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アンナ・クルニコワ ウイルス
(ウイルス作者が愉快犯だった時代)

古い記事が多いので、リンク切れになっているものがあると思いますが、あえてそのままにしておきます。


1990年代のウイルス作者と世間の認識

1990年代までのウイルス作者は、不正利益を得るよりも、自己顕示欲を満足するための愉快犯が多かった。1990年代の中頃になると、インターネットの普及により、ウイルス感染が広範囲になり欲望を満足しやすくなった。また、マクロウイルスが出現し、懇切丁寧なアングラ情報が提供されるようになったため、技術力の低い連中にもウイルスが作れるようになった。ウイルス作者の大衆化が進んだのである。

当時でも、ウイルスの被害は増大し社会問題になっていたが、世間もウイルス作者は反社会的な犯罪者というよりも「困った連中」だというような認識であった。それで捜査も不十分で、厳格な罰則を与える法律も不十分であった。これが、ウイルス問題を深刻にしたともいえよう。

その典型例として、2001年に発生した「アンナ・クルニコワ」ウイルスの顛末を紹介する。

アンナ・クルニコワ(Anna Kournikova)って知ってるかい? ロシアの生んだプロテニス選手だ。17歳で1997年のウインブルドンでベスト4、翌年のリプトンでは決勝にまで進んだ。特筆すべきことは、彼女が「コートの妖精」といわれたことだ。
インターネットテニスジャパン「アンナ・クルニコワ ページ」
http://www.tennis-japan.com/anna/index.html

でも、ここでの話はテニスじゃない。「アンナの写真だよ」なんてメールがくれば,彼女のファンでなくても添付ファイルを開くだろ? するとウイルスに感染しちゃうというわけだ。このウイルスが特別にすごいわけではない。たいした技術もない野郎によるありふれたウイルスなんだが,当時のウイルス作者の一面をよく表した事件なんだ。

事件の推移

犯人と手口

同じような記事をいくつも並べたが,読み合わせて見ると面白い(何が?)。
 Ontheflyと名乗る20歳のオランダ人青年が,14日にオランダの捜査当局に自ら出頭した。クルニコワ選手のファンだという。
 また,OnTheFlyは出頭する前に声明文をWebで流している。そのなかで「このような大混乱を引き起こしたことを申し訳なく思っている」とわびているが「面白いからやったわけではない。添付ファイルを開けた人に害を加えようなどと考えたことはない。しかし結局、感染したのは本人が悪いのだ」とも書いている。それもそうだが,それをオマエからいわれたくないな。泥棒にも3分の理ってことか。

OnTheFlyも声明文でいっているが,この『アンナ・クルニコワ』は,18歳のアルゼンチン人青年「[K]Alamar」が作った「VBS(Visual Basic Script)ワーム・ジェネレータ」というワーム作成ツールをインターネットから入手して作成したという。なお,[K]Alamarは,この騒ぎを知って心配になり,彼のサイトから入手できるようになっていたそのジェネレータをサイトから削除した。
 このツールには,わかりやすいreadmeファイルと、使い方がすぐわかるマウス操作のインターフェースが備わっている。専門家の話では「このVBSワーム・ジェネレーターを使えば、10歳の子どもでもワームが作れる」とのこと。OnTheFlyは,声明文でウイルスを作ったのは初めてだといっている。

要するにOnTheFlyは独創性のあるハッカーではなく,つまらぬ初心者なんだな。唯一の独創性といえば,クルニコア選手の写真を餌にしたことだけだが,それも以前から「I Love You」のように、つい開封したくなる件名をつけるのは常識になっている。そんな平凡なヤツが作ったウイルスが大騒ぎになったということは,誰でもがこのような騒ぎが起こせるということだ。それが最も怖いことだ。

後日談

ところで・・・その後がズッコケている。