(財)地方自治情報センター『LASDEC』2006年10月号掲載
○Web2.0の大きな流れを理解する
ブログ、RSS、ロングテール、Ajax、セマンティックWeb、LAMP、Google Map・・・読者はこれらの用語をどれだけご存じだろうか? Web2.0は特定の技術を指すものではなく、必ずしも新しい技術を指すものではない。しかし、Web2.0といわれるように、Web環境は静かに急速に新しい世代へと進化している。しかも、この進化は社会やビジネスに大きなインパクトを与えるといわれている。
著者はシリコンバレーでの経営者であり、有名なブログサイト「はてな」の主要メンバーである。長年雑誌やインターネットにシリコンバレーの動向を伝えてきた。本書はそれらを素材にして書き下ろしたものである。
著者は、ITやインターネットの環境を、利用者のパソコンである「こちら側」と、グーグル、ヤフー、アマゾンなどネットを進化させている「あちら側」に区分し、次第に環境が「こちら側」から「あちら側」にシフトしていると指摘する。そして、その本質が大衆による情報共有・情報発信であり、それがビジネスだけでなく、社会全体に大きな影響を与えるようになると説く。
本書では特に地方公共団体への言及はないが、この動きには、住民と一体化した地方公共団体のWeb戦略に多様なヒントがあると思われる。
○グーグルを知るとWeb2.0がわかる
グーグルを検索エンジンポータルとして利用しているだろう。グーグルの真価は、それだけではない。グーグルは、Web2.0を牽引している代表的な企業であり、常にWebによる新ビジネスモデルを追求してきた。
本書は、グーグルの創業から将来計画までを多くのトピックスを交えて紹介しており、グーグルの戦略、すなわちWeb2.0の動向を理解するのに適した図書である。なお、本書とともに、佐々木俊尚著『グーグル−既存のビジネスを破壊する』文春新書、2006年も推薦したい図書である。
○Web2.0の周辺技術を理解する
上掲2冊は、Web2.0をビジネスの観点から示したものであるが、本書はWeb2.0を構成する技術を解説したものである。しかし、技術書というよりも、利用動向の解説書であり、Web2.0での用語や概念を多様な視点で解説したものである。
インターネットの利用者やインターネットビジネスに携わる人、多くの話題に興味を持つ人ならば理解できるし、そのような人を対象にしたと思われる。トピックスを平易に説明するとともに、膨大な注をつけることによって、読み物と辞書としての両面を果たしている。