主要年表
ポータルサイト・検索エンジン関連
インターネット広告関連
1994 Yahoo!設立
Infoseek設立(ロボット型検索エンジン)
1995 Amazon.com アフィリエイトプログラム開始
1996 Yahoo!Japan 営業開始
Yahoo! Japan バナー広告開始
goo(NTTグループ)営業開始
Infoseek 日本のデジタルガレージ社と業務提携、サービスを開始
1997 Overture(GoTo.com)設立
この頃、インターネット広告の急速な増加の始まり
SEOへの関心が始まる
1998 Google設立
Yahoo!Japan、検索エンジンにgooを採用
2000 Goodle、Adwords開始
Google日本版開始
Amazon.com 日本でのサービス開始
楽天、インフォシークの日本法人を買収
2001 Yahoo!JAPAN、Googleの検索エンジン採用
日本広告主協会インターネット広告の効果に関する実証実験
2002 Overture日本法人オーバーチュアを設立
Google AdWords開始
2003 Google AdSense開始
Yahoo!、Overtureを買収
2004 Yahoo! 独自の検索エンジン技術「YST」開発。Googleとの契約終了
日本のインターネット広告費、ラジオを抜く
2005 Microsoft、MSN search正式版開始。自社製検索エンジンに
Yahoo!JAPAN、YSTを採用
YouTubeサービス開始
Google Maps API公開
2006 Overture、携帯電話向け広告「スポンサードサーチモバイル」
Google、「AdWordsモバイル」開始
KDDI、Googleの検索エンジン採用
Softbank、Yahoo!のYST採用
日本のインターネット広告費、雑誌を抜く
2007 Yahoo!、行動ターゲティング開始
Google モバイルAdSense開始
2009 Microsoft、検索サービスをBingに改名
Yahoo!、MicrosoftのBingを採用
日本のインターネット広告費、新聞を抜く
Google 「興味/関心に基づく広告」のベータ版開始
2010 Yahoo!JAPAN、Googleの検索エンジン採用
1990年代前半 先駆的ポータルサイト
米国での先駆的ポータルサイト
- 1990年 Archie
マギル大学の学生(名前が見つからない)が始めたのだという。FTPサーバに接続してファイル一覧表を取得したという。これが学生間に評判になり、協力者が増えて充実した。これが検索サイトの最初だといわれている。
- 1991年 Gopher
ミネソタ大学で開発されたテキストベースの文献整理用システムを、インターネットでの活用に改良したもの。ファイルに見出しをつけて階層化し、メニューにしたがって検索が行える仕組みになっていた。
- 1994年 Web Crawler
ブライアン・ピンカートン(Brian Pinkerton)により開発された。最初の全文検索エンジンだといわれている。1995年にExciteが買い取り、検索サイトを設立した。
日本での先駆的ポータルサイト
- 1993年 NTT「日本の新着情報」開設
NTTが自社Webページを日本の情報発信基地として公開した検索サイトである。日本語版と英語版があり、世界のWWWとURLの最新情報を網羅し、事実上日本初のポータルサイトとしての役割を果たした。
1995には「NTT DIRECTORY」になった。ロボットエンジン「TITAN」、全文テキスト検索の「InfoBee」、WWWとデータベース連携ツール「WebBASE」を使っている。
このサイトwww.ntt.comは内外から高い評価を受けた。後に国別ドメイン.jpが設定された際、このサイトの改名は影響が大きいとの理由で、例外的に.comのまま残された。
- 1994年 千里眼(前身)
大学研究者の間で検索サイトの試みが多く行われた。その中で後に「千里眼」と命名されたサイトが有名である。田村健人(早稲田大学)がロボット検索エンジンを開発して、.jpドメインのデータの収集を始めたのがその前身である。
1990年代中頃:Yahoo!、MSNの出現
Yahoo!
