スタートページ主張一覧書評

ネットワークの仕組みを理解しよう

(財)地方自治情報センター『LASDEC』2005年12月号掲載

山村久美子著
『世界一やさしいネットワークの本〜糸電話で3人以上が同時会話する方法〜』
翔泳社、2004年、ISBN4-7981-0710-7、1480円+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

○これならわかる!
 電子自治体の5年計画は一段落したが、むしろこれからが多様なネットワークの構築や運営が行われるであろう。LANの敷設やサーバの設定などの実業務はベンダーに依頼することになるが、それを適切に行うには発注者である職員がある程度の技術知識を持っている必要がある。
 ところが、ネットワークに関する技術分野の習得は、IT部門の職員ならともかく、一般の職員にとってはかなり難しい。それが庁内での計画立案や運用での対話に支障をきたしている。本書は、題名や写真からわかるように、子供のための絵本の形式であり、ともかくわかりやすい。糸電話を多数で利用することを例にして、ネットワークにはどのような決まりが必要なのかを絵本にしたものである。これならば、ネットワーク技術と聞いただけで尻込みする職員にも十分に理解できよう。
 しかも、単にやさしいだけでない。技術用語をほとんど使わないのに、ネットワーク技術の本質をかなり厳密に記述している。専門職員が一般職員にネットワークを説明するときのヒントにもなる。

竹下隆史・村山公保・荒井 透・苅田幸雄共著
『マスタリングTCP/IP入門編 第3版』
オーム社、2002年、ISBN4-274-06453-0、2200円+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

○ネットワーク技術の定番書
 TCP/IPとは、インターネットにおける通信のプロトコル(規約、取り決め)であり、これを理解することが、ネットワークを理解する基本になる。本書により、LANやインターネットが接続する仕組み、Webサーバやメールサーバの仕組みについて、専門職員として十分な知識を得ることができる。
 本書は「入門編」とはいっても、かなり程度が高い。1994年の第1版から大学での教科書として広く採用されている定番書である。それだけに記述は厳密であり、内容も体系化している。説明もわかりやすい。IT専門職員の知識習得にも適している。
 価格に対して内容の豊富であり、IT部門に備えておきたい図書である。

NTTコミュニケーションズ
『インターネット検定ダブルスター公式テキスト』
NTTコミュニケーションズ、2005年(毎年改訂)、ISBN4-7571-0155-4、4500円+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

○実践的な知識を得るために
 インターネット検定とは、NTTコミュニケーションズが行っている試験で、ダブルスターは、インターネットで情報発信ができ他の利用者を指導できるレベル、すなわち、『マスタリング〜』での技術知識に加えて、実際にネットワークを構築する知識を対象にしている。
 本書は、その公式テキストではあるが、試験のためのノウハウ本ではないし、特定の環境に限定したものでもない。前書が扱っている理論に加えて、BINDやsendmailなど代表的な管理ソフトやツールの利用を組み合わせており、より実践的な知識を習得できる。この分野を過不足なく網羅した適切な図書であり、前書の実務版として推薦する。