論文・雑誌投稿一覧月刊LASDEC書評

「月刊LASDEC」2003年4月号掲載

Michael G. Paciello著,ソシオメディア株式会社監訳
『ウェブ・アクセシビリティ』

アスキー 2002年 ISBN4-7561-4099-8 3,800円

MdN編集部編
『Webデザイン明解ルールブック』

エムディエヌコーポレーション 2002年 ISBN4-8443-5635-6 1,800円


『ウェブ・アクセシビリティ』

行政と住民・企業をつなぐメディアとしてWebページはますます重要なものになると期待されており,多くの地方公共団体がWebページを公開している。
 住民のなかには目や手が不自由の人もいるし老齢者も多い。これらの人にバリアフリーの環境を提供することは,電子自治体の推進で最も留意するべき事項である。また,遅い通信回線を従量制料金で利用している人や解像度の低いモニタを利用している人もいる。使用しているブラウザソフトもまちまちである。これらの多様な環境においても公平に利用できるWebページにすることが求められる。さらに,Webページの利用目的も多様であるが,どのような目的でも容易に目的の情報にたどりつくことが求められる。
 利用者に優しいページにすることをアクセシビリティというが,地方公共団体では住民の権利を保証し,公平・平等を守るためにもアクセシビリティに配慮する責任がある。

著者は,長年バリアフリーやアクセシビリティの普及に貢献しており,Web関係での標準作成機関であるW3Cとホワイトハウスの要請を受けてWAI(Web Accessibility Initiative)を作成した。この分野での最高権威の一人である。

本書はウェブ・アクセシビリティの重要性とWebページ作成での留意点を示しているだけでなく,米国を中心とした法規制や政策,業界標準ガイドラインに関する記述が豊富である。特に公共団体の例が多いのが特徴である。また,WAIガイドラインは本文で解説しているだけでなく,付録として全文が掲載されている。地方公共団体のWeb関係者に,ぜひ一読してほしい図書である。
 参照するべき文献や優れたWebサイトのURLも豊富であるが,残念なことに,すべてが英語圏のサイトである。技術的な記述部分はやや高度なので初心者には十分に理解しにくいのも残念である。

『Webデザイン明解ルールブック』

それに対して本書は,アクセシビリティを改善するには,HTMLで具体的にどのように書けばよいかを実際のHTMLと画面により「過ち」と「正解」を示して説明している。体裁をよくするための工夫にも配慮している。初心者にもわかりやすい。  これからは,一般の地方公共団体職員が自らWebページを作成することも多くなるであろうが,そのときに参考にしたい図書である。

 なお,アクセシビリティに関するWebページも多い。そのうち,次の2つはぜひ閲覧されたい。
 電子情報技術産業協会「欧米諸国におけるアクセシビリティ標準化に関する調査報告書」http://it.jeita.or.jp/perinfo/committee/accessibility/uslaw/index.html
 日経BP社「自治体ホームページはこう作る!」 http://premium.nikkeibp.co.jp/e-gov/sp0909a.shtml