情報システムの効果には、定量的効果、定性的効果、戦略的効果があります。この順に、効果を金額的に評価するのは困難になります。しかも、IT推進が進むにつれて、定性的効果や戦略的効果を目的とする投資の比率が増大しています。
- 定量的効果
- 給与計算や会計計算のような手作業を情報システムにすることを目的とした投資では、その効果を省力化した人件費として把握することができます。
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実際には、定量的効果でも金額的に把握するのが困難なことが多いのです。
- 省力化効果が0.4人だとしたとき、現実に人件費削減になるのだろうか?
- 1人分削減できたとして、解雇するのは困難である。他の業務に回したとき、いくらの利益になるのだろうか?
- 削減利益として給与を用いるのか、関連する什器や人事部門などの費用をどう算定するのか?
- 定性的効果
- グループウェアにより情報共有化が進んだとか、データウェアハウスにより必要な情報が迅速に得られるようになったなどの効果は、効果があることは確かですが、金額的に把握するとなると困難です。
- 戦略的効果
- 他社に先駆けて自社クレジットカードを発行するとか、他社がインターネット取引を開始したので追従するなど、戦略的効果を目的としたIT投資が重視されています。しかし、これらは本質的にハイリスク・ハイリターンであり、金額的な評価よりも経営戦略の観点から評価する必要があります。
定性的効果を金額的に把握するには、次のような手段を行います。
・測定可能な物理量を評価項目として選択する。
・その評価項目が、IT活用により、どれだけ変化するかを予測する。
・その変化量を金額的に評価する。
たとえば、グループウェアの効果では、紙の使用量や会議回数・人数×時間など測定できる物理的評価項目で代行して、それらがどれだけ減少するかをもって定量的効果とします。
しかし、実際には多くの問題点があります。
- グループウェアを紙の消費量と会議の人時で代表させてよいでしょうか?
本来の目的である組織の創造性向上などは、どのように評価するのでしょうか?
- それらの変化をどのように予測するのでしょうか?
- 紙が1枚減少することを何円と評価するのでしょうか?
・紙の購入費用ならば1円程度
・プリントする費用、コピーして配布する費用を加えると数十円
・キャビネットでの保管費用
・紙での検索時間、再利用を考えれば数百円?
というように、どう考えるかで数百倍の違いがあります。