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中央官庁Webページ集中改ざん事件(2000年)

古い記事が多いので、リンク切れになっているものがあると思いますが、あえてそのままにしておきます。


事件の顛末

サイバーテロとは、インターネットを用いた大規模な破壊活動のことだ。物理的な破壊活動と比較して、安価に深刻な打撃を与えることができるため、ビジネスとしても政治目的あるいは軍事目的にも効果的な手段になる。
 日本でサイバーテロが広く認識されるようになったのは、2000年の年頭である。心配されていた「西暦2000年問題」が大きなことにならずに済んだとホッとしていた矢先に、大事件が発生した。
 2000年1月24日 科学技術庁のホームページが、日本人をののしり、ポルノサイトへ誘導する内容に改ざんされた。さらに26日には南京大虐殺をめぐる抗議文に改ざんされた。多くの中央官庁やその関係団体のサイトが同様な抗議文に改ざんされた。また、総務庁統計局のWebサイトでは公開中の国勢調査などの全データが消去され、アクセス不能になった。

当時のインターネットで報道された事件を列挙する。これ以外にも、阻止できたが攻撃を受けたサイトは多数あるという。
  発覚日 被害サイトと内容
  1月24日 科学技術庁 ホームページ改ざん
  1月25日 総務庁統計局 データ消去
  1月25日 総務庁本庁 ホームページ改ざん
  1月25日 総合研究開発機構 ホームページ改ざん
  1月26日 科学技術庁 ホームページ改ざん
  1月27日 総務庁統計局 ホームページ改ざん
  1月27日 運輸省 ホームページ改ざん
  1月28日 参議院インターネット審議中継 ホームページ改ざん
  1月28日 人事院近畿事務局 データ消去
  1月29日 政府資料等普及調査会 ホームページ改ざん
  1月29日 かずさDNA研究所 ホームページ改ざん
  1月30日 沖縄郵政管理事務所 ホームページ改ざん
  1月30日 東京都老人総合研究所 ホームページ改ざん
  1月31日 中小企業総合事業団 ホームページ改ざん
  1月31日 自動車事故対策センター データ消去
  2月1日 科学技術振興事業団 ホームページ改ざん
  2月1日 基盤技術研究促進センター ホームページ改ざん
  2月1日 宇宙科学研究所 ホームページ改ざん
  2月2日 国立身体障害者リハビリテーションセンター ホームページ改ざん
  2月4日 NHK関連企業グループ ホームページ改ざん
  2月7日 国際観光振興会 ホームページ改ざん

これらの攻撃は、1月23日に大阪で開催された南京大虐殺を否定する集会への反発が引き金になったのではないかといわれている。その後、首相の靖国神社参拝など、政治的な事態が発生するたびに同様な攻撃が集中している。政治的プロパガンダの手段になっているのだ。

犯人は誰か

中国語が多く用いられていること、中国のサイトからの発信が多いこと、日本人へのハッカー行為を呼び掛け、そのための情報を提供している中国語Webサイトがあったことなどから、一連の攻撃が、中国語を使うハッカー集団のしわざではないかともいわれたが、結果として確認できなかった。また、インターネットは国際的なネットワークなので、あえて他国のサーバを経由させることにより、発信源を隠すことは簡単である。
 いずれにせよ、これだけの同時多発テロを実行するには、大規模な組織が存在し、命令・統制が行われていることが考えられる。

また、このような事件に便乗した模倣犯も多いともいわれている。インターネットは、アジテーターにとって効果的な手段である。特定の企業を標的とした誹謗中傷、不売運動などにつながり、それを恐喝の道具とする犯罪も発生する。その片棒を担ぐようなことにはなるべきではない。

当時のセキュリティレベル

このような事件があると、マスコミの官庁バッシングが起こるのは常のことだ。しかし、客観的にみても、当時は官庁の危機意識は低かった。
 日本の技術推進の元締めである科学技術庁のサイトが、最初に被害を受けたということで、いろいろな指摘があった。

警察庁によると、ほとんどは、既知のセキュリティホールを利用したもの。 被害事例には、ホームページ作成・管理プログラムの設定ミス、ウェブサーバーに対する不適切なアクセス制御を原因とするものがそれぞれ数件あったという。
 また、最初の事件が起こってから2週間も同様な被害を受けたことは、関係者が対策を放置していたことになる。ベンダにいわれてから対策について相談をはじめた機関もあったという。

セキュリティ対策が甘かったのは官庁だけではない。科学技術庁や総合研究開発機構の事件では、東大本郷キャンパスのコンピュータが踏み台にされていた。また、人事院への攻撃では、高知工科大のアドレスが使われていたという。

サイバーテロ対策

このような不正アクセスは以前から問題になっていた。「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」が前年(1999年8月)に成立し、2月13日から施行されることになっていた。この一連の事件が施行直前に行われたのが故意か偶然かは不明である。

この中央官庁攻撃事件をきっかけにして、サイバーテロ対策がとられるようになった。