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(財)地方自治情報センター『LASDEC』2003年10月号掲載

クリス・ディボナ,サム・オックマン,マーク・ストーン編著,倉骨 彰訳
『オープンソース ソフトウェア』
オライリー・ジャパン、1999年、ISBN4-900900-95-8 \1900+税
→購入サイト(アマゾン・コム)

「オープンソース」に似た概念に「フリーソフトウェア」がある。無料でインターネットからダウンロードして使えるソフトウェアとして認識されているが,英語ではフリーには「無料」という意味と「自由」という意味がある。この自由とは著作権からの自由という意味であり,ソフトウェアは特定の個人や企業の独占物ではなく,社会の共有財産として利用できるにするべきだという考え方である。共有財産として活用し発展させるためにはソースコードも公開する必要がある。それを適切に表現したのがオープンソースである。
 行政の情報化にあたっては,マイクロソフト一辺倒になる危険を回避するために,Linuxのようなオープンソースを標準にしようとする動向がある。それの適否を議論する前に,オープンソースを推進してきた人たちが,ソフトウェアについてどのような考えを持ち,文化を持っているのかを理解しておくことが必要であろう。

これに関しては,E.レイモンドの「伽藍とバザール」が有名である(山形浩生訳:http://cruel.org/freeware/cathedral.pdf)。本書は,オープンソースに関して,それを推進してきた17名の人々が,単独あるいは共同でいろいろな角度から執筆した15論文である。この執筆陣がすばらしい。例えばE.レイモンド以外に,L.トーバルズ(Linuxの開発者),R.ストールマン(Emacsの作成者,GNUの提唱者),L.ウォール(Perlの開発者),B.ヤング(Redhat社の設立者)などオープンソース分野での錚々たる人々が名を連ねている。
 内容はアンソロジー形式である。全体を通して,オープンソース運動に携わる人の考え方や文化をテーマにしているが,オープンソースを開発したときの回顧談もあれば,オープンソースの重要性を論じたものもある。なかにはLinuxやApacheなどの知識がないと理解しにくいものもあるが,それを経験した者には,作成者の性格や開発の裏話などはそれらを利用するにも役立つことが多い。
 本書は単なる読み物としても面白い。オープンソースを推進するには,そのソフトウェア自体の優秀性もあるが,それを普及には多くの仲間を引き込むことが必要であること,しかも,マスコミなどにアプローチするための方策が重要であることなど,ビジネスとしても参考になることが多い。
 また,巻末に「オープンソースの定義」と「GNUのライセンス(英文)」が掲げれている。オープンソースを利用するときには,これを理解しておくべきである。

訳者は,米大学院で数理言語学博士を得た自動翻訳の専門家であり,有名なブラックユーモア「マーフィーの法則」の訳者でもある。個性の強い原著の翻訳で定評があり,本書も読みやすい。
 行政での共同アウトソーシングや行政ERPパッケージ開発などに伴い,今後オープンソース議論が盛んになるであろう。表面的なコストや支援体制の論議だけでなく,オープンソースを支える文化にも関心を持つ必要がある。本書はそれに適した図書である。