スタートページ主張・講演経営者・利用部門のためのIT入門第3章 個別システムの調達(1)

用語の統一とコード設定


情報システムの開発において、利用部門が主体になって取り組む必要があるのは、要件の取りまとめのプロセスと、テスト・検収のプロセスですが、それに関しては別項にまわします。プログラミングなど情報システムの実装にかかるプロセスはベンダが行いますが、このプロセスでも利用部門が行わなければならない作業があります。しかも、これら作業は、ベンダ側の作業に先立って行う必要があります。

用語の統一

「自社の常識は他社の非常識」といいます。あまりにも当然なので要件として明記しなかったとか、互いに確認したことが、後になって全く誤解していたことがわかり、それが大きな手戻りになることがよくあります。

誤解の原因で最も大きく深刻なのが用語の違いです。
 同じ名称なのに異なる意味を持つものをホモニム(同名異義語)といい、同じ意味なのに異なる名称を用いることをシノニム(異名同義語)といいます。このホモニムとシノニムがバベルの塔になり、要求での誤解を生んでいるのです。「売上」や「得意先」などは日常的に使われている用語であり、お互いに正しく理解しているつもりで作業を進めてしまうことが多いのです。

ホモニムとシノニム

ホモニム・シノニムをなくすことは、単に発注者とベンダの誤解を減らすだけではありません。次のような観点でも重要なことなのです。

業界・業務常識の誤解

コードとマスターファイルの作成

得意先名や商品名は一般に長く不定長で漢字や英字が混在しています。これでは取り扱いにくいので、情報システムでは数字列のコードを用いるのが一般的です。コードは、次のように用いられます。

例えば得意先マスターファイルは、販売システムでも会計システムでも用います。それぞれのシステムで個別の得意先マスターファイルを用いたのでは、更新が重ねられるうちに整合性を失いますので、可能な限り唯一の得意先マスターファイルにするべきです。そのために、得意先マスターファイルには住所や電話番号など当然な項目以外に、上得意などの得意先区分や信用限度など多様な項目を設定する必要があります。
 マスターファイルはデータベースにするのが通常なので、項目の追加は比較的容易なのですが、それでも大きな変更はシステムに大きな影響を与えます。

コードは業務に密接に関係しているので、利用部門がコード体系を設定しコードづけをする必要があります。しかも、多くの部門が関係しているので、それらの部門が共同して作業するべきです。さらに、新商品などが発生したとき、担当者が勝手にコードをつけると体系が崩れてしまいます。それを防ぐために、全社的なコード管理組織が必要になります。マスターファイルについても同様です。
 ところが、情報システム開発で、なかなかコードやマスターファイルが決まらないし、後になってから変更することが多いのです。それはシステム開発の費用や納期に大きな影響を与えます。