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ユビキタスネット社会を読み解くために

(財)地方自治情報センター『LASDEC』2006年7月号掲載

総務省, ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会共編
『よくわかるu‐Japan政策―2010年ユビキタスネット社会実現のための工程表』
ぎょうせい,2005年,ISBN4-324-07634-0,2,000+税
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○まず国の政策を
 総務省は,平成16年12月に「ユビキタスネット社会の実現に向けた政策懇談会」の最終報告書を受けて,「u-Japan政策」を策定・発表した(http://www.soumu.go.jp/menu_02/ict/u-japan/index.html)。「2005年までに世界最先端のIT国家となる」というe-Japan戦略に続き,「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」という将来のユビキタスネット社会に向けて,2010年に実現する新たなユビキタスネット社会の姿(u-Japan)と必要な政策(u-Japan政策)を策定し,日本が世界のフロントランナーであり続けるための具体的な工程表を示すものである。
 本書は,このu-Japan政策の3つの柱「ユビキタスネットワーク整備」「ICT利活用高度化」「安心・安全な利用環境整備」について,2010年までの「u-Japan政策パッケージ」を示した解説書である。内容は「1 u-Japan政策の背景」「2 2010年のu-Japan」「3 u-Japan政策パッケージ」「4 u-Japan政策実施のあり方」であり,e-Japanの評価からu-Japanの工程表までの13章からなっている。
 なお,平成18年1月に「IT新改革戦略」が策定された。u-Japanはその一環として位置づけられる。地方公共団体職員の必読書である。

野村総合研究所技術調査室
『2010年のITロードマップ』
経済新報社,2005年,ISBN4-492-58077-8,2,200+税
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○技術・市場の動向は?
 上書が行政からの社会的なシナリオであるのに対して,本書は民間シンクタンクが情報技術動向とIT市場動向について分析したものである。いうなれば上書がニーズであり,本書はそれを実現するための基盤である技術面のトレンドを示したものだともいえる。
 ユビキタスに関係が深いモバイル端末,RFID(ICタグ),SOA(サービス指向アーキテクチャ)など16の要素技術を取り上げ、事例,普及時期、2010年の利用イメージ,実用に向けた課題を示している。両書をあわせ読むことをお薦めする。

情報通信総合研究所
『情報通信アウトルック2006 IT大融合の時代』
NTT出版,2005年,ISBN4-7571-0171-6,2,400+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

○特にネットワークの方向は?
 情報通信総合研究所は,NTT系列の情報通信専門シンクタンクである。情報通信アウトルックは,情報通信産業の直近動向を調査研究したもので,1998年より毎年刊行されている。今年は副題のように,固定通信と移動体通信の融合,通信と放送の融合など「融合」が重視されている。「第6章 電子政府・電子自治体」では,「e-Japan戦略からu-Japan政策へ」「市町村合併と地域情報化」「ブロードバンドサービスの格差解消へ」「公共分野におけるセキュリティ問題」があり,地方公共団体としても関心の高いテーマが取り上げられている。