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戦略的マップでバランス・スコアカードの戦略的活用を

(財)地方自治情報センター『LASDEC』2006年6月号掲載

ロバート・S・キャプラン、デビッド・P・ノートン著
櫻井通晴、伊藤和憲、長谷川恵一訳
『戦略マップ バランスト・スコアカードの新・戦略実行フレームワーク』
ランダムハウス講談社、2005年、ISBN4-270-00074-0、\3,800+税
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○本質を知るために創始者の原本を
 バランス・スコアカード(BSC)については、このコーナーでも既に2回紹介している。BSCは、両著者が1992年に論文「業績をドライブする指標『バランス・スコアカード』」(「ハーバード・ビジネス・レビュー」1992年1.2月号)で提唱した。本書は、両著者による1996年『バランス・スコアカード』、2001年『戦略バランスト・スコアカード』(両書とも訳本あり)に続く第3弾で、原書『Strategy Maps』は2004年に発表され、その有用性が注目されていた。
 戦略マップとは、BSCを戦略実行のためのフレームワークである。BSCの4つの視点を「戦略目標」と「無形の資産」との因果関係に着目し、「無形の資産」を戦略に方向づけるロードマップを可視化する技法である。
 本書の構成は、大きく3つに区分できる。第1に、戦略マップのテンプレートを示して、4つの視点がどのように関係するかを示す。第2は、そのテンプレートを構築するための方法・留意点、第3は、戦略マップにより、「無形の資産」を戦略に方向づけ、企業価値を生み出すロードマップへの展開を示している。
 本書を理解するには、BSCを十分に理解している必要があるが、多くの類似図書の原本であり、ぜひ常備してほしい図書である。

日経BPムック
『バランス・スコアカード徹底活用―実践Q&A、図解演習、事例で学ぶ』
日経BP社、2005年、ISBN4-8222-1664-0、\2,400+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

○具体的な理解のために
 BSCや戦略マップを実践するために理解するべき事項を多角的にまとめている。「策定編」では、SWOT分析からBSC、戦略マップ、事後評価までのプロセスを図解演習方式で理解させ、「Q&A編」では、導入・実践で発生する51ケースに、導入経験者が答えている。「事例編」では10の成功例があるが、そのなかに、東京都千代田区、三重県病院事業庁(三重県立病院)などの公的組織の例もある。「資料編」では、キーワード解説、主なITツール、研究会・セミナーを収めている。

伊藤 一彦, 上宮 克己著
『小さな会社にも活用できるバランス・スコアカードの創り方』
同友館、2005年、ISBN4-496-04040-9、\2,200+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

○中小企業支援のために
 BSCは、中小企業にも役立つことが多くの事例で検証されている。地方公共団体としても、中小企業の経営成熟度向上のために、BSCの普及支援を検討していただきたい。本書は、そのときの参考書として適切な図書である。BSCをベースとした経営戦略の策定と実施について、本質を崩さずわかりやすく記述していろ、活用事例も豊富である。著者らの作成したBSC支援ソフト「戦略創造」の紹介CD-ROMが添付されているが、コマーシャルに流されず、経営戦略とBSCの解説をしている。