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「月刊LASDEC」2004年3月号掲載

藤広哲也著
『システム担当者が知っておきたいシステム発注の基礎知識』

すばる舎,2003年,ISBN4-88399-277-2 \2400


情報システムの発注に際して,発注側の要求を受注側(システムハウス)に明確に伝えることが重要である。それが明確でないと,適切な見積りができないので追加仕様による金銭的トラブルや,システムが期待した機能を持たないというトラブルが発生する。
 そのようなトラブルを回避するためには,発注側が構築するシステムの仕様を明確にした文書をシステムハウスに示すべきである。その文書をRFP(提案依頼書)というが,RFPを作成するには,システム化の目的,業務の分析,必要とする機能などを明確にする必要があり,それには,発注側にシステム化に関するある程度の知識・能力が求められる。

本書は,RFPの作成やシステムベンダとの交渉に必要な基礎知識を解説したものである。書名では「システム担当者が知っておきたい」となっているが,システム担当者としてはやや不十分であり,むしろ経営者や利用部門などの人たちを対象とした内容である。そのために,平易に具体的な記述になっており,情報技術に詳しくない人にも理解しやすい。
 具体的なRFP作成やシステムハウスとの交渉は,自庁内の専門家や外部のコンサルタントが行うであろうが,関係者全員が必要最低限の知識を持つことは,適切な検討をするのに不可欠である。また,自庁内でのシステム開発で,利用部門が情報システム部門に開発依頼をするのにも重要である。その観点からも,情報システム部門だけでなく,一般部門の職員にも読んでほしい図書である。

本書は7章からなり,その内容は次の通りである(本書の目次と順序を変えて紹介する)。

第1章「システムを構築する4つの目的」では,開発するべきシステムの特徴と目的を明確にすることが重要であるとし,それを受けて,第4章「システムの概要を作成する」は,基本構想とでもいうべきもので,次の2つの章の前提になる概説を述べている。
 第5章「ハードウェアの構成を決める」では,システムの目的に応じたハードウェアの構成を検討すべきだとして,それぞれの標準的な構成を示している。また,第6章「ソフトウェアの仕様を決める」では,データ中心アプローチを標準としており,データベースが持つべき項目とその入力・更新を重視している。特にホームページの開発についても述べているのが特徴である。
 第2章「システムハウスの選定と交渉の手順」では,システムハウス(受注側)の選定方法,依頼業務の明確化,費用・見積りの求め方,コミュニケーションの重要性やその方法などを解説する。そして第7章「契約・導入・運営で注意すべきポイント」では,システムハウスとの契約,システム導入準備の作業,導入後の保守運営での留意点を詳述している。
 なお,発注者がある程度の情報技術を知る必要があるというのが著者の主張であり,第3章「システムに関わる基礎知識を身に付ける」では,パソコン,LAN,インターネット,データベースの解説をしている。これは第6章,第7章の前提にもなっている。