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地方自治体とCMS


地方自治体でのWeb運営とCMS

地方自治体の業務は多岐にわたっています。それで、所轄部門の職員がWebページを作成したり、更新したりする必要があります。ところが、それらの職員はWebページの作成技術も不十分ですし、アクセシビリティやユーザビリティに関する知識も不十分です。それで、誰にでもWebページを作ることができる仕組みが必要になります。
 Webサイトの管理、特にアクセシビリティ対策のツールとして、CMS(Content Management System)の導入が話題になっています。CMSの概要について簡単に紹介します。

CMSの機能

CMSとは、Webサイトの素材データとデザインやルールなどを一元管理するシステムです。CMSの持つ機能は、製品により、あるいは設定によりまちまちですが、一般的に次のような機能を持っています。

デザイン等の統合
各ページが統一されたレイアウトのWebページになります。ページ間のリンクが自動作成され、しかも統一した操作になります。それで、閲覧者が使いやすいサイトになります。
アクセシビリティ対策
例えば画像には自動的に代替テキストが付けられるなど、JIS規格等のルールが強制的に確保されます。さらには、使用禁止用語や個人情報などを検出して注意を促す機能もあります。
Webページ制作の知識不要
このように、誰でも一定のルールに従ったWebページが作成できますので、各部署で分担してWebページの作成・更新が容易になります。それにより、Webマスター(Webサイト構築管理者)の負荷が削減できますし、作成を通して職員のアクセシビリティやWebサイトへの意識向上にも役立ちます。
セキュリティ/責任の明確化
CMSでは、Webページの作成→承認→公開の作業の流れを制御します。決められた項目を決められた担当者が作成すると、承認者にその原稿が送付され、承認を得たら公開担当者に送付されて公開するという手続きがルール化されるのです。しかも、それらの状況がすべて記録されますので、セキュリティ/責任が明確になります。
素材管理
バックナンバー管理により、過去の記事を取り出すことができます。また、記事・写真などを部品化しておき、必要に応じて再利用することができます。
他システムとの連携
例えば毎月同じような統計データをグラフにしてWebページに掲げるとき、Excelデータを変更するだけで自動的にグラフが置き換わるような機能を持つCMSもあります。
 Webサイトの見出しや要約などを構造化して記述し、更新があったときに配信するサービスをRSSといいます。自治体でのRSSサービスが求められていますが、これらを自動化する機能を持つCMSもあります。

CMSの導入状況とその効果

「e-都市ランキング2006」によると、地方自治体はCMSを導入している割合は30.3%であり、CMSを導入した自治体では、アクセシビリティの取り組みも進んでいます。

CMS導入の効果

「トップページへのリンク」や「代替テキスト」はCMSの基本的機能なので、CMSを用いてWebページを作成すれば、ほぼ自動的に実現します。また、「ガイドライン作成」や「テスト・確認」はCMSの機能とは直接の関係はありません。むしろ、このような配慮をしているからこそ、費用をかけてCMSを導入しているのだともいえます。

また、アライド・ブレインズ「2006年自治体サイト全ページアクセシビリティ実態調査」での「データで診る自治体サイト -No.5 調査結果とCMSとの関係」の結果分析によると、必ずしもCMS導入による差異は認められないとのことです。

CMS導入・運用での留意事項

すなわち、CMSを適切に利用すればアクセシビリティ向上に役立ちますが、その運用や全職員への教育などが不適切だと効果が得られないということでしょう。

カスタマイズ(設定)が必要
自治体の環境に合わせて、CMSの持つ機能の選択、追加機能の取り込みが必要です。使いこなしていない状況で、過剰な機能を取り込むとかえって運営できなくなります。
体制の整備が必要
どのようなルールにしてどのように運営するかが問題です。それには、ツールベンダ、Webマスター、各部署担当者あるいは開発外注先も含めた検討が必要です。当初から万全の体制を作り運営することは困難です。目標を設定し、実行し、その結果をみてさらに向上するといったPDCAによる継続的改善が求められるのです。
ツールに満足するな
CMS導入で留意すべきことは、形式主義に陥らないようにすることです。新しいコーナーでは、既存のページとは異なる形式にすることも必要でしょう。また、特に重要なことを伝えるためには、形式にとらわれない記述も必要でしょう。
だからといってルールを無視してよいというのではありません。そのようなケースが起こったときに関係者が相談して、新ルールを作ることが適切です。それがPDCAでもあります。

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