ここでの用語
VR
ここでは、次のVR、AR、MR、SRを総称してVRという。
- VR(Virtual Reality、仮想現実):仮想世界を現実で体験する
- AR(Augmented Reality、拡張現実):現実世界に情報を追加する
- MR(Mixed Reality、複合現実):仮想世界と現実世界が同等に融合
- SR(Substitutional Reality、代替現実):本来実在しない人物や事象が実時間・実空間に存在しているかのように錯覚させる
VR機器
利用者が着用するウエアブル端末。それらの位置や動きをセンサしてパソコンやゲーム機に送り、パソコンのVRアプリにより加工して、仮想世界を作り出す。
パソコン等の機能を内蔵したVR機器もある。
- HMD(Head Mounted Display)
頭部装着ディスプレイ。ゴーグル(実社会は見えない)やメガネ(実社会も見える)の形状。VRからの画像をここに表示する。マイクやスピーカを付加することが多い。
- data glove
手袋を着用するとかリモコンを持つことで、手の位置や動作を情報入力を行ない、VR空間での物体を動かすようなことができる。
- data suit
衣服状の装置。 体の各部位の動きを検知して入力するセンサ機能と、VRからの情報を体に擬似的な刺激を与える出力機能がある。
VRの実現方法
- HMD型VR
VR機器を身に着けて視線や体の動作をVRシステムに伝え、HMDあるいはパソコンのディスプレイに仮想世界を表示する。利用者自身はパソコンなどセンサ情報受信機器の近くにいる。
- 没入型VR
劇場型VR。利用者自身が実世界の室内に入る、室の壁や天井には仮想世界が投影されている。通常は備え付けの専用VR機器を用いて映像の変化を見たり、座席の振動により落下などの錯覚を体験する。
- メタバース
仮想の室内に、利用者の分身であるアバターを送り込む。HMD型VRのように利用者の動作でアバターを操作する。利用者の立場ではHMD型VRであり、アバターの立場では没入型VRである。アバター同士のコミュニケーションが重視される。
VRの歴史
VR黎明期
- 1935年 小説『Pygmalion's Spectacles』
ワインボウム(Stanley Grauman Weinbaum)による小説『Pygmalion's Spectacles』に、ゴーグルを装着すると仮想的に五感を感じ取りながら擬似体験が可能な装置が登場する。フィクションとはいえ、当時としては非常に先進的なアイデアであり、VRの先駆けとされている。
- 1962年 最初の没入型VR体験試作機 Sensorama
映像技師のへリング(Morton Heilig)がSensoramaという、視覚、聴覚、嗅覚、触覚を模擬する没入型のVR体験装置の試作機を開発した。世界でも最初期のVR機器とされている
- 1968年 最初のHMD ダモクレスの剣
ユタ大学のサザランド(Ivan Edward Sutherland)は、頭部搭載型ディスプレイの The Sword of Damocles(ダモクレスの剣)を開発。天井からつり下げたヘッドセットを装着することで、現実世界の風景とコンピュータからの画面が重なり立体的に見えるというもので、最初のHMDだとされている。
- 1978年 最初のVRシステム Aspen Movie Map
MITが「ユーザが、仮想世界の中でコロラド州アスペンの散策を行うことができる」システムを公開した。初期のバージョンは実際に撮影された写真を張り合わせた世界であったが、3版目からは3Dモデルによって仮想世界が再現された。
現在の Google ストリートビューに似ている。
1990年代:第一次VRブーム
- 1989年 用語「VR」とRB2
「バーチャル・リアリティ」という言葉が一般的になったのは、1989年のサンフランシスコで行われたイベント Texpo’89 だといわれている。
このイベントにおいて、VPL Research社は RB2(Reality Built for 2 persons)というVRコミュニケーションシステムを発表した。多様な装置(注)を身に着けた2人の参加者が、同じVR空間の中で会話できる3Dテレビ会議システムというようなコンセプトである。
(注)
- HMD(Head Mounted Display):頭部装着ディスプレイ。用途はVR空間が見えるゴーグル
- data glove:直感的に人間の手の動作から情報入力を行なって、VR空間での物体を動かすようなことができる
- data suit:衣服状の装置。 体の動きを検知するセンサーが搭載され、動きをデータ出力するセンサー機能と、体に擬似的な触覚を与える出力機能がある。
- 1991年 没入型VR CAVE
