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情報システム開発の工数把握技法

キーワード

人月法、ブルックスの法則、COCOMO法、ファンクションポイント法


ベーム(Boehm)は、1980年代の中頃に、情報システムの開発費用の大部分がハードウェアからソフトウェアになり、しかも、既存システムの保守改訂に多くの労力が費やされ、新規システム開発が圧迫されていると指摘しました。これをベームの法則といい、ソフトウェア危機の認識が高まりました。

 そのような認識から、情報システム開発の工数(費用)見積りや生産性向上の必要性が高まりました。現在では、IT戦略が経営戦略に密着するので、経営者が情報システム開発費用に多大な関心をもつようになり、「信頼性が高く理解しやすい」工数見積もりの方法がますます求められています。

人月法
システム開発の見積りでは、それに必要な人月(=人数×月数)を見積り、各人の人件費をかければよいといえます。そのような方法を人月法といいます。
人月法には次のような欠陥があり、これからの脱却が重要だと指摘されています(参照:「情報サービス業の課題と対策」)。
  • 人月を見積もることが困難です。単に問題をすりかえただけです。
  • システム開発やプログラム作成は、能力により10倍以上も差がでることがありますが、人件費の差はせいぜい数倍です。能力の低い者を充てるほうが費用が高いという矛盾が起こります。
  • 開発方法論や品質向上などのベンダ努力が反映されません。そのため、そのような努力のインセンティブが行われず、IT業界の能力が向上しません。
LOC法
何らかの方法で、LOC(Line Of Code:プログラムのステップ数)を算出し、標準的なプログラマの生産性から工数を算出して費用を見積ります。人月法と同じ意味で用いられることもあります。
類推法
過去の類似システムでの経験から類推する方法です。カンだともいえますが、作業を適切に分解して(WBS:Work Breakdown Structure)、適切な記録を蓄積することにより、精度の高い見積りを得ることができます。
標準タスク法
類推法と似ていますが、WBSの方法と各要素作業に標準を用いることを重視しています。
ブルックスの法則
ブルックスは、豊富な経験から、システムの規模が大きくなると、それに要する工数は指数的に増大することを指摘しました。
プットナムモデル
開発できる規模を次の式で与えています。   規模=生産性指数×工数1/3×期間4/3
これを逆算して、規模の3乗に比例して工数が増えるとしています。
COCOMO法
工数=A×Sの式により工数を算出します。
 ここで、Sはシステムの規模、Bは定数(>1)、Aは次のような要因につき係数が与えられます。
  製品要因:信頼性要求度、データベースの規模、複雑度、・・・
  計算機要因:CPU制約、メモリ制約、安定性、応答速度、・・・
  人的要因:プログラマ能力、業務成熟度、言語経験、・・・
  プロジェクト要因:プログラミング手法、開発ツール、納期、・・・
    :
 現在では、これを改良したCOCOMOⅡが用いられています。
ファンクションポイント法
開発する情報システムで必要となる入出力画面やファイルなどの個数と複雑度などからファンクションポイントを求め、その値から工数を求める方法です。
 この方法は、画面やファイルの個数など、検討の早期に把握でき経営者など専門外の人にも理解しやすい変数を用いていること、種々の係数が多くの測定により信頼性の高い数値が公表されていること、ハードウェアやプログラミング言語に依存しないことなどの特徴があります。それで、現在は工数見積技法としてファンクションポイント法が高く評価されています。

             複雑さの程度
             低  中  高
  外部入力       3  4  6
  外部出力       4  5  7
  内部論理ファイル   7 10 15
  外部インタフェース  5  7 10
  外部照会       3  4  6

CoBRA法
CoBRA法(Cost estimation, Benchmarking and Risk Assessmen)は、見積り熟練者の経験知識、過去の類似プロジェクトからの類推、統計的方法を組み合わせたコスト見積りおよびリスク検討の技法です。
CoBRA法では、開発費用を次のように定式化します。
   費用=α×規模×(1+∑COi)
      α:変動要因がないときの単位規模あたりの必要工数
      CO(Cost Overhead):変動要因、開発コストを増加させる要因のみを列挙
  • 数人の見積り熟練者が、経験知識からCOを抽出し定義します。
  • 実績データから規模と工数の関係を調べ、αを求めます。これには10件程度の実績データでよいといわれています。これが標準コストになります。
  • それぞれのCOについて、標準コストから何%増加するかにより、レベル0~レベル3のケースを設定します。そして、各COの各レベルの発生確率を、経験知識により、最頻値、最小値、最大値の3点で予測します。
  • この確率データを用いて、統計的手法(モンテカルロ法によるシミュレーションなど)により、全体費用の確率分布を算出します。

これにより、次のことがわかります。

  • 予算との関係:予算内で達成できる確率と超過する確率、悲観的な場合の超過費用などがわかります。
  • 重要要因の把握:費用増加に大きな影響を与えるCOがわかるので、重点対策の検討ができます。さらに、そのレベル発生確率による影響を調べることにより、対策の効果を推定できます。

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