序文
この規格は、主に高齢者、障害のある人及び一時的な障害がある人が、
これらの情報通信における機器、ソフトウェア及びサービスを利用するときの
情報アクセシビリティを確保し、向上させるために、
ウェブコンテンツを企画、設計、開発、制作、保守及び運用するときに
配慮すべき事項として明示したものである。(後略)
4 一般的原則
4.1 基本方針
- a 企画・制作するときに,可能な限り高齢者・障害者が操作又は利用できるように配慮する。
- b ウェブコンテンツは,できるだけ多くの情報通信機器,表示装置の画面解像度及びサイズ,ウェブブラウザ及びバージョンで,操作又は利用できるように配慮する。
- c ウェブコンテンツの企画から運用に至るプロセスで情報アクセシビリティを常に確保し,更に向上するように配慮する。
4.2 基本的要件(~しなければならない事項)
- a 視覚による情報入手が不自由な状態でも利用できる
- b 聴覚による情報入手が不自由な状態でも利用できる
- c 特定の身体部位だけでの入力方法に限定しない
- d 身体の安全を害することなく利用できる
4.3 推奨要件(~することが望ましい事項)
- a 認知及び記憶への過度な負担をかけずに,ウェブコンテンツを操作又は利用できる。
- b 利用する情報通信機器及び利用環境を限定せずに,多様な環境でも,ウエブコンテンツを操作又は利用できる。
- c 情報通信機器及びウェブブラウザの操作及び利用に不慣れな利用者でもウェブコンテンツを操作又は利用できる。
5 開発及び制作における個別要件
5.1 規格及び仕様
- 5.1.a ウェブコンテンツは、関連する技術の規格及び仕様に則り、かつそれらの文法に従って作成しなければならない。
- 5.1.b ウェブコンテンツには、アクセス可能なオブジェクトなどの技術を使うことが望ましい。
5.2 構造及び表示スタイル
- 5.2.a ウェブコンテンツは、見出し、段落、リストなどの要素を用いて文書の構造を規定しなければならない。
- 5.2.b ウェブコンテンツの表示スタイルは、文書の構造と分離して、書体、サイズ、色、行間、背景色などをスタイルシートを用いて記述することが望ましい。ただし、利用者がスタイルシートを使用できない場合、又は意図的に使用しないときにおいても、ウェブコンテンツの閲覧及び理解に支障が生じてはならない。
- 5.2.c 表は、わかりやすい表題を明示し、できる限り単純な構造にして、適切なマーク付けによってその構造を明示しなければならない。
- 5.2.d 表組みの要素をレイアウトのために使わないことが望ましい。
- 5.2.e ページのタイトルには、利用者がページの内容を識別できる名称を付けなければならない。
- 5.2.f フレームは、必要以上に用いないことが望ましい。使用するときは、各フレームの役割が明確になるように配慮しなければならない。
- 5.2.g 閲覧しているページがウェブサイトの構造のどこに位置しているか把握できるように、階層などの構造を示した情報を提供することが望ましい。
5.3 操作及び入力
- 5.3.a ウェブコンテンツは、特定の単一のデバイスによる操作に依存せず、少なくともキーボードによってすべての操作が可能でなければならない。
- 5.3.b 入力欄を使用するときは、何を入力すればよいかを理解しやすく示し、操作しやすいよう配慮しなければならない。
- 5.3.c 入力に時間制限を設けないことが望ましい。制限時間があるときは事前に知らせなければならない。
- 5.3.d 制限時間があるときは、利用者によって時間制限を延長又は解除できることが望ましい。これができないときは、代替手段を用意しなければならない。
- 5.3.e 利用者の意思に反して、又は利用者が認識若しくは予期することが困難な形で、ページの全部若しくは一部を自動的に更新したり、別のページに移動したり、又は新しいページを開いたりしてはならない。
- 5.3.f ウェブサイト内においては、位置、表示スタイル及び表記に一貫性のある基本操作部分を提供することが望ましい。
- 5.3.g ハイパリンク及びボタンは、識別しやすく、操作しやすくすることが望ましい。
- 5.3.h 共通に使われるナビゲーションなどのためのハイパリンク及びメニューは、読み飛ばせるようにすることが望ましい。
- 5.3.i 利用者がウェブコンテンツにおいて誤った操作をしたときでも、元の状態に戻すことができる手段を提供しなければならない。
5.4 非テキスト情報
- 5.4.a 画像には、利用者が画像の内容を的確に理解できるようにテキストなどの代替情報を提供しなければならない。
- 5.4.b ハイパリンク画像には、ハイパリンク先の内容が予測できるテキストなどの代替情報を提供しなければならない。
- 5.4.c ウェブコンテンツの内容を理解・操作するのに必要な音声情報には、聴覚を用いなくても理解できるテキストなどの代替情報を提供しなければならない。
- 5.4.d 動画など時間によって変化する非テキスト情報には、字幕又は状況説明などの手段によって、同期した代替情報を提供することが望ましい。同期して代替情報が提供できない場合には、内容についての説明を何らかの形で提供しなければならない。
- 5.4.e アクセス可能ではないオブジェクト、プログラムなどには、利用者がその内容を的確に理解し操作できるようにテキストなどの代替情報を提供しなければならない。また、アクセス可能なオブジェクト又はプログラムに対しても、内容を説明するテキストなどを提供することが望ましい。
5.5 色及び形
- 5.5.a ウェブコンテンツの内容を理解・操作するのに必要な情報は、色だけに依存して提供してはならない。
- 5.5.b ウェブコンテンツの内容を理解・操作するのに必要な情報は、形又は位置だけに依存して提供してはならない。
- 5.5.c 画像などの背景色と前景色とには、十分なコントラストを取り、識別しやすい配色にすることが望ましい。
5.6 文字
- 5.6.a 文字のサイズ及びフォントは、必要に応じ利用者が変更できるようにしなくてはならない。
- 5.6.b フォントを指定するとき、サイズ及び書体を考慮し読みやすいフォントを指定することが望ましい。
- 5.6.c フォントの色には、背景色などを考慮し見やすい色を指定することが望ましい。
5.7 音
- 5.7.a 自動的に音を再生しないことが望ましい。自動的に再生する場合は、再生していることを明示しなければならない。
- 5.7.b 音は、利用者が出力を制御できることが望ましい。
5.8 速度
- 5.8.a 変化又は移動する画像又はテキストは、その速度、色彩・輝度の変化などに注意して作成することが望ましい。
- 5.8.b 早い周期での画面の点滅を避けなければならない。
5.9 言語
- 5.9.a 言語が指定できるときは、自然言語に対応した言語コードを記述しなければならない。
- 5.9.b 日本語のページでは、想定する利用者にとって理解しづらいと考えられる外国語は、多用しないことが望ましい。使用するときは、初めて記載する時に解説しなければならない。
- 5.9.c 省略語、専門用語、流行語、俗語などの想定する利用者にとって理解しにくいと考えられる用語は、多用しないことが望ましい。使用するときは、初めて記載されるときに定義しなければならない。
- 5.9.d 想定する利用者にとって、読みの難しいと考えられる言葉(固有名詞など)は、多用しないことが望ましい。使用するときは、初めて記載されるときに読みを明示しなければならない。
- 5.9.e 表現のために単語の途中にスペース又は改行を入れてはならない。
- 5.9.f ウェブコンテンツは、文章だけではなく、分かりやすい図記号、イラストレーション、音声などを合わせて用いることが望ましい。