- 米Yahoo!の沿革
当時スタンフォード大学の学生だったファイロ(David Filo)とヤン(楊致遠、Jerry Chih-Yuan Yang)は、自分たちで見つけた興味のあるWebページをウェブサイトに公開していた。1995年に事業化してYahoo!を設立した。株式公開にあたり、ソフトバンクによる出資を受け入れ、1996年には日本法人Yahoo!Japanが営業開始した。
その後Yahoo!は、買収により、Yahoo!mailやYahoo! Gamesなどサービスを拡張し、最大の検索エンジンサイトに成長をした。
2004年に設立したGoogleとの競争が始まった。Yahoo!は次第に検索エンジンとしてのシェアを下げ、2012年では米国の検索サイトのシェアは全体の13%ほどになってしまった。
- Yahoo!Japan
Yahoo!Japanはソフトバンクが筆頭株主であり、海外でのYahoo!とはやや独自の経営をしている。
・ポータルサイトとして、世界でのシェアは落ち込んでしまったが、日本のwww.yahoo.co.jp/は2010年でも過半数のシェアを維持している。
・Yahoo!BBはYahoo!Japan独自のサービスである。オークション分野では、世界ではeBayが最大であるが、日本ではYahoo!オークションに対抗できない状態である。
・米Yahoo!では検索エンジンをMicrosoftのBingにしたが、Yahoo!Japanは独自にGoogleを採用している。
- Yahoo!の検索エンジン
初期の段階では、人手で収集整理するディレクトリ型検索エンジンであったが、Webサイトが膨大になると、自動的に収集するロボット型検索エンジンを採用する必要がある。Yahoo!でも主流はロボット型検索エンジンである。Yahoo!は一時期を除き、ロボット型検索エンジンを他社に求めていた。
・1998年 Yahoo!Japan、gooを採用
・2001年 Googleに変更
・2004年 Yahoo!の独自の検索エンジン「YST」開発
・2009年 米Yahoo!、Bing採用
・2010年 Yahoo!Japan、Googleと提携
Microsoftの検索エンジン
- 1995年 Microsoft MSN開始
MSN(Microsoft Network)はMicrosoftが運営するポータルサイト。Windows 95に合わせて開始。日本では1996年にNTTのアクセスポイントを利用してインターネットプロバイダ事業「MSN Internet Access」を開始した。
- 1998年、ポータルサイト「MSNサーチ」提供開始
当時はMicrosoftは自社の検索エンジンをもっていなかった。当初はInktomiを利用、その後Looksmartも併用。
2005年に独自の検索エンジンを開発して「MSN Serach 正式版」となった。
- Bingへの移行
この「MSN Serach 正式版」は、2006年に「Windows Live Search」、2009年に「Bing」に名称変更した。Windows Live Searchは、デスクトップ検索機能を持つ。
2009年、米Yahoo!はBingを検索エンジンに採用(Yahoo!JapanはGoogle)。
その他有名な検索エンジン、ポータルサイトの出現
- 1994年 Infoseek設立
スティーブ・キルシュ(Steven Todd Kirsch)は、Infoseek社を設立、商用として広く普及した最初のロボット型検索エンジンInfoseekを発表した。1996年、日本のデジタルガレージと業務提携し、日本での事業開始。
その後、1998年に米Infoseekはディズニーに、2000年に日本法人は楽天に買収された。
・1994年 Excite(前身)、Lycos
・1995年 AltaVista
・1996年 Inktomi
- 1996年 goo営業開始
日本では、NTTグループが検索サイトの中心だった。NTTでは1995に「NTT DIRECTORY」を運営したが、一般商用としてロボット型検索サイトを開設したのがgooである。
・1997年 NTTは検索技術実験としてロボット型検索サイト(Inktomi社の検索エンジンを利用)を公開。急速にアクセス数が増大した。
・1999年、NTT-Xが発足、gooは実験から商用サイトになる。リクルート、日本経済新聞社、三菱総研、三省堂などと共同でコンテンツを充実させ、Yahoo!Japanとも連携し、日本独自サイトとして最大規模になった。
・2003年、Googleと提携を行い、検索エンジンをInktomiからGoogleに変更。
・2004年、NTTレゾナント社がgooの運営。、「環境goo」「教えて!goo」「キッズgoo」「gooブログ」など多様なサービスを展開
2000年代:Googleの時代
Googleの沿革
- 1998年 Google設立
1996年、スタンフォード大学で博士課程に在籍していたラリー・ペイジ(Lawrence Edward Page)とセルゲイ・ブリン(Sergey Mikhailovich Brin)はGoogleの原型となる検索エンジンサービスBackRubを開始。検索での評価基準に、高評価の他サイトからのリンクを用いる「バックリンク」を考案した。「Google」は検索エンジンの名称としてつけられたのだという。
