スタートページ主張・講演経営者・利用部門のためのIT入門第4章 個別システムの調達(2)

情報システム開発アプローチの変化


情報システムを設計するとき、何に着目して構想するかを開発アプローチといいます。歴史的にみると、環境変化による情報システムへの影響を少なくし、情報システムの改訂を局所化することにより、改訂を容易にできるアプローチへと変化してきました。

部品化・再利用の発展

プログラム指向アプローチ

新入社員や転入者に業務を説明するとき、担当者について、他の業務から受け取る帳票、参照する資料、作成する文書を示し、その加工方法(仕事の内容)を説明するでしょう。
 情報システムでは、加工方法がプログラムであり、帳票・資料・文書がデータ(ファイル)であると認識すればわかりやすいでしょう。すなわち、プログラムが中心で、プログラム間をデータが動くことにより処理が行われるという認識です。
 昔は、このようなアプローチが当然だと思われていたので、あえて名称をつける必要はありませんでした。ここでは、他のアプローチと区別するために、POA(Program Oriented Approach:プログラム中心アプローチ)とします。

POA

POAは、理解しやすいアプローチですが、業務の手順を中心に設計されるため、データの有効活用や保守・改訂の観点から、多くの欠点があります。

データ中心アプローチ

1980年代になりデータベースが発展すると、対象業務で用いるデータをデータベースとして保管し、それをプログラムで創生・更新・参照するのだという概念に変わってきました。すなわち、データが中心になったのです。それをDOA(Data Oriented Approach:データ指向アプローチ)といいます。

データ中心アプローチ

オブジェクト指向アプローチ

DOAはPOAと比較して多くの利点がありますが、DOAの限界もあります。

このような欠陥を回避するために、OOA(Object Oriented Approach:オブジェクト指向アプローチ)が注目されるようになりました。現在では、JavaやC++などのオブジェクト指向言語が主流になってきました。

SOA

最近はSOA(Service Oriented Architecture)が注目されています。
 情報システムを構築する観点では、OOAのオブジェクトは、プログラムの部分的な部品に過ぎません。それを体系化して発展させれば、「受注」「在庫確認」「出荷」のような業務レベルの部品にすることができます。その部品のことを「サービス」といいます。
 これらのサービスを自社仕様で開発することもできますが、ベンダが標準的なものを提供するようになりました。これはERPパッケージが持っている機能を独立させて部品化したのだということもできます。
 SOAでは、システムを構築することは、これらのサービスを組み合わせることになります。ここまでのレベルで部品化すれば、システム開発・改訂が飛躍的に容易になります。

情報システム構築の変化

このようなアプローチの変化に伴い、情報システム構築の概念が大きく変わってきました。
 以前は、処理の仕方を細かく記述するのがプログラミングでした。情報システムを構築するには膨大な作業がかかり、プログラミングが情報システム構築の大部分を占めていました。短いプログラムで記述する能力があること、プログラミングの生産能力が高いことが、プログラマの評価基準でした。
 ところが、部品化が進むと、プログラミング作業のウエイトが小さくなります。プログラマの評価基準は、 適切な部品を知っており適切に用いる能力、部品を作ることができる能力が重要になります。

部品化をするには、業務の標準化、しかも情報システムに合わせた標準化すら必要になります。
 データ中心アプローチになると、用語・概念の統一が重要にあり、しかも企業全体での統一が必要になってきます。オブジェクト指向アプローチになると、さらに業務の仕方の統一が求められるようになります。SOAで標準的なサービスを活用するには、そのサービスの機能に合わせて業務の仕方を変える、靴に足を合わせることすら求められます。