没入型VRとは、ウェアラブル型ではなく部屋の壁の全方位に映像を投影して没入環境を構築するVRシステム。IPT(Immersive Projection Technology)ともいう。ユーザの頭には磁気式の位置センサ(ポヒマス)がとりつけられ、ユーザの視点から見た映像が、それぞれのスクリーンに描画される。
1991年にイリノイ大学で提案された CAVE(Cave automatic virtual environment)が有名。約3メートル四方のスクリーンを床面、壁3面に配し、立体映像に囲まれた部屋を作り上げた。
- 1992年 NHK放送『仮想現実遊戯大全―ゲーム・ワールドへの招待』
ゲーム業界関係者のインタビューを交えて、開発が進められているVRを使用したゲームや今後のゲーム業界について紹介した。
- 1994年 有名な国産VRゲーム機の誕生
- 1994年 Sega VR 液晶シャッター方式のHMDで擬似3D的な奥行きを実現
- 1994年 初代PlayStation発売
- 1995年 任天堂 家庭用ゲーム機「バーチャルボーイ」
当時では、ワイヤーフレームがしっかりしている3D映像のHMD型ゲーム機は画期的であったが、コンピュータ処理能力が低く、表示画素が粗く本格的な普及には至らなかった。
- 1994年 VRML
VRML(Virtual Reality Modeling Language)は、Webブラウザで3次元グラフィックスを表示するためのマークアップ言語およびファイル形式。1994年に最初のバージョンが発表、1997年にISO規格になる。
- 1997年 東京大学 CABIN
イリノイ大学で提案された CAVE 型のVR施設。2012年まで、15年間にわたり運用された。
2000年代:VR冬眠期
1990年代を通して、VRの基本技術、VR機器の開発、その応用などが進んできたが、2000年代になると、VRへの期待感が弱まり、その需要も頭打ちになってしまった。
- 当時のパソコン性能が低く、VRが要求するレベルを満足できなかった。
- 普及が進まないため、VR装置の価格が下がらなかった。
- 技術者も一般者も、インターネットに関心が移ってしまった。
- 2007年 Google グーグルマップにストリートビュー機能
- 2010年にGoogleがグーグルマップに3Dモデルを追加した。
Googleストリートビューのスマートフォンアプリには、VRモード機能がある。ストリートビューの画面が二眼式に切り替わり、二眼式のVTゴーグルを使用すると、立体的な風景が見える。
- 2009年 任天堂 Wii MotionPlus
- 2009年 ソニー PlayStation Move
Wii(ウィー)は、任天堂が2006年に発売したた家庭用の据置型ゲーム機。
Wii MotionPlusは、利用者が手に持ったリモコンの動きをジャイロセンサでキャッチして、それを用いてゲームの入力に用いる仕組み。ゴルフゲームやバトルゲームなどモーションを使ったゲームに効果がある。
ソニーも同様な機能の PlayStation Move を開発。
- 2009年 Microsoft Project Natal
Xbox 360は、マイクロソフトが2005年に発売した家庭用ゲーム機。
Project Natalは、リモコンのようなコントローラを必要とせず赤外線カメラや深度センサー、マイク、顔認識システムなどを利用し、ユーザーの体形や体の動きを判断。動きをゲームに反映する仕組み。後に「Kinect」と呼ばれるようになった。
2010年代前半:VR復活期
- 2010年 Microsoft Kinect
2010年に新型モデルXbox 360 Sを発売するのに伴ない、先の Project Natal を機能拡張した。
テレビの前に装置を設置することで、プレイヤの動きを捉えてゲームを行うことができる。
ゲーム業界に衝撃を与えた。
- 2012年 Oculus Rift
ラッキー(Palmer Luckey)が開発した画期的なHMD。
- 湾曲系光学システム:レンズを湾曲した魚眼レンズにし、そのまま映すと歪んでしまう映像を逆算して最初から歪ませて投影して、視聴者の目には正しく映るようにした。
- Oculus Insight:HMDにカメラを内蔵し、外部センサーを置かずに、ヘッドセットとコントローラーだけで場所を把握できるトラッキングシステム。2014年に実現。
- 2014年、Facebook(現 Mera)に買収される。
- 2013年 Google Glass
Google Glassは眼鏡型端末であり、スマートグラスといわれる。
本体は、メガネの隅やツル部に取り付けられ、超小型コンピュータにカメラやスピーカなどを内蔵している。
レンズがディスプレイになっており、現実世界に光景に、本体からのVR画像や各種情報を重ねて表示できる。
2012年に開発プロジェクト発足。2013年に開発者向けプロトタイプ製品を発売。2014年に一般消費者向けにも販売。
Google Glassは、その後に続出したスマートグラスのプロトタイプ的存在になった。
