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PDA(Personal Digital Assistant、携帯情報端末)とは、次のような機能(機種により異なる)をもつポケットサイズの情報機器である。
・メモ帳(ノート)、スケジュール管理(予定表、カレンダー)
・アドレス帳(住所録、連絡先)、ダイアラー(電話番号にダイアルする機能)
・電卓、時計
・電子辞書
これらを統合した機能をPIM(Personal Information Manager)ともいう。
このように、PDAの定義があいまいなので、「最初のPDA」を特定するのは難しい。
主要なPDA機能は電子手帳でも搭載されているとするならば、1983年、カシオ、PF-3000
主要PIM機能の搭載が明示されていることを重視すれば、1990年、SONY、Palmtop PTC-500
「PDA」という名称を初めて用いたのならば、1993年、Apple、Newton Message Pad
となる。
いずれにせよ、PDAは1990年代前半から急速に普及した。ここでは個人利用に限定しているが、営業部員が客先で受注データを入力したり、スーパーで在庫を確認したりする企業向けの特定機能に限定したPDAが開発された。
しかし、2000年代になると、携帯電話がPDA機能をもつようになってきたことから個人需要は低迷し、企業用途でも携帯電話の利用やノートパソコンの小型化・省電力化が進んだことから、それらへの移行が進んだ。そして、2000年代後半にはスマートフォンへと移行した。
ポケットコンピュータ シャープPC1210(1980年) (拡大図) 出典: Nigel Tout「Vintage Calculators Web Museum Sharp PC-1210 & Sharp PC-1211」 |
1980年代までは、PDAの前身であるポケットコンピュータや電子手帳が普及していた。共に電卓が発展したものであるが、ポケットコンピュータが「プログラムが作れる」ことを特徴としたのに対して、電子手帳は基本的なアプリケーションをコンパクトに搭載したものだといえる。どちらも、当時の電卓メーカーであるシャープとカシオが主なメーカーであった。
ポケットコンピュータとは、利用者がBASICなどでプログラムを作成することができる電卓、あるいは、極度に単純な機能しか持たない携帯パソコンだといえる。BASICが使えるとはいえ、1行表示しかできないので、実用的とはいえず、かなり趣味的なものであった。
電子手帳とは、ビジネス手帳を電子化したもので、電卓、カレンダー日記、メモ帳、住所録などが主な機能である。当時は電話やメールなどのオンライン機能は未だ搭載されていなかった。また、電子手帳で用途を限定したものに電子辞書がある。なお、「電子手帳」という用語はカシオの商標だそうである。
Newton Message Pad(1993年) 出典: History of Computing Foundation「History of Computing Industrial Era 1993」 |
SONYは、CLIEシリーズでPDA市場での大きなプレイヤーになるが、PTC-500はSONYが最初に発表した携帯端末である。本機では、「パームノート」として、スケジューラ「アクション」、住所録「コネクション」、メモ帳「レポート」の基本画面、ダイヤラー、ペン入力機能、電卓、時計などの機能をもっていた。それらを統合した概念を「PIM(Personal Information Management)ソフトウェア」といったのが、PIMの最初であるといわれている。
ダイヤラ-とは、電話機やFAX機に接続して、記憶した電話帳から電話番号をかける機能である。実務的には、作成したメモ帳をFAX送信ができることが重宝された。
翌年、AppleのMacintosh PowerBook 100は、ノート型パソコンの原型である。しかし、この開発・製造にはSONYが関与している。
参考:CLIE User Club!「懐かしのPalmTop」
http://www.clieclub.jp/html/pt.html
OASYSとは、富士通ワープロのシリーズ名であり、OASYS pocketはそれの小型版(22.5×14.0cm、530g)である。ワープロではあるが予定表や住所録などの独立キーを持っていた。また、1992年に発売されたOASYS pocket2では、パソコン通信機能が内蔵され、携帯通信端末として用いられるようになった。
PDAという用語は、AppleがNewton MessagePadの販売にあたり用いたのが始まりだといわれている。初代Newton MessagePadは、シャープにより製造された。シャープは、AppleからNewtonテクノロジーのライセンスを得ており、Appleと手書き認識の研究開発で協力していた。そして、AppleはNewtonを、シャープは「液晶ペンコム」初代ザウルスPI-3000を開発したのである。
この「ザウルス」は、シャープPDAの愛称であったが、その後、多様な機能を加えながら進化した。
1996年にPDAのOSであるPalmOSとWindows CEが出現した。各社が独自のOSを開発するのではなく、これらの「標準的」OSを用いるのが通常になった。
そして、ザウルス、Palm機、CE機の三国時代になった。
ザウルス:シャープ単独
Palm機:SONY、IBM
CE機:Windows採用各社
PDAでのインターネット利用は進んだが、日本ではPDAに電話機能をもたせるよりも、携帯電話にPDAの機能をもたせる多機能携帯電話のほうが普及した。それに伴い、PDAの需要は低下した。
海外ではPDAと携帯電話を統合したスマートフォンという概念になり、2000年代の日本でもそれが普及した。すなわち、PDA時代からスマートフォン時代に移行したのである。