経営戦略に関心をもつ人は、かならず次の3つの図表を見たことがあるはずである。図1と図2は『競争の戦略』、図3は『競争優位の戦略』で発表された。このように、この2冊は経営戦略分野での古典なのである。
1969年にプリンストン大学工学部卒業、ハーバード大学大学院で経営学のPh.Dを受け、1982に34歳で正教授になったエリート。これらの著作をしていた時代は、ハーバート・ビジネススクールの教授。
従来の統計による研究方法やビジネススクールの特徴であるケーススタディに基本原理という理論的観点を統合した方法論を確立した先駆者であるといわれている。
本書は「企業がその属する業界を全体として分析し、業界の今後の変化を予測しし、競争相手の特性と自社の競争上の地位を理解し、この分析を特定企業の競争戦略に練り上げるための分析技法を、広い視野から説明」したものである。
●5つの競争要因
業界に影響を与える5つの競争要因につき、攻撃をしかけたり攻撃を受けたときに反撃するための多様な方法を理論づけている。●3つの基本要因
5つの競争要因に対処する場合、他社に勝つためには、3つの基本戦略がある。自社の状況を認識して、これらのいずれかに注力すべきたと主張する。そして、この基本戦略を追求するときのリスクも示している。
前書が主に業界を対象にしていたのに対して、本書では個別企業での競争優位について述べている。競争優位の方法を発見するための概念として、「価値連鎖」という概念を示した。ここで価値とは、企業が顧客のために創生する価値のことであり、その向上のためには企業活動の分析が重要なのだとと指摘すている。
原著:"On Competition",1998、ポーターの論文集