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CIOの現実

キーワード

CIO、兼任、IT知識


CIOに関する統計調査

CIOは重要な職制ですので、多くの機関がCIOに関する調査をしています。そのうち、毎年定期的に行われている調査を掲げます。いずれもCIOだけでなく、IT関連費用や情報セキュリティ対策などとあわせて調査しています。

経済産業省『情報処理実態調査』
対象企業が広く、回収率が高いのが特徴です。業種別、規模別などで集計したデータをExcelで公表しています。CIOの有無だけは毎年公表されますが、それ以外の公表情報は年により異なります。 (図表)

それで、ここでは公表項目の多い平成18年版(平成17年調査)の結果を掲げます。
日本情報システム・ユーザ協会『企業IT動向調査』
経済産業省委託事業として行われています。CIO存在の有無、兼任の場合のCIO業務に従事する時間の割合、IT関連業務の経験年数などが掲載されています。対象企業は多いのですが。全般的に大企業・先進企業の比率が大きい傾向があります(他の調査でもこの傾向があります)。
 CIOは存在しているが兼務が多いこと(図表)、IT業務の経験がないCIOが多いこと(図表)が指摘されています。

日経情報ストラテジー『IT投資とIT経営推進責任者に関する実態調査』
上場企業および有力企業に限定した調査です。平均的な企業規模は、売上高1,000億円、従業員数1,000人程度です。誌上の特集記事として発表されます(図表)

CIOの現状

上の調査は、質問文が異なるし回答企業の分布も異なるので、結果もやや異なりますが、次のようなことがわかります。

CIOを設置している企業は多い
名称は異なるにせよ、多くの企業がCIOの職制を設置しています。特に大企業では、ほとんどの企業がCIOを設置しています。
兼任が多い
しかし、専任のCIOは比較的少なく、大部分のCIOが兼任です。しかも、兼任者がCIO業務に携わる割合が低く、実動レベルで換算すれば、かなり低くなります。
ITの専門知識・経験が低い
CIOは、経営とITの橋渡しをするのが任務ですから、経営とITの双方に高度な知識・能力を持つことが求められます。ところが、大企業のCIOですら、IT部門経験者は少なく、IT専門分野にあまり自信を持っていないのです。すなわち、プロフェッショナルのCIOは少ないのが現状です。

これを米国と比較すると、米国では全体の2/3近くが専任のCIOを有しているといわれています。また、ITの戦略的活用などの専門的な知識や経験を持っていることがCIOの条件だといわれています。すなわち、米国ではCIOがコンサルタントのような専門職になっているのです。(→その違いが生じた理由の考察)

参照:CIOに求められる知識・スキルとして、
   『2006 Clinger-Cohen Core Competencies Learning Objectives』
   経済産業省『CIO育成のためのコアコンピタンスと学習項目の調査研究報告書』2004年
などがあります。行政を対象としたものだが、民間でも同じだといえます。