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木暮 仁
『情報システム部門「再」入門』
−このわかりにくい部門をいかに運営するか−
日科技連出版社、1996年、A5版、176ページ、1400円,ISBN4-8171-6045-4
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がんばれ情報システム部長!
理想と現実のギャップが大きいのが、情報システム部門の特徴である。本書は、現実の本音に立脚した運営論を試みたもの。テーマは、人や組織の面に多くのを割いている。読者は、直接には情報システム部長を対象にはしているが、経営者や利用部門の部長にもぜひおすすめしたい。

「はじめに」より
 情報システム部門は、外部から見ても内部にいてもわかりにくい部門である。
 他の部門と比較して特殊な部門のように見られることが多い。しかし、すでに情報システムは企業のすみずみにまで浸透しており、情報技術は企業戦略には無視できない。それをあずかる情報システム部門が理解しにくい状態では、情報システムを企業戦略に役立てるのは困難である。
 本書は、情報システム部門を「わかりやすく」することを目的としている。それには、情報システム部門をわかりにくくしている原因を直視することが必要である。とかく情報システム部門運用論は理想的な「あるべき論」が多いが、この理想と現実のギャップが大きいのが、この部門の特徴である。
 本書では、現実のホンネに立脚した運営論を試みた。対象も先進企業ではなく、通常の一般的なレベルにある情報システム部門を対象にしている。


第1章 情報システム部門の特徴
 情報システム部門の任務は、プログラムを書くとかシステムを開発をするといったDP部門時代の旧任務と、経営戦略と情報戦略を統合したり情報管理を行うIT部門としての新任務がある。情報システム部門は新任務をしたいと思っているが、実際にトップやユーザが情報システム部門に期待しているのは、省力化に役立つとか、頼んだらすぐにやってほしいなどの旧任務なのである。
 また、情報システム部門も本当に新任務を望んでいるのかどうか疑問である。そもそも情報システム部門は奇妙な部門である。他部門と比較するとあまりにもトップやユーザの意向を重視し、自部門の主張が欠けているようである。

第2章 情報システムの特徴
 この部門がわかりにくいのは、それが取り扱っているコンピュータやシステムそのものがわかりにくいことが大きな原因である。
 たとえば、ハードの投資では、新機種にするとどのような業務ができるようになるのか、その価格でその時期に購入するのが適切かどうかを説得するのは難しい。まして、情報システムの開発保守では、事前に効果がわからないし、なぜそのような費用になるかも不明である。すなわち、他人に説明できないし自分でも理解できないものを取り扱っているのだから、その部門もわかりにくいのである。

第3章 利用部門との関係
 システム開発や運営では「ユーザ主導」が重要だといわれている。ところが、これはややもすると、「ユーザのいうことを聞いていさえすればよい」ということにもなりかねない。これは無責任な態度であり、しかも情報システム部門の地位を低下させ、部員の志気をそぐことになる。
 また、ユーザ主導はユーザ「趣味」主導にもなりやすい。それは情報システムの無政府状態を招くことになる。とくに経営環境が激変している状況では、ユーザすらニーズがわからない状態なのである。もっと情報システム部門は情報システムに責任を持つ必要がある。

第4章 トップとの関係
 トップは、経営における情報の価値も理解しているし、情報システム部門を戦略部門にしたいとも思っている。しかし、自分でコンピュータを使うこともないし、情報システム部門に相談することも少ない。すなわち、頭では認識しているのだが、体で実感していない。それが、情報投資での費用対効果などで、情報システム部門が納得 させるのが難しいのである。
 それを改善させるには、EIS(Exective Information System)などを提供するのが効果がある。しかし、その運営をうまくしないと副作用が多い。「トップはキーボードやマウスが使えない」などというのは誤りである。トップは内容が重要なものならば、操作方法云々などはいわないものである。もし、それを要求されるのであれば、「情報秘書」を置けばよい。

第5章 情報システム部門の内部合理化
 情報システム部門は他部門の業務改善には積極的だが、自部門のそれには消極的である。そのため生産性が低い。情報システム部門もリエンジニアリングの対象である。外部から低生産性を指摘されたらどうするのだろうか。
 情報システムにとって過去の遺産は負債である。抜本的な解決は現行の基幹系システムの抜本的改革にある。それにはEUCが重要なのだ。

第6章 要員の育成
 これからの企業では、システム的な発想ができる人、異なる価値観をうまく統合できる人、不確定な状況でプロジェクトを完成できる人が重要になる。このような人を育成できる部門は情報システム部門が適している。情報システム部門は人材育成機関になろう。
 要員を各部門に提供することが必要である。その人が社内で重要になることが、情報システム部門の地位を上げ、部内の志気を高めることになる。逆に、出ていった人が便利屋にしてはならない。部員転出での部長の責任は重い。

第7章 新任部長への期待
 部内では「素人」を脱却してほしい。さもないと、部員の志気を低下させることになる。しかも現在の環境では、情報システム部長は情報技術動向を正しく認識することが重要な任務である。
 しかし部外では、「素人」を活用してほしい。とかくトップやユーザは、情報システム部門を色眼鏡でみる風潮がある。それで古参部長がいうことが受け入れらないのである。素人として説得するほうが効果的なのである。