- 2015年 Google Glass Enterprise Edition
産業分野での利用を目的とした Google Glass
工場などで従業員が着用することにより、両手を塞ぐことなしに、作業手順の確認、操作説明書の参照などが可能になる。
2010年代後半:第二次VRブーム
- 2016年 VR元年
次のように、2016年にはVR利用での大きな変化があり話題になった。社会的にも「VR」が認識され、「VR元年」といわれた。
- 2016年 任天堂 ポケモン GO
スマートフォンだけを用いたARアプリ。
このアプリをスマートフォンにインストールすると、ポケモンなどのキャラクタの種類、出現位置、出現時刻、出現時間などが設定される。この設定値はアプリがネットから随時アップデートされるときに更新される。
スマートフォンで現実世界の風景を見ているときにこのアプリを起動すると、位置情報を活用することにより、設定条件に合致するとキャラクタが重なって表示される。
より希少なキャラクタをより多く捕まえる(写真を撮る)ゲーム。
機器も不要で手軽に参加できるので、世界的に大ブームになった。
- 2016年 HTC Vive
HTC(宏達国際電子股份有限公司)は、台湾のモバイル・デバイスメーカー
Valve社は、世界最大のPCゲームプラットフォーム「Steam」を運営する米国企業
Viveは、両社の共同開発による SteamのVR規格対応のHMD。
- 2016年 ソニー PSVR
PlayStation4 に接続して使うゴーグルで、スマホVRや一体型VRに比べ、かなりリッチなVR体験が可能。
- PSVR向けゲーム;PlayStationの人気から多数のタイトルが作成された。
- シネマティックモード:仮想空間内に巨大なスクリーン(最大226インチ)で映写可能
- 360度/180度のVR動画
- 2016年 Snap Spectacles
AR(拡張現実)とは、現実世界の映像にデジタル コンテンツを重ねて表示する技術。
Spectaclesは、初めてデバイス自体にARの要素を搭載したスマートグラス。
サングラスの隅にカメラを内蔵したデバイスがあり、視線意識を変えることにより、サングラスの表示が現実とデバイスからのデジタル コンテンツを重ねて視ることができる。
そのコンテンツは、ARアプリによりデバイスに取り込まれる。
- 2018年 North社 Focals
非常に単純なARのスマートグラス(見かけは通常のメガネと大差ない)。
右側のツル部分に内蔵されたプロジェクタからデジタル映像とを照射しレンズに重ねて投影する仕組み。
グラス本体には操作システムは装備されておらず、指輪型のデバイス「Loop」のジョイスティックを使って操作する。
表示させる情報は、時間や天気予報、スケジュール管理やメール、呼車アプリなど、基本生活に必要最低限のものに限定させる。
- 2019年? RealWear HMT-1
史上初の現場作業員向けスマートグラス。メガネではなく、ヘルメットに装着し、通常のマイクの位置に小さなディスプレイを持つ。
すべての指示を音声で行えハンズフリーなので、両手が離せない作業に適している。防塵防水 落下強度、耐久性、防爆性など作業環境に適した構造になっている。
HMT-1は、HMT-1Z1、Navigator 500、Navigator 520 へと発展した。
- 2019年 Oculus Quest
- 2020年 Oculus Quest 2
2014年、Oculus はFacebook(現Meta)に買収されたが、商標としての Oculus は継承された。
Oculus Quest は Oculus Rift、Oculus Go の後継版。
独立型HMDで、パソコンなしに動作するので、低コストだといえる。
通常の「左右に向く」「上下に向く」「頭を傾ける」に加えて「前後・左右に移動する動き」「しゃがんだり立ったりして上下に頭の高さを変える動き」の検出ができる。
ゴーグルだけで体の動作をコンテンツ内の移動などに反映できるので、メタバースへの参加が手軽にできる。
メタバース
メタバースは「超(メタ)」と「宇宙(ユニバース)」を組み合わせた造語。
2010年代後半から始まり、2020年代前半にかけて急速に普及した。
(2022年を「メタバース元年」という人もいる)
街頭や建物内などの3次元仮想空間(ワールドという)を作成し、その中に利用者の分身である アバターを表示する。利用者は、VR機器によりアバターを操作して、移動させたり会話させたりすることができる。
HMD型と似た操作ではあるが、メタバースでは仮想空間に没入していることである。没入型VRとの違いは、仮想空間にいるのはアバターであり、利用者自身ではない。特定の場所に出かける必要がない。
他人とのコミュニケーションを重視していることから、VRSNS(ソーシャルVR)ともいう。
(注)meta社(旧 Facebook)は、自社のサービスを「メタバース」ということがあるが、メタバースは普通名詞であり、特定企業の商品名ではない。
メタバースの定義
未だメタバースの厳格な定義はなされていない。
- 1992年 「メタバース」の語源
「メタバース」という用語は、ティーヴンスン(Neal Stephenson)が1992年に発表したSF小説『Snow Crash』で使われたのが最初だという。
人々はゴーグルとイヤホンを装着して仮想世界(メタバース)に入り、アバターを通じて行動するなど、現在のメタバースと同じような環境を想定している。
- 2011年 日本バーチャルリアリティ学会による定義
『バーチャルリアリティ学』
① 3次元のシミュレーション空間(環境)を持つ。
② 自己投射性のためのオブジェクト(アバタ)が存在する。
③ 複数のアバタが、同一の3次元空間を共有することができる。
④ 空間内に、オブジェクト(アイテム)を創造することができる。
- 2022年 マシュー・ボールによる定義
Mathew Ball は著書『The Metaverse: And How It Will Revolutionize Everything』で「理想のメタバース」として、次の7項目を示した。
① 永続的である
② 同時多発でライブである
③ 参加ユーザー数に制限がなく、各ユーザーは存在感を持つ
④ 経済が完全に機能している
⑤ デジタルと実世界、プライベートとパブリック、オープンとクローズの双方にまたがる体験である
⑥ 前例のない相互運用性を提供する
⑦ 個人、企業など幅広い貢献者によって創造・運営される
~2010年代中頃:メタバース黎明期
1990年代の第一次VRブーム後半には、現在のメタベースの先駆けとなるサービスが続出した。しかし、当時のIT環境では厚い壁があり、広く普及するには至らなかった。
- パソコン通信でのチャットのビジュアル化のようなもので、操作はVR機器ではなく、パソコンを用いるのが通常だった。
そのため、当時としては高性能なパソコンが必要であり、しかもアバター操作方法があまりにも複雑だった。
- ブロードバンド以前の通信回線であり、アバターをスムーズに動作させるには無理があった。特に日本では通信料金が非常に高く、安心して楽しむには限界があった。
- 1986年 Lucasfilm 「Habitat」
- 1990年 富士通 「富士通Habitat」
Habitat は
米ゲーム会社Lucasfilmは世界ではじめてアバターを使用したチャットアプリ「Habitat」を開発。富士通は、それを用いて「富士通Habitat」としてパソコン通信 NIFTY-SERVE(現@nifty)で
サービス開始。
パソコン通信のチャットに2D画像操作機能を加えたもの。利用者はすべての動作をパソコンのマウスやキーボードで操作する。利用には従量制の利用料が必要だった。
- 1995年 Worlds社 「Worlds Chat」
- 1996年 凸版印刷 「Worlds Chat/J」
Worlds Chatは、米Worlds Inc が開始したオンライン チャット。凸版印刷は日本語版を開発し、Worlds Chat/J を運営した。
契約先企業のWebページへのリンクを仮想街の看板として表示。利用者はパソコンからアバターを仮想街に入れる。アバター同士のチャットもできるが、看板をクリックすると広告主のサイトに移動する。
クリックに応じた紹介料を広告主から得るが、利用者からは一切の料金を取らないというメタベース広告のビジネスモデルである。
- 2003年 Linden Lab 「Second Life」
3D空間で、3Dのアバターが行動する。多くの空間が提供され世界観光もできる。
この中だけで使える仮想的通貨を用いて、取引ができるようになった。
2010年代後半:メタバースプラットフォームの続出
- 2017年 VRChat
サービス開始が先行したこともあり、利用者が非常に多い。大手企業や地方自治体がVRChatを導入して独自のワールドを作成したり、VRChat上で特別なアイテムを販売したりなど、さまざまな業種・業界での利用も多い。
- 2017年 cluster
日本のクラスター株式会社が開発・運営。PCやスマートフォンからの利用も可能。
手軽にイベントや会議を開催する一連の機能を持ち、日本の利用環境を重視していることが特徴。
- 2018年 Mozilla Hubs
Mozilla はブラウザ Firefox の運営組織。
アプリのインストールが不要でブラウザだけで利用できる、VR機器が不要、PCやスマートフォンなどの機種やOSを問わないなどの長所がある。
セミナーやオンライン会議など画面や動画を共有する必要があるコンテンツには適しているが、同期が重要になるインタラクティブ性の高いゲームなどには不向き。
- 2019年 Facebook Horizon Worlds
- 2021年 Horizon Worlds
SNSでの巨大な利用者を持ち、VRヘッドセット企業のOculusを買収するなど、後発ながら多くの利用者が期待される。
2021社名を「Meta(メタ)」に変更、ザッカーバーグ(Mark Elliot Zuckerberg)はメタベースへの本格的参入を表明、サービス名を Horizon Worldsに変更。
(注)メタバース運営者の収益モデル
プラットフォームも作成や維持運営には莫大なコストがかかるが、メタバースサービスの利用料は無料なのが通常である。次のような手段で収益を得ているが、いずれも利用者人数が大きく影響するので、競争が熾烈になっている。
- 高度なアバターや機能への課金
- メタバースを利用する各種イベントでの主催者からの収入
- 企業独自のメタバース構築でのコンサルティングや開発サービス
- 広告収入。メタバース内での広告(タイアップ)や関連局面での広告
- メタバース内での商取引や関連アプリ販売の仲介手数料
2020年代前半:メタバースのビジネス活用展開期
以下の「クローズ メタバース」で示すように、広い分野でメタバースがビジネス戦略として活用されるようになった。
クローズ メタバース
ここでのクローズ メタバースとは、特定の組織が、特定の目的のために構築し運営するメタバースのこととする。
プラットフォーマーに依頼する、その構築ツールを利用して構築する、組織独自で構築するなど手段は多様である。
以下、代表的な利用分野を掲げる。
(注)下記のURLは、たまたま私がアクセスしたもので、特別の選択理由はない。
ゲーム分野
通常のVRの時代でも、ゲーム分野への利用は圧倒的であった。メタバースでは、従来のゲームと質的に大きく異なり、利用者を増大させている。
- アバター間のコミュニケーションができるので、協調や対立など複雑な関係をゲームに取り込める。
- メタバース内だけで通用するNFT(Non-Fungible-Token)やビットコインなどの暗号資産の取引をサポートしているメタバースでは、ゲーム武器などのアイテムの金銭取引が容易になる。これを法定通貨に換金できるならば、ゲームで遊んで稼ぐ(Play to Earn、P2E)こともできる。
観光、美術館、博物館
従来からARを用いて古城などを重ねて見せるサービスはあったが、その多くは現地でのサービスで、視野も限定されていた。メタバースを利用することにより、次のようなことが可能になった。
- 安定したインターネット環境さえあれば、いつでもどこからでも参加できる。費用もほとんどかからない。
- 臨場感がある。人気の高い観光地ではアバターが多い。アバター間での会話もできる。
- アバターを移動させることにより、従来のARでは対応が困難だった、裏側や上空から見ることができる。拡大したり触って感触を確かめることもできる。
- 展示者側では、来場者の整理、展示入替、保守などの経費を削減できる。
メタバースイベント
音楽フェスティバル、業界あるいは地域の展覧会イベントなどの催しが、2020年代初期には新型コロナの猛威により開催できなくなった。その代替手段としてメタバースを利用したイベントが流行した。
その経験から、メタバースイベントの長所が認識され、代替手段ではない位置づけになり、メタバースイベントの対象分野や開催頻度が急激に増加した。
- 会場確保の問題が解決される。場所・時間を問わずに開催できる。
- 規模の制約がない。アーティストや出店ブース、来訪者が多くなっても、特別な対策を講じる必要がない。
- 会場の設定、出品物の輸送、来訪者対応などのコストが少ない。
- 来訪者は、予約などの手続、会場への交通費などが不要になる。肉体的な疲労も少ない。
メタバース店舗
オンライン店舗は以前から日常化している。また、商品説明などを仮想空間で行う例も多くなっている。不動産業ではVRにより客が住居内部を多様な位置から見ることもできる。
これらと比較したメタバース店舗の特徴は、客も店員もアバターであることだといえる。
- 客は自由に動くことができる、空中から見るようなこともできる。
- 商品を持ち上げたり触ったりして、感触を確認することができる。
- アバター同士での会話では、客は実際の対面や電話よりも本音での質問がしやすい。
- 将来、店員のアバターにAI(人工知能)技術を加えられるようになれば、実際の担当者がいなくても、ある程度の応対はできるだろう。また、外国語での応対も可能になるかもしれない。
メタバース店舗だけで売買が完結するのは稀で、ここで関心と理解を持ってもらい、実店舗げと誘導するのが目的になる。
組織内メタバース
2020年代初期には新型コロナの猛威により、在宅勤務やオンライン教育が行われるよういになった。単なる電話や電子メール、ネット授業ではなく、実際の職場や教室で、仲間と一緒にいる臨場感のある環境の設定が効果的であることが実感された。