1998年にベンチャーキャピタルなどから多額の資金を得て事業化、Google社が設立された。
- 2000年代前半 Googleの成長
1999年までは、検索エンジンの優秀性は専門家内で評価されていたものの、ポータルサイトとしては比較的マイナーな存在だった。それが、2000年にYahoo!の検索エンジンに採用されたことにより、Googleが広く認識されるようになり急速に成長した。
・2000年 Yahoo!の検索エンジンに採用
・2000年 Adwords開始
・2001年 日本法人のグーグル株式会社設立。日本語版Google開始
・2002年 大手インターネットサービス会社AOLと提携
・2003年 AppleのWebブラウザSafariの標準検索エンジンに採用
・2003年 コンテンツ連動型広告AdSense開始
・2003年 gooの検索エンジンに採用
・2004年 Gmail開始
・2004年 NASDAQ上場
・2004年 大学・図書館とデジタル スキャンの提携。後のGoogle Booksへと発展する。
2004年にYahoo!との契約が終了するが、この頃までにYahoo!、MSNと並ぶポータルサイト3強の地位を獲得した。
- 2000年代後半 買収による新分野の拡大
この頃になるとGoogleの株価が上昇、その資金力で多くの専門企業を買収、それらの技術をネットビジネスに展開した。
・2004年 Picasa(画像管理ソフト)買収。写真共有サービスに発展する
・2004年 航空画像のKeyhole社を買収。Google Map、Google Earthにつながる
・2005年 Google API公開、それを用いた広告ページが急増
・2006年 Upstartle社の「Ajaxワープロ」開発チーム買収。GoogleがAjaxのリーダーになる
・2006年 YouTube買収
その後、画像技術、RSS、SNS、モバイルなど多分野での買収戦略を加速した。
2000年代末~ Googleのパソコン、スマートフォン業界への参入
従来、Googleはインターネットの向こう側の分野に集中し、Microsoftが独占しているこちら側(パソコン)の分野とすみ分けていた。それが、次第にこちら側へも進出してきた。さらにタブレットやスマートフォンではAppleが強く、Google-Microsoft-Appleの三つ巴対決が起こっている。
- Google Document
オフィスソフトの分野では、WordやExcelなどMicrosoft製品が業界標準になっているが、それに対抗して、オープンソースのオフィスソフトが多数公開されている。その代表的なものが OpenOffice.orgであり、Googleもそのメンバーであるが、独自のオフィス製品を開発、無料公開している。
・2006年 Upstartle社を買収、ワープロソフト技術を取得
・2006年 「Google Docs & Spreadsheets」としてワープロと表計算機能を統合
Gmailを用いてデータの保存・共有サービス
・2007年 日本語対応
・2009年 Google Documentに統合改称・正式版となる。
- Google Chrome
WebブラウザもMicrosoftのIEに対して、SafariやFirefoxなどがあったが、2009年にGoogle はオープンソースのGoogle Chromeを公開した。
Firefoxと同様のタグブラウザ
HTML5対応
ツール画面をシンプルにしてコンテンツ表示領域を拡大
JavaScriptエンジンには Google V8 JavaScript Engineを使用
「シークレットウィンドウ」や「セーフブラウジング」のセキュリティ対策機能
など、Webブラウザの動向をいち早く実装した。
2012年には、iOSやAndroidへの対応版を発表した。
- Android
Android社は、2003年に設立された携帯電話向けソフトウェア開発企業である。2005年にGoogleはAndroid社を買収し、2007年にスマートフォン用OSをAndroidとしてオープンソース公開、他企業との連携によるOHA(Open Handset Alliance)の運営とした。
それまでスマートフォンメーカーはそれぞれ独自のOSを用いていた。AppleのiPhoneも同様である。そこにオープンソースOSが提供されたので、それを用いたメーカーやアプリが続出した。
その後Androidはバージョンアップが進む。2010年のバージョン2.3は、Google内で開発コード「Gingerbread」と呼ばれでいたが、日本の多機能端末の独壇場であった「おサイフ機能」「ゲーム機能」「赤外線通信機能」などを実装しており、スマートフォンの多機能化が急速に進んだ。
2010年には、Androidスマートフォン「Nexus One」を発表した。Googleのハードウェアへの進出だとされ注目されたが、販売地域や販売方法が限定されていたため、販売台数はあまり伸びなかった。ハードウェア業界への本格的参入を意図したものではなく、将来の参入への実証実験あるいはデモンストレーションだったという指摘もある。
