スタートページ主張・講演経営者・利用部門のためのIT入門第1章 ITへの期待の変化

BPR


1990年代になると、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の概念が広まりました。企業を成長させるには、顧客満足の観点からビジネスプロセス(業務の仕方)を抜本的に再設計(リエンジニアリング)する必要があるという概念です。

初期のBPR事例として、IBMクレジット社の例があります。クレジットの注文から契約にいたるまでに平均6日間かかっていました。同社では、申請書の作成、審査、利率決定、契約書作成などのプロセスが専門部門に細分されており、それらの部門を経由するために時間がかかっていたのです。それらの手続きを審査や利率決定などのノウハウを整理してシステムに組み込みました。ほとんどの案件は一人の担当者がコンピュータを用いて処理できるようになり、平均4時間に短縮できたのです。6日が4時間になったのですから、劇的な改革だといえます。このように、ITを活用することにより、分業が生産性向上の常識だとされてきたことが、大きく変わったのです。

IBMクレジット社のBPR

BPRは、経営管理の概念ですが、その実現にはITの活用が不可欠です。経営戦略は業務活動により実現されます。業務のほとんどは情報システムで管理されています。すなわち、情報システムは仕事の仕方を規制しており、経営戦略の実現を左右しているのです。そのため、業務革新を行うには、それに合致した情報システムを構築する必要があります。
 この頃に、ERPパッケージの活用が注目されるようになりました。このERP(Enterprise Resource Planning)とはBPRの同義語だといえます。
 これまでの情報システムは、給与計算の年末調整や財務会計処理など、多数の企業で共通に利用される個別システムは、市販パッケージを利用することもありましたが、全体的には自社仕様で個別開発するのが通常でした。それに対してERPパッケージは、企業全体の情報システムを統合したものです。しかも、ERPパッケージはBPRの分野で優れた企業のノウハウが組み込まれているといわれ、BPR実現の手段としてERPパッケージが期待されたのです。

初期のBPRは企業内が対象でしたが、1990年代後半になると、企業間にまたがるBPRへと発展してきました。それがSCM(サプライチェーン・マネジメント)です。
 このような動きにより、SISで提起されたIT部門の戦略部門化、CIOの任務がますます重要になってきました。