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野中 郁次郎『知識創造の経営』
日本経済新聞社、1990年、ISBN4-532-07514-9、2,650円
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著者は、日本企業は、トップ・ミドル・ロアーが一体となってダイナミックな相互作用により知を創造するという、組織的知識創造の一つのパターンをもっていることを示した。そして、それを理論家して、世界で通用するマネジメント技法として体系化した。
 現在、ナレッジマネジメントが重視され普及しているが、本書がそのきっかけをつくったものであり、日本発の経営技法であることを知ってほしい。

本書は5つの章からなる。第1章では、これまでの経営論や組織論から、知識とは何かを検討する。そして、第2章で組織的知識創造理論を展開(後述)し、第3章で、それを実現するためのマネジメントを論じる。第4章は、これらの理論の基礎となる事例研究で花王や日産の経営を紹介し、第5章で今後の研究課題を示している。

最も重要なのは第2章である。ここで著者は、その後SECIモデル(下図)として有名になる、暗黙知と形式知の相互作用とその変換過程のモデルを示している。また、第3章では、日本の経営は、巷にいわれるボトムアップではなく、ミドルにを主体としたアップダウンが成果をあげているのであり、ミドル・アップダウン・マネジメントを提唱している。