現在の検索ポータルサイトのシェア
米国では、Googleが独走しており、MicrosoftがYahoo!を抜いた。Yafoo!はMicrosoftのBingを使っているので、検索エンジンではBingが約30%を占めている。
日本では、Yahoo!がトップで約半数であり、2位のGoogleとで90%を占めている。ところが、Yahoo!Japanの検索エンジンはGoogleなので、検索エンジンとしては、むしろ日本のほうがGoogleのシェアが高い。Bingのシェアが低いのは、この調査時点が発表後間がないこともあるが、ブラウザのホームページをMicrosoftにしている割合は少ないので、その増大は限定的であろう。
日本でYahoo!が多いのは、Webブラウザ(IE)をプレインストールしているパソコンの購入者が多く、その場合、デフォルトでホームページをYahoo!にセットしているのが通常だからであろう。また、高度利用者はキーワード検索が多くGoogleのようなシンプル画面を好むのに対して、初心者はディレクトリ検索が多いので、Yafoo!のような画面のほうが好まれる。それがデフォルトをYahoo!にしている理由でもあろう。
インターネット広告
ポータルサイトも利益追求の目的で経営されている。その収入のほとんどは広告収入である。
Googleの2009年第3四半期の売上高は5945万ドルであった。そのうちの97%が広告収入(直営サイトの広告収入67%、AdSenseを介したパートナーサイトからの広告収入30%)だという(検索エンジンなどのライセンス料は3%未満)(注)。
すなわち、ポータルサイトにとっては、広告収入の確保・増大が必須課題なのだ。
(注)Dale Carnegie「今日の疑問は明日の知識 Googleはどうやって利益を得ているの?」(http://wisdom1048.blog112.fc2.com/blog-entry-37.html
日本でのインターネット広告費規模
主要広告媒体別広告費の推移
出典:電通「日本の広告費」各年版より作図
http://www.dentsu.co.jp/books/ad_cost/index.html
- 日本の広告費を媒体別にみると、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌のいわゆるマスコミ4媒体がこぞって低下傾向なのに対して、インターネット広告費は急速に増加している。
- インターネット広告費は、2004年に雑誌、2006年にラジオ、2009年に新聞の広告費を抜いた。
- 2011年には、インターネット広告費は8千億円、全体の広告費(5.7兆円)に対する比率は14%に達している(テレビ:30%、新聞10%、折込チラシ:9%)。
インターネット広告の関連用語
単にWebページに広告を表示するのではなく、その成果に応じて課金する方法がある。それを総称して保証型課金方式という。
- インプレッション保証型
広告が表示された回数(広告を掲げたWebページのアクセス回数)に応じて課金する。
- クリック保証型
広告が閲覧者によってクリックされた回数に応じて課金する。
- 成果保証型
広告がクリックされ、広告主のサイトで成約した回数に応じて課金する。
- アフィリエイト(affiliate)
広義には検索連動型の有料広告であり、狭義には、個人のWebページ、ブログページが増加してきたのに伴い、それらに広告掲載させ、成果型の報酬を支払う方式である。
Amazon.comのアフィリエイトプログラムが有名。なお、Amazon.comでは広告掲載者のことをアソシエイト(Associate)といっている。
閲覧者が関心を持つ広告を表示することが効果がある。その技術を連動型広告という。
- 検索連動型広告
閲覧者が入力した検索キーワードに応じて、それにマッチした広告を表示する方法。「Pay for Performance」ともいう。
その発展形に、広告主に検索キーワードを指定させ、その金額に応じて検索リストの表示位置を順位付ける方法(Google Arwordsなど)もある。
- コンテンツ連動型広告
閲覧されているWebページの内容に応じて、それにマッチした広告を表示する方法(Google AdSenseなど)。検索連動型広告と併用されることが多い。
- 行動ターゲティング広告
現在閲覧しているページだけでなく、そのページに到達した経路、過去の閲覧記録などを分析して、閲覧者の関心のある広告を表示する方法。
Amazon.comでは初期の段階から行っていたし、近年では2007年にYahoo! JAPANが導入した。
広告とは外れるが、自社のWebページを検索エンジンの上位に表示させることは、ビジネス上有利になる。
- SEO(Search engine optimization)
検索エンジンの評価方法を調べて、その評価を高めるためにWebページの記述を工夫する技術
これが激しくなると、検索エンジンの信頼性(公平性、客観性)が失われるので、検索エンジン開発者は不適切なSEO手段を回避する対策を講じている。
- 広告表示の分離
