ＩＴ技術者に求められる資質

ＩＴ技術者には、どのような資質・能力の人が求められているのか、どのような人が、ＩＴ技術者として成功するのだろうかについて考えます。

他職種と共通な資質・能力

ＩＴ技術者も社員ですから、企業が社員に求める人材像、
　・主体性をもって業務に取り組み、実行できる能力
　・自分で問題を発見し、創造的なアプローチにより、問題解決ができる能力
　・円滑なチームワークができる能力（コミュニケーション、リーダーシップなど）
などが、そのままＩＴ技術者にも求められます。 （図表）

ＩＴ技術者に求められる資質・能力

以下、特にＩＴ技術者に求められる、あるいは、誤解されているかもしれない資質や能力について、列挙します。（図表）

下図は、厚生労働省が、多様な職種に関して企業が重要とする能力を調査したものから、全職種に対するＩＴ職種（情報処理・情報通信関係）のスコアを比率で表したものです。

• すべての項目で、ＩＴ職種が高くなっています。これは、ＩＴ技術者には全面的な能力が必要だということです。
• 「概念化」や「分析的思考」など、ＩＴ特有の項目が高いのは当然でしょう。
• プレゼンテーション、ビジネス感覚、問題解決、計画組織化など、ＩＴに限定されないビジネス関係や対人関係が高くなっています。

下図は、経済産業省による同様な調査です。ここで「若いＩＴ社員」とは２０歳代の社員を指しています。

• 要求している項目、不足している項目の双方とも、ＩＴ職種と他職種と同じような傾向を示しています。
• 他職種と比較して、「課題発見力」「創造力」「状況把握力」「耐ストレス性」が重視されています。この３つは、役立つシステムを構築するのに必要な能力で、耐ストレス性は「この職種はストレスがたまる」からでしょう。
• 多く求められているのに、不足しているのも「課題発見力」～「耐ストレス性」と一致しています。特に「課題発生力」と「状況把握力」では、他職種よりも不足の比率が高くなっています。これは、ＩＴ技術者や他職種の人とくらべて劣っているというよりも、要求する水準が高いので、不足が問題視されることによるのだと思われます。

• システム構築の業務に適した能力
  　システムを構築するということは、具体的な現実の業務を抽象的なシステムにマッピングすることですから、抽象化、概念化の能力、論理的思考が必要です。
  　しかも、経営や業務に役立つシステムにするためには、状況把握、問題発見の能力、分析的思考の能力などが求められます。
• 人間関係が重要
  ＩＴ技術者の大部分は、ユーザ企業のＩＴ部員あるいは受託ソフトウェア業の技術者です。その任務を達成するためには、
  　　・経営者や利用者のニーズを的確に理解すること
  　　・システム開発での機能を適切に説明すること
  など、コミュニケーション、プレゼンテーションなどの能力が求められます。
  　また、システム構築は、多様な関係者がプロジェクトチームを組んで行います。それを円滑に運営するには、協調性、リーダーシップなどが必要です。
  　このように、ＩＴ技術者は他職種にまして人間関係が重要なのです。 （図表） （説明）

ＩＴ技術者は理系・文系？

とかくＩＴ「技術者」というと、理系の職種と思われがちです。実際、約６割が理系出身者です し、大学卒業生では文系のほうが圧倒的に多いことを考慮すると、なおさら理系の多い職種だといえます。 （図表）

「ＩＴ＝コンピュータ＝計算機＝数学」という誤った認識があります。
　純粋の情報技術は自然科学の分野ですので、その面では理系のほうがＩＴ技術者として適しているといえます。研究部門での利用や生産設備の自動制御などでは、高度な数学や自然科学が必要になります。
　しかし、そのような業務は限られています。一般企業のビジネスシステムの開発や運用では、むしろコミュニケーション、チームワーク、リーダーシップなど人間関係が重要なのです。これらは、一般的には文系の分野でしょう。
　そもそも理系・文系といった区別はあまり意味がないのです。論理的思考を身につけた文系、人間関係の資質をもつ理系、すなわち、学際的な人がＩＴ技術者に向いているのです。

なお、ユーザ技術者の場合は、他部門とのローテーションのなかで考慮すべきですから、出身学部を問題にすること自体が無意味になります。