(財)地方自治情報センター『LASDEC』2005年10月号掲載
○庁内勉強会テキストとして好適
ソフトウェア開発の費用を適切に見積る知識は、単にベンダからの見積書を検討するためだけでなく、情報化計画での費用対効果把握や要件決定のためにも重要である。ところが、地方公共団体では、このような知識を持つ職員がおらずベンダのいいなりになるとか、特定の担当者に限られているために関係者全員への理解が得られにくいのが現状である。
本センター(IPA/SEC)は、ソフトウェアの開発力強化を推進するための産官学協同の研究機関であり、経済産業省の「エンタプライズ系ソフトウェア開発力強化推進委員会」と連携している。
本書は、その活動の一環として、ソフトウェア見積りに関する知識普及のために発行した、A5版50ページ程度の小冊子である。小冊子のために、具体的な見積り手法の解説はないが、見積りの重要性について認識を高め、見積り精度向上のための考えかたや取組みについて重要となるポイントを、素人にもわかりやすく解説している。
これをテキストとして、庁内での勉強会を開催するとよかろう。
○備えておきたい名著
著者は、名著『ソフトウェア病理学』『ソフトウェア開発の定量化手法』など、ソフトウェア開発の費用や品質に関する世界的権威である。
本書は、その集大成とでもいうべきものであり、LOC(プログラムステップ数)法とFP(ファンクションポイント)法を中心に、コスト見積りツールとソフトウェアプロジェクト管理ツールの紹介と利用での留意事項について定量的な実績データにより説明している。要求定義、プログラミング、テスト、プロジェクト管理など工程別での見積もりの解説もしている。
かなり高度な内容であるが、IT部門にはぜひ備えておきたい重要図書である。
○実際の開発データの統計的理解
経済産業省「エンタプライズ系ソフトウェア開発力強化推進委員会 定量データ分析部会」は、プロジェクト実績データを収集し、IPA/SECに集約している。本書は、15社のITベンダから1,009プロジェクトのデータを収集分析したものである。プログラムステップ数やファンクションポイント数と開発工数の関係、プロジェクトの特性、開発環境などの影響などを統計的に示している。
開発の見積りをする前提として、他社でも参考にできる比較基準があれば便利であり、本書はその方向性を示している。『〜定量的見積りの勧め』でのさらなる理解、『ソフトウェア見積り〜』での日本の現状を数値的に把握するのに適切である。