検索エンジンの信頼性を保つには、検索エンジンによるランク付けと検索連動型などの広告とを分離することが望まれる。有力ポータルサイトでは、そのようになっているのが通常である。
1990年代後半でのインターネット広告
1995年頃からインターネットが急速に普及し、インターネット広告がビジネスとして重視されるようになった。
- ポータルサイト自身のページでのバナー広告
初期の方法手段は、ポータルサイト自身のページにバナー広告を出すことであった。1996 Yahoo!Japan 営業開始をしたが、当初からバナー広告を掲げていた。それを取り次ぐ広告社も出現した。1996年には、日本でもインターネット広告専門のネットフロンティア(現インターネット広告社)設立された。
- 1997年 (米)Overture(GoTo.com)設立
ビル・グロス(William T. Gross)はGoTo.comを設立し、検索連動型広告の初期形態であるpay-for-placementや、保証型広告であるpay-per-clickなど、現在のインターネット広告の基本となる方式を考案した。
商用のWebサイトの場合、検索エンジンの上位に表示されることがアクセスを増やすことになる。pay-for-placement広告料金を支払うことにより、検索結果の上位にwebサイトを掲載できるタイプのサービスである。
pay-per-clickとは、クリック回数により広告代金を決定する方式である。
2001年にGoTo.comはOvertureと改称。2003年にYahoo!に買収された。
- 1990年代中頃:SEO技術への関心が高まる
検索エンジンの表示ランク付けの仕組みを研究し、ランクが高くなるようにWebページを作成するテクニックをSEO(Search engine optimization )という。それをアドバイスしたり、その技術を用いてWebページ作成を受注する業者が出現した。
当時の検索エンジンの評価方法はキーワードの出現回数やそれが使われているタグの重みづけをするような単純なものだった。そのため、必要以上にキーワードを隠した「スパムSEO」も出現した。
それでは検索エンジンの信用度が落ちるので、検索エンジン開発者とSEO業者の間での攻防が盛んになった。1997年から998年にかけて、Infoseekの欠陥をついたソフトウェアが流行して大きな話題になった。
- インターネット広告の限界
当時のインターネット通信では一般電話回線が用いられており、28.8kbpsの低速で3分10円という高価格だった。そのため、広告をじっくり読むような環境ではないし、広告のために料金を支払うのは心外だという苦情が多くあった。広告遮断ソフトが出現したほどである。
また、広告が多くなるにつれて、クリック率も低下した。初期の頃は10%という高率だったが、2000年頃になると0.2%になったといわれている。
2001年、日本広告主協会はインターネット広告の効果に関する実証実験を行った。その結果、インプレッション(認知)とレスポンス(誘導)は独立した効果であり、広告を表示しただけでは、クリックなどの行動には移らないこと、クッリク回数が成約に結び付かないことなどが確認された。
Amazon.comの影響
1994年、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)は、Cadabra社を設立。1995年にAmazon.comと改称、書籍のオンライン販売を開始した(日本では2000年から)。インターネット広告における優れたビジネスモデルが成功の大きな要因だといわれている。
その代表的なものを掲げる。必ずしもAmazon.comが最初に発案したものではないが、大々的に展開し成功を収めたのはAmazon.comだといわれている。そして、これらは現在では多くの販売サイトで採用されている。
なお、Amazon.comは多様な商品を扱っているが、ここでは書籍に限定する。
- アフィリエイトプログラム
Amazon.comは、設立直後の1996年にアフィリエイトプログラムを導入した(日本では2001年)。個人などのWebページに、Amazon.comへのリンクを貼ってもらい、その紹介報酬を支払う仕組みである。Amazon.comは比較的安価で多数の広告を掲げることができるし、個人が副収入を稼ぐことができる。
しかも書籍などでは、掲載Webページに、単にリンクアイコンをつけるだけでなく、書評や関係記事が掲げられることが多い。理想的なコンテンツ連動型広告であるし、広告というよりも、参考文献紹介のように受け止めらられる。
- リコメンドシステム
Amazon.comのサイトにアクセスすると、関心のありそうな書籍を推奨(リコメンド)する。Webページの自動的カスタマイズ化である。行動ターゲティング広告の一種であるが、Amazon.comそれが注目される以前から採用していた。
これには、閲覧者本人の過去の検索・購入履歴を分析することと、他人の対象書籍と併売書籍の関係を分析する必要がある。
- カスタマレビュー
購入者の読後感想や評価を掲げている。なかには否定的なものもあり、逆に信頼性を高めている。近年は著者からの投稿「著者ページ」を掲げている。
- 「なか見」検索(Look Inside the Book)
著者や出版社と提携することによって、書籍の一部を閲覧できるようにした。サワリを見せるので、全体を見たいなら購入せよということで、リアルの書店での「立ち読み」に相当する機能である。米国では2003年、日本では2005年から開始している。
Googleの影響
Googleの成長については前述した。ここではGoogleが自社のポータルサイトへのアクセスを高めるため、検索エンジンの付加価値を高めるための工夫を検討する。その最大の効果は、多様な分野にポータルサービスを展開したことにあるが、ここではそれには言及しない。
- 「バックリンク」評価基準
従来の検索エンジンが検索結果の上位にランクする評価基準は、対象Webページ内に該当するキーワードがいくつ、どのタグに記述されているかであった。すなわち、Webページそのものが評価の基準だった。不適切なSEOが横行する原因でもあった。
Googleでは当初から「バックリンク」を最大の評価基準とした。対象ページがどのようなページからリンクされているか、そのリンク元の評価はどうかを評価とする。多数の評価の高いページからリンクされているページなら、そのページの評価が高いといえるという考え方である(学術論文では引用されている回数が評価基準の一つである)。
この評価基準は客観的で受け入れやすい。不適切なSEOの影響を受けにくい。また、Googleのスタートページは質素で、Googleのロゴと検索ボックスしか表示されない(近年は余計な画像が表示されることがあるが)。これは、合理性を尊ぶ高度利用者の好感を得た。
しかし、多数のページの相互関係を分析するのだから、大量のページ収集と分析システムが必要になる。逆に、その解決の努力がGoogleの成長をもたらしたのだともいえる。
- Google Adwords
2000年にGoogle Adwordsを開始した。Googleの発案ではなく、Overtureのpay-per-click参考にしたのだといわれている。
広告主は、掲載広告と広告関連のキーワードをGoogleに示す。検索エンジンにそのキーワードが入力されると広告が表示される(本来の検索エンジンでの評価基準と異なるので「Adwordsによる表示」という広告欄に表示される)。
クリック保証方式にするとか、複数の広告主が同一キーワードを指定すると金額により表示位置が変わるなどの工夫をしている。また、後には広告主に各種の統計情報を知らせるなどのサービスを強化している。
- Google AdSense
Webページ運営者(個人を含む)はGoogleと契約して、簡単なJavascriptをページに組み込む。すると、Googleから自動的に、そのWebページに関連した広告が送られ表示される(Webページに「Ads by Google」と表示されている)。閲覧者がその広告をクリックした回数に応じて、Googleからページ運営者に手数料が支払われる。
Webページの内容にマッチした広告が送れるので、コンテンツ連動型広告方式である。2003年に開始された。
近年はWebページやブログページを開設する個人が多くなった。その人たちにとっては、Google AdSenseは小遣い稼ぎになるし、Googleにとっては安価な広告スペースが確保できるという利点がある。Googleでの広告収入の1/3は、Google以外のサイトに掲載された広告からの収入だといわれている。
- メール連動広告
Googleは2004年に無料で電子メールが使えメールを保存できるサービスGmailを開始した。メールを開くと末尾にGoogleからの広告が表示される。その広告がメール内容と合致したコンテンツ連動型広告なので、Googleがメール内容を見ていることになる。
2012年には、Yahoo!JapanがYahoo!メールで同様の広告をすることを表明した。
これは「通信の秘密」の侵害だとして論議が起こった。しかし、利用者に事前に見られることが知らされており拒否する手段があること、ロボットによる分析で人間が見ていないことなどにより合法だとされている。
- Google Maps API
Googleが提供する地図情報Google Mapsの機能を、インターネットを介して利用するための手続きをまとめたもので、JavaScriptの関数群として提供されている。利用者は、Webページに地図を表示してそれに多様な情報を書き込むことができる。
企業が自社事務所などへのアクセスを示すのに標準的なツールとして使われているだけでなく、個人のWebページに近所の商店の紹介と広告を掲げて報酬を得るなど多様な利用がある。これはGoogle自体に直接の利益を生むものではないが(Google自体の広告にはなる)、インターネット広告の普及に新しい分野を開いたことで注目される。
・2005年 Google Maps開始、Google MapsAPI公開
・2007年 iphoneに採用
・2009年 Google Maps API V3公開
ライセンスキーが不要になり、Googleに断らずに使えるようになった。
スマートフォン対応が標準仕様になった。
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