スタートページ主張・講演経営者・利用部門のためのIT入門第1章 ITへの期待の変化

OR(オペレーションズリサーチ)


ORとは経営数学ともいわれ、経営問題に数学や統計学を利用するものです。第2次世界大戦末期に、軍事での作戦研究として始まったのですが、終戦後、その技法が民間に伝わり、広く用いられるようになりました。
 主要な技法として、製品構成の最適化を目的とする線形計画法、日程計画などを扱うPERT、机上実験を行うシミュレーションなどがあります(OR技法に関しては、「OR(オペレーションズ・リサーチ)」を参照してください)。これらの技法の理論は、1940年代から1950年代に開発されましたが、コンピュータの普及に伴い、ソフトウェアツールが提供されるようになりました。
 このような利用は、事務処理とは大きく異なるので、IT部門内に置かれたORグループと企画部門や生産部門が協力して利用するのが一般的でした。また、ORは当時としては巨大な計算であり、自社コンピュータでは処理できず、大規模計算センターを利用するのが一般的でした。

ORはその後あまり話題にならなくなりましたが、例えば、石油産業での生産計画では線形計画法が日常処理業務になっているように、特定の分野ではORと意識せずに利用されています。現在では、ORの計算処理はむしろ小規模だとされており、OR技法の多くは(小規模用ですが)Excelに標準装備されるまでになっています。また、このような分野は、1990年代にはデータマイニングとして復活しています。

ORは、経営数学ではありますが、私は「合理的なものの考え方」の面を重視しています。とかく数学が苦手な経営者や事務部門は、その考え方を知らないために、せっかくのデータを有効利用していない、適切な情報に加工できない、誤った意思決定をしていることがあります。しかも、このような技法があることを知らないので、OR技術者に相談することもありません。数学が苦手な人には、解法を理解するのは困難でしょうが、技法の存在やその考え方の基本程度は理解してほしいと思います。
 また、最近のデータマイニングは操作が容易になりました。素人でも画面を操作するだけで結果がグラフなどで表示できます。ところが生兵法は大けがのもとです。その背景にある統計学などの考え方を知らないと、誤った判断をしてしまうことがあります。
→参照:「事務系社員も統計やORの素養を」