原著:Michael Hummer & James Champy "Reengineering The Corporation - A Manifesto for Business Revolution", 1993
1993年にBPRブームが起こった。その火つけをしたのが本書である。著者の一人であるハマーがBPRの生みの親だといわれている。1980年代、低迷していた米国産業界は、1990年代になると急速に回復した。その原因の一つが、BPRによる経営革新だとされ、土地バブルの崩壊、平成不況にあえいでいた日本産業界は、このBPRに大きな期待をもったのである。
リエンジニアリングは、正式にはビジネスプロセス・リエンジニアリング−BPR−という。ビ
ジネスプロセスとは業務の仕方、リエンジニアリングとは再設計のことであるから、業務改革と訳すこともできよう。
本書では「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」と定義している。
本書では否定しているが、BPRには日本のカイゼンがヒントになったといわれている。1980年代までは、日本経済は世界のトップリーダーであり、欧米の企業はこぞって日本企業の経営方法を研究した。その特徴である小集団活動は「カイゼン」という世界共通語になった。カイゼンがボトムアップでの現状改善が中心であったのに対して、BPRはトップダウンによる改革を重視している。
BPRは経営技法であり、IT技術ではないが、BPRを実現するために不可欠なインフラである。従来は、専門家集団による分業が業務効率化の基本であるとされてきた。ところが、過度な分業は、作業者の人数が増大し、書類の持ち回りにより時間がかかる。ITを活用することにより、一人で広い分野の作業を迅速に行うことができる。本書では、IBMクレジット社の貸付審査やフォード社の調達業務など豊富な実例により、BPRの重要性を示している。
BPRの影響は大きい。情報システムの調達ではERPパッケージが普及しているが、ERPパッケージの目的はBPRの実現にあるとされている。また、現在広く行われるようになったSCM(サプライチェーン・マネジメント)は、BPRを社内から企業間へ発展させた概念だということもできる。
BPRを理解することが、経営と情報の関係を理解することだといっても言い過ぎではない。そのためにも、ぜひ読んでおきたい図書である。