スタートページ主張・講演雑誌投稿一覧月刊LASDEC書評

「月刊LASDEC」2005年9月号掲載

角埜恭生著『ビジネス価値を創造するIT経営の進化』

日科技連出版社、2004年、ISBN4-8171-6306-2,2,100円+税

中小企業へのIT化支援は地方公共団体の責務である。適切な助言や支援をするには、IT化に関する適切な資料を収集して理解しておく必要がある。

経営科学研究所は、定期的に大企業を対象にして経営とITの関係についてアンケート調査を行っており、関係者から高い信頼を得ている。本書は、同研究所代表である著者が、「第2回IT経営度調査報告書(2003年実施)」をベースにして、多様な分析による考察をしたものである。
 本書の特徴は、IT部門の位置づけ、CIOの役割、経営とITの連携、IT構築方法論、IT投資と経営効果、その阻害要因など、企業における経営とITの関係について、広い角度からのアンケート結果を掲載している。これだけでもIT化の現状を把握することができる。さらに著者は、それらのデータを統計的に分析することにより、企業内部でITが価値創造に役立つメカニズムを解明することにより、「IT戦略度」の概念を提唱、それを測定する尺度を示している。
 IT化の現状を理解するのに適した図書である。

ITガバナンス研究会著『社長でもわかるIT』

日本能率協会マネジメントセンター、2004年、ISBN4-8207-1643-3、1,500円+税

書名から想像されるような安易な内容ではない。著者はCISA(公認情報システム監査人)資格を持つISACA(情報システムコントロール協会)のメンバー13人の共著で、経営とITに関するコンサルタントの経験から、中小企業経営者に「ITをどうマネジメントするか」を示したものである。
 専門家の読者にも耐えるような理論構成や内容を、それを意識させない「社長にもわかる」平易な表現で、具体例も示しながら説明している。中小企業経営者に助言するのに適した図書である。
 また、参考文献リストでは関連する基準やガイドラインが豊富に示されている。ぜひ、これらを資料として入手しておきたい。

波形克彦・小林勇治編著『小売業の[IT投資・活用]成功事例集』

経林書房、2003年、ISBN4-7673-0984-0、2,300円+税

ITが経営に役立つとは認識しているが、自社でどのような分野に適用すればよいのかがわからないという中小企業経営者が多い。そのとき、多様な成功例を知っていることが、検討するヒントになる。
 本書は、中小企業診断士やITコーディネータ12名が、実際に経営指導を行い成功した事例を中心にして、なぜそのようなIT化を考えたのか、IT化で考慮した点はなにか、それをどう経営戦略と結びつけたのかを具体的に紹介している。
 なお、本書は「21世紀を勝ち抜くIT戦略シリーズ」として、『卸売業の[IT投資・活用]成功事例集』『サービス業の[IT投資・活用]成功事例集』との3部作になっている。併読をお薦めする。