  5   280   180   100 償却終了
  6   100     0   100 ↓ これ以降は償却しない

定率法の基本 期末の残存簿価=期首の残存簿価(1-償却率)

例:取得価額1000[千円]
  償却率=45%=0.45
  耐用年数5[年]
のとき,毎年の償却と残存簿価は次のようになります。
  年 期首残存簿価           償却額 残存簿価
  1  1000  1000×0.45=450 550
  2   550   550×0.45=248 302
  3   302   302×0.45=136 166
  4   166   166×0.45= 75  91
  5    91    91×0.45= 41  50 償却終了(残存価額=50)
  6    50     0           50 ↓ これ以降は償却しない

ここでは償却率を与件とし,残存価額を計算結果としましたが,理論的には,取得価額,残存価額,耐用年数から償却率を計算するべきです。結果だけを示すと,次の式になります。
  取得価額×(1-償却率)耐用年数=残存価額
   ∴ 償却率=1-(残存価額/取得価額)1/耐用年数
ここで,取得価額=1000[千円],残存価額=50[千円](取得価額の5%),耐用年数=5[年]とすると
  償却率=1-0.051/5=0.45 (=45%)
と計算されます。

除却損=残存簿価(+廃棄費用-売却価額)

耐用年数の途中(償却完了以前)で廃棄する場合があります。残存簿価を0にするのですから帳簿上損失になります。それを除却損といいます。そのときに廃棄に費用がかかるならば,「残存簿価+廃棄費用」になりますし,売却をしたならば,「残存簿価-売却価額」になります。

例えば,上の定額法で3年後に60[千円]で売却したならば,
   除却損=残存簿価-売却価額=460-60=400[千円]
になります。

しかし,見方を変えれば,短期償却による税負担低減策だともいえますので,正当な理由と廃棄の証拠がないと認められません。

税法と減価償却

償却の対象
固定資産のすべてが償却の対象になりますが,少額(原則として10万円未満)の物件は全額を損金算入できます。すなわち,固定資産ではなく経費として取り扱えます。
定額法/定率法の選択
一般的には,どの資産にどの方法を用いるかは企業の自由ですし,変更することもできます。しかし,利益操作になるのを防ぐために,みだりに変更してはならないとしています。
税法で償却方法が定められているものもあります。例えば,無形固定資産には定額法を用いることになっています。
残存簿価
以前の税法では,上述のように残存簿価が定められていたのですが,現在の税法では有形固定資産では1円,無形固定資産では0円になりました。
耐用年数,償却率
耐用年数は,物品ごとに税法で定められています。そして,償却率は耐用年数から計算するのではなく,例えば3年償却の定額法では0,334,定率法では0.667というように,償却率表が定められており,それを用いるのです。そして,計算誤差は償却最終年度で調整します。

税法による定率法

耐用年数で残存簿価を1円にすることは数学上困難です。税法での定率法は上述の「定率法の基本」とは,かなり異なる計算方法を採用しています。

償却率は,定額法の償却率の200%とします。例えば,5年償却の定額法償却率は0.200ですから,定額法償却率は0.400になります。
 取得価額1000[千円],耐用年数5[年],償却率0.400として計算すると次のようになります。

  年 期首残存簿価          償却額 残存簿価
  1  1000  1000×0.4=400 600
  2   600   600×0.4=240 360
  3   360   360×0.4=144 216
  4   216   216×0.4= 86 130
  5   130   130×0.4= 52  78

これでは残存価額が1円になりません。それで税法では保証率改訂償却率という値を導入しています。5年償却の場合は,保証率=0.10800,改訂償却率=0.500 です。
 取得価額1000[千円]ならば,保証額=108[千円]になります。保証額とは,償却額の最小値を保証するというような意味です。
 上の計算表では,3年目までは償却額>保障額なので,計算表通りでよいのですが,4年目以降は償却額<保障額になります。それで,4年目以降では期首の残存簿価(216)を改訂取得価額として,
   償却額=改訂取得価額×改訂取得価額
の均等償却(定額法)で計算します。
  年 期首残存簿価          償却額 残存簿価
  4   216   216×0.5=108 108
  5   108   108×0.5=108   0
     残存価額を1にするための調整 107   1

ソフトウェア資産の取り扱い

ソフトウェアを取得した場合は、無形固定資産に計上するのが原則ですが、次のような場合はその対象になりません。

プレインストールソフト
パソコンにプレインストールされているソフトウェアは,OSなどはハードウェアが作動するのに最低限必要でコンピュータ本体の一部と考えられます。その他のアプリケーションもオフィスソフトのような低額のものは、ハードウェアの値引きサービスと考えて,ハードウェア費用として取り扱うのが通常です。
サービス利用は費用計上
クラウドコンピューティングのように、自社ではソフトウェアを所有せず、利用に応じて発生する支出は、資産ではないので、経費(損金)として費用に計上します。
少額償却資産の特例
通常資産と同様に,取得価額(税抜価額)が10万円未満の場合は全額経費とすることができます。
10万円以上20万円未満(中小企業では期間限定で30万円未満)の場合は一括償却資産の損金算入制度により3年で償却することができます。

ソフトウェアの取得・償却・廃棄等の会計上・税法上の扱いは次のように定められています。

ソフトウェアの区分
ソフトウェアの取得には、自社開発と購入の場合がありますが、会計処理ではそれに関係なく、制作目的で区分されます。
・受注制作:特定のユーザから特定の仕様で個別受注して制作するソフト
・販売目的:不特定多数のユーザに販売するパッケージソフトなど
・自社利用:自社で利用するためのソフト。クラウドサービスなどに利用するソフトも含まれる。
研究目的
これらのすべてに、研究目的のものがあります。ソフトウェアは原則として無形固定資産になりますが、研究目的のソフトウェアは、研究開発費なので費用計上します。しかし、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上します。
ソフトウェアの取得
受注制作の場合、請負工事の会計処理に準じて処理します。一般には工事完成基準が適用され、ユーザに引き渡された時点で発生しますが、一定の基準を満たすときは工事進行基準が適用されます。
パッケージソフトウェアの購入やERPパッケージの利用などの場合,通常はユーザは使用許諾権を得るだけで所有権は得られませんが,資産の取得とみなされ会計上は原則として無形固定資産に計上しなければなりません(短期リース、少額リースは適用外で費用に計上できる)。
ソフトウェア資産の償却
ソフトウェアは無形固定資産ですから,定額法による償却が定められています。
耐用年数は,取得目的により,次の3つに区分されます。
・第三者への販売目的の場合:3年
・自社で利用する目的の場合:5年
・研究開発が目的の場合:3年
ソフトウェア資産の廃棄
ソフトウェア資産の特徴として,廃棄の証明が困難なことがあります。
また,耐用年数期間内で,新ソフトウェアを取得した場合,以前のソフトウェアを廃棄したとみなされることがあります。その場合,ある一定期間は万一のトラブルに備えて以前のソフトウェアを保持している必要があるので,実際に消去しなくても,廃棄したとみなされることもあります。