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(財)地方自治情報センター『LASDEC』2005年7月号掲載

みずほ情報総研編『エンタープライズ・アーキテクチャ』
中央経済社,2004年,ISBN4-502-59150-5,2600円+税

EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)は,政府では「業務・システム最適化計画」として,2003年12月にその策定ガイドラインが公表され,府省での電子政府構築の取組みに活用されており,将来的には地方公共団体にも適用する計画である。EAは,情報システム部門だけでなく全庁あげて取り組むので,全職員が理解しておく必要がある。
 本書は,まず情報システムが多くの問題を抱えており,全体最適の観点から抜本的に見直す必要があると指摘して,EAの必要性を解説する。そして,国内・海外の先進企業,各国政府の事例を紹介することにより,EAの考え方を理解させる。あえて地方公共団体の取組みに1つの章を立てているのは参考になろう。後半では,EA実践のための技法,EA推進を支える技術,EA取組みの体制と留意点などを解説している。
 ここで取り上げている事例は,「EA的」なものであり,技法や技術も必ずしも「業務・システム最適化計画」に合致していないが,それだけに,何をどのように考えらよいかを理解するのに適している。

加藤正和著『かんたん! エンタープライズ・アーキテクチャ』
翔泳社,2004年,ISBN4-7958-1,1890円+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

本書は「ビジネス図解シリーズ」の一つであり,1テーマ見開き1枚で,右ページに解説,左ページに図表や関連トピックを掲げる形式になっている。それからも推察されるように,わかりやすいことを重視した内容になっている。
 情報技術には深入りせずに,仕事のしかたを整理してEAの体系化へむすびつけることを重視している。プロローグとエピローグはドラマ仕立てになっており,現状のシステムの混乱を,EAの考えかたを適用することにより,健全なシステムに再構築できたという話にもなっている。
 とりあえず,EAとはどのようなものかを簡単に知りたい人に適した入門書である。

IBMビジネスコンサルティングIT戦略グループ著
『エンタープライズ・アーキテクチャ』
日経BP社,2003年,ISBN4-8222-1875-2,2800円+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

本書は,EA的な概念の歴史的発展,多数のEAフレームワーク(概念・技法)の紹介とそれらの比較特徴,EA実践での具体的アプローチなどを取り上げている。特に,各フレームワークの比較検討は詳細で,「業務・システム最適化計画」だけがEAではないことが理解できる。
 事例も専門的な視点からの考察である。情報化における諸概念やIT関連用語も既知のこととして説明なしに用いている。それで,読者はCIOや情報システム部門など,ある程度の情報技術知識を持つ人対象にしていると思われる。一般職員には適さないが,そのような人にとっては,読み応えのあるしっかりした内容になっている。