(財)地方自治情報センター『LASDEC』2005年6月号掲載
電子自治体の実現において,Webページは住民との情報共有に適切な手段であり,すでにほとんどの地方公共団体がWebサイトを開設している。高齢者や身障者も含むすべての人がWebページをアクセスしやすくすることを,Webアクセシビリティというが,特に地方公共団体のWebサイトでのWebアクセサビリティは住民への義務である。
平成16年6月に,WebアクセシビリティがJIS化(JIS X 8341-3)された。地方公共団体でのWebページ制作では,この規格が実質的な基準となるであろう。
本書は3部構成で,全体の半分を占める第2章がこの規格の逐条解説になっている。単に条文の解説ではなく,それを実現するための方法を具体的なWebページの比較などにより説明している。第1章は,JIS規格化の背景として,Webアクセサビリティの重要性やJIS規格化までの動向の解説,第3章は,「Webコンテンツ・マネジメント」とでもいうべきもので,Webアクセシビリティは全庁的な継続的改善活動としてマネジメントすることが重要だとしている。
付録の「アクセシビリティ関連情報サイト・資料・書籍一覧」がすばらしい。200近いURLが簡単な説明つきで紹介されている。
本書は,上書を受けて,具体的にアクセシブルなWebページを作成するにはどうするかを示している。例えば第3章では,考慮すべきポイントを77項目あげ,それを3レベルにわけて実例で示している。このリスト(目次)は,それ自体がアクセサビリティのチェックリストとして使える。しかも,実例に地方公共団体のWebページが多く,部分的にはその地方公共団体のガイドラインが示されているのも,われわれにとって参考にしやすい。また,第4章でWebページのアクセサビリティを確認する方法やフリーソフトの紹介があるのも実践的である。
ユニバーサルデザインとは,高齢者や身障者も含む万人に使いやすいように設計することであり,Webアクセサビリティも含まれる。本書は,広い意味での「情報」におけるアクセサビリティの重要性を,多角的に検討したものである。身障者が街で行動する実験などを通して,設備・機器のデザインに問題があるだけでなく,それらの所在や操作方法の「情報」伝達に問題が多いと指摘している。このような観点からアクセサビリティ体系を考え,その中にWebアクセサビリティを位置づけるべきであろう。海外諸国での施策や多くの研究の紹介もある。