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(財)地方自治情報センター『LASDEC』2003年12月号掲載

G.M.ワインバーク著,木村 泉訳『コンサルタントの秘密』
共立出版,1990年、ISBN4-320-02537-7 \2800
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G.M.ワインバーク著,伊豆原 弓訳『コンサルタントの道具箱』
日経BP社,2003年、ISBN4-8222-8172-8 \2200
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ジェラルド・M.ワインバーグの名前は,コンピュータ業界では知らない人はいないソフトウェア開発分野での教育者でありコンサルタントである。著書に『一般システム思考入門』や『スーパーエンジニアへの道』などがあるように,システム開発の大家であり,『ライト、ついてますか』や『システムづくりの人間学』など,システム開発に関わる人間の問題に高い関心を持っている。

『秘密』は1990年翻訳初版以降,2003年には38刷が発行されるほどの名著であり,上級システムエンジニアの愛読書である。『道具箱』はその続編であり,2002年に原著が出版され2003年に翻訳された。
 ここでのコンサルタントとは,システム開発者にどうすればよい仕事ができるかを助言する業務を指しているが,必ずしもコンサルタントに限定した内容ではない。システムやプログラムに関する事例もあるが,それらに関する知識は特に必要としない。むしろ他人と接する人や問題発見や問題解決にかかわる人にとって,物事の見方を示してくれる本である。
 『秘密』では,「わからないことをしているときでも有効であるの法」,「そこにないものを見るの法」,「信頼を勝ち得るの法」のような14のテーマについて「秘密のノウハウ」を示す形式をとり,『道具箱』では,コンサルタントは「金の鍵」,「勇気の棒」,「魚眼レンズ」など12個の道具を「知恵の箱」に入れておくとよいという形式になっている。
 それらについて,ユーモアあふれるエピソードが軽妙な文体で語られ,「シャービーの法則」,「ラズベリージャムの法則」(『秘密』掲載),「鉄道の逆説」,「探偵の法則」(『道具箱』掲載)など,奇妙な名称の格言が各書に100程度示されている。

評者は以前からワインバークのファンであり,『秘密』のいくつかの法則は覚えているし,実際の場面で体験してニヤッとしたことも多い。このたび,『道具箱』とともに『秘密』も読み直したのであるが,自分の経験の変化により,新たにいくつかの発見をした。『道具箱』では,ときどき「知恵の箱」を調べ直すことが必要だといっているが,まったくその通りである。十数年も経過しているのに,古くならない知恵が詰まっている。

地方公共団体職員は,相談を受ける仕事が多いと思う。ワインバーグによれば,相談を受けることはコンサルティングをすることである。すなわち,職員の皆さんはコンサルタントなのである。
 本書は「面白くてためになる」し,気軽に読んでも楽しめるので,ぜひ読んで欲しい。なお,『道具箱』は『秘密』の読者を想定した記述が多いので,『秘密』を先に読むとよい。