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ソフトウェア開発の見積りに役立つ書籍

(財)地方自治情報センター『LASDEC』2006年11月号掲載

情報処理推進機構ソフトウェア・エンジニアリング・センター編
『ITユーザとベンダのための定量的見積りガイドブック』
オーム社、2006年、ISBN4-274-50068-3、1524円+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

○見積り能力を高めるために
 総務省は「市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」を行い、地方公共団体別・システム別に、導入、保守・運用費用を比較検証できるデータベースを公開した。システム開発での説明責任を果たすためにも、さらに適切な見積りが求められるようになろう。
 昨年10月号でもソフトウェア開発の見積りに関する書籍の特集をした。そのときに、『ITユーザとベンダのための定量的見積りの勧め』(前書という)を、庁内勉強会テキストとして好適だと紹介した。本書は、前書での基本的知識をベースにして、実際的な見積り方法を示したものである。
 内容は3部からなる。第1部は総論で、典型的な手法の説明と実際の取組み方法を示している。前書と同様に、単なる手法紹介ではなく、マネジメントの観点から、PDCAサイクルを通して成熟度向上を図ること、組織体制を整えることが重要だとの観点から解説をしている。
 第2部は、見積り手法の事例集であり、著名なコンサルタント企業やベンダ企業9社が活用している手法を解説している。自社の宣伝臭はなく、総論で示した手法をどのように応用するのかを説明している、第3部は、同センターが行った実証実験の結果で、見積り値と実績値の分析をしている。

 

L.H.Lawrence、W.Myers著、山浦恒央訳
『初めて学ぶソフトウェアメトリクス』
日経BP社、2005年、ISBN4-8222-8242-2、2800円+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

○本格的な理解のために
 ソフトウェアメトリクスとは、ソフトウェア開発プロジェクトにおける計画と実績を定量的に測定しマネジメントするための方法論である。工数見積りや費用見積りは、ソフトウェアメトリクスの一要素であるといえる。
 原著名は "Five Core Metrics" であり、時間、工数、機能量、信頼性、プロセス生産性を中核メトリクスであるとして、それらの多様な測定方法と膨大な実証データでの分析を示している。訳書名とは異なり、かなり高度な内容であるが、難解な個所を読み飛ばしても役に立つ含蓄のある名著である。

山村吉信著『SEのための見積りの基本』
翔泳社、2004年、ISBN4-7981-0720-4、2000円+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

○実際での活用のために
 『初めて学ぶ〜』が専門家向けであるのに対して、本書は上の『〜ガイドブック』よりも平易な表現になっている。対象をSE−開発者側としているが、発注者側でシステム開発に関係する一般の人でも必要な事項を特別な前提知識なしに読める。
要求分析から運用保守に至るシステム開発の各フェーズにおいて、ソフトウェアメトリクスの考えかたを平易に取り入れた具体的な図表を示すことによって説明し、さらに、どのような事項に留意するべきかを述べている。実務の作業現場で直接に役立つ図書である。