スタートページ> 主張・講演> 経営者・利用部門のためのIT入門> 第1章 ITへの期待の変化
情報処理を行う機器構成は、次のように変化してきました。
欧米企業ではダウンサイジングが劇的に行われたのに対して、日本企業では、その移行は緩やかなものでした。
日本企業ではコスト以外に品質を重視する伝統があります。IT部門はリスクを回避する文化があります。当時のオープン環境は、パソコンもネットワークも未成熟で信頼性が低いものでした。将来動向も不透明でした。正確性を重視する基幹業務系システムをオープン環境に移行するのには躊躇しました。また、当時は、土地・株バブルの崩壊により日本経済は不況でした。ダウンサイジングがコストダウンになるといっても、一時的な費用がかかります。それで、部分的な移行にとどめたのです。西暦2000年問題への対応、ERPパッケージの導入を機会にダウンサイジングが進みましたが、日本では汎用コンピュータがかなり後まで残りました。
ダウンサイジングが遅れたため、コストダウンが不十分だったこともあります。しかし、それよりもベテランがレガシーシステムに縛られ、オープン環境でのシステム開発に従事できなかったことが大きな欠点です。システム開発の方法論を知らない若い人が中心になったため、勝手な信頼性の低いシステムが乱立しました。ベテランが参加しようとした時点では、オープン環境での技術面で大きな差が生じていたので、受入れない状況になっていたのです。これが、オープン環境でのその後の発展の阻害要因になりました。
しかし利点もあります。ダウンサイジングによりハードウェアやソフトウェアのコストは下がりますが、管理費用などの「見えない費用」が高くつき、全体としてはあまりコストダウンが実現できなかったのです。また、その後、ネットワークの高速化・低廉化により、サーバを中央にまとめる動きが出てきました。それらの状況が一段落してから移行するほうが安全だといえます。
●集中化と分散化
費用の面、運用管理の面から、集中すべきか分散すべきかについて繰返し議論されてきました。