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株式取引、合併・買収

学習のポイント

株式会社は株式発行による資金を資本として運営されるので、株式取引に関する基本的な理解が必要です。さらに、企業では活発な合併・買収が行われていますが、それは株式の保有により実現されます。本章では、それらの概要を学習します。

キーワード

M&A, 事業譲渡, アライアンス, TOB, LBO, MBO, EBO, 普通株, 優先株, 株券電子化, 株価時価総額, PER, インサイダー取引


出資比率と経営支配

会社の最高意思決定機関は株主総会であり、経営に重要な事項は株主総会で決議されます(参照:「会社法と株式会社組織」)。原則として株主総会は、議決権を行使可能な株主の議決権の過半数を定足数とし、出席株主の議決権の過半数により決議します(特別決議-会社解散、定款変更、株式発行など-は2/3以上)。
 そのため、経営の支配力を高めるには、多くの株式を取得する必要があります。総株数(議決権のある株式)に占める出資元の所有株式数を出資比率といいます。出資比率と経営支配の関係は、次のようになります。

関係会社

関係会社とは、「財務諸表提出会社の親会社、子会社及び関連会社並びに財務諸表提出会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等をいう」と定義されています。

親会社・子会社
次の関係があるとき、A社を親会社、B社を子会社といいます。親会社は、実質的に子会社の経営の支配力をもっています。
 ・A社がB社の議決権の50%超を所有している場合
 ・A社がB社の議決権の40%以上を所有している場合であって、一定の要件に該当する場合
 ・A社及び特定の者がB社の議決権の50%超を所有している場合であって、一定の要件に該当する場合
関連会社
B社が子会社ではなく、次の関係があるとき、B社をA社の関連会社といいます。A社はB社への出資だけでなく、人事、技術、取引等の関係を通じて、B社の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができます。
 ・A社がB社の議決権の20%以上を所有している場合
 ・A社がB社の議決権の15%以上を所有している場合であって、一定の要件に該当する場合
 ・A社及び特定の者がB社の議決権の20%以上を所有している場合であって、一定の要件に該当する場合
その他の関係会社
関連会社での議決権に満たないが、その他の関係を通して、重要な影響を与えている場合です。

持株会社

投資目的ではなく、子会社の経営や事業を支配することを目的に株式を保有し、グループ全体の経営戦略や事業計画などに携わる会社のことです。ホールディングカンパニーとかグループ本社などとよばれます。
 他の株式会社を支配する目的で、その会社の株式を保有することもありますが、大きな企業が事業をわけて子会社に分割し、本体が持株会社になることもあります。
 持株会社が、株を保有する以外に事業を行っている場合には「事業持株会社」といい、株を保有するのみで事業を行っていない場合は「純粋持株会社」といいます。

子会社化の理由

ここでは、会社組織の一部を分離して子会社にする理由を列挙します。

会社の合併・買収

企業が新技術や新市場を短期で獲得するには、それを既に持っている企業を買収するのが効果的です。また、買収されることは必ずしも敗北ではありません。高い買収金額を得ることは株主にとって大きな利益になります。従業員にとっても、より広い分野で能力発揮できる機会になります。
 しかし、経営権が他社にわたるのですから、ハッピーな結果にならないことも多くあります。なかには、経営権を得るためでなく、買収・売却の過程で利益を得ることを目的とすることもあります。
 コーポレートガバナンスの一環として、合併や買収は重要な事項なのです。

事業譲渡

M&Aをされる側の用語です。会社がその事業の全部あるいは一部を第三者に譲渡(売却)することです。
撤退戦略の一つで、対象業務の将来性、競争力の低下、財務環境の悪化、資金の獲得など、多様な理由があります。
 ある事業部をそのまま譲渡する場合と分社化して譲渡する場合があります。後者の場合は、当初は分社を買い手と売り手が株を持ち、その後売り手が株を売却するケースが多いようです。

ジョイントベンチャ

複数の企業が共同出資して新会社を設立することです。出資比率により、新会社の経営支配力が決まります。

アライアンス(alliance:提携)

合併・買収やジョイントベンチャを伴わない共同事業です。資本出資を伴う資本提携とそれを伴わない業務提携があります。

資本提携

企業が、他の企業とお互いの株式を持ち合い、協力関係を強化することです。相互の持ち合いで平等の場合もありますが、一方の企業が他方の企業の株式を取得する資本参加もあります。M&Aや企業支配にまで至らない、低い出資比率で資本関係を築くことです。

業務提携

業務提携とは、資本の移動を伴わずに、複数の企業が経営資源を相互活用して協力することを指します。
連携先の類型による区分
 ・同業種提携
 ・水平的提携:製品や地域を拡大するための連携
 ・垂直的提携:原料→生産→物流→販売のような川上・川下業種の連携
 ・業際提携:業務内容は異なるが、市場が密接に関連している企業の連携
 ・業外提携:従来は接点がなかった業種企業の連携
連携内容・形態による区分
 ・共同化:共同受注、共同配送など
 ・フランチャイズ:チェーン店など
 ・共同開発:技術開発組合など
 ・特許提携:特許の相互提供など

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