論文・雑誌投稿一覧月刊LASDEC書評

「月刊LASDEC」2003年11月号掲載

Kim Heldman著,PMI東京(日本)支部監訳
『Project Managemement Professional:PMP教科書』

翔泳社(2003年),\4800+税 ISBN4-7981-0303-9

Paul S. Royer著,峯本展夫訳
『プロジェクト・リスクマネジメント』

生産性出版(2002年),\2000+税 ISBN4-8201-1747-5


最近,プロジェクトマネジメントが注目されている。地方公共団体でも多くのプロジェクトが計画され実行されている。特に地方公共団体職員はプロジェクトの管理責任者になることが多い。プロジェクトを円滑に運営するには,そのマネジメントに必要な知識能力が要求される。
 プロジェクトマネジメントに必要な知識は多様であるが,PMI(Project Management Institute)はその基本知識を体系化してPMBOK?(Project Management Body of Knowledge:プロジェクトマネジメントの基礎知識体系)を策定し,国際標準になっている。これに準拠して,PMP?(Project Management Professional)の資格試験制度があるが,建設業界やIT業界での上級技術者資格として高い関心が持たれている。地方公共団体職員もぜひ挑戦してほしい。

PMBOKは,9つの知識エリア(統合,スコープ,タイム,コスト,品質,組織,コミュニケーション,リスク,調達のマネジメント)について基本事項を示したものであるが,あまりにも無味乾燥である。それだけを読んだのでは,何がポイントで何を理解すればよいかまごつくであろう。
 『Project Management Professional』は,PMPのPMBOKの受験参考書である。最新2000年版に対応しており,各重点項目の説明,演習問題,その解説というような,受験参考書としての一般的な形式であるが,トピックスなども交えて親しみやすい内容になっている。訳書とは思えないこなれた日本語になっているのもよい。試験直前チェックシートもある。添付CD-ROMは,ラーニングソフトのiStudyの限定版で全400問を収録している。受験対策としてだけでなく,PMBOKの理解を確実にするためにも適した図書である。

プロジェクトは将来に向かっての業務であり,本質的に不確実性を伴う。リスクとは,その不確実性から発生する危険である。リスクにどう先手をとって対応するかがプロジェクトマネジメントの要点である。
 『プロジェクト・リスクマネジメント』は,2000年版PMBOKに準拠して特にリスクに焦点をあてている。立ち上げ(機会の分析評価),リスクマネジメント計画,遂行(リスク監査),コントロール(継続的リスクマネジメント),終結(知識の移転),プログラム・リスク監査に関して,担当者,作業工程表,手順,成果物について具体的に示している。この「具体的」なことが本書の特徴であるといってもよい。本書をそのままマニュアルとして用いることもできよう。
 プロジェクトに従事しない人にとっても,「リスク」を理解するのに